SHADOW

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カラフル

 俺がいつも見ている世界は、モノクロだ。
何を見ても白黒の世界だ。映画、趣味、動画…。何をしても、色なんてついていなかった。
別に面白く無いとかでは無いんだけど、なんとなくつまらなかった。

 ー数日後ー
スマホにメッセージが届いた。
『今度久しぶりに会わない?皆会いたがっているよ?俺も久しぶりに会いたいよ。時間あれば、リーダーの家に集合ね。よろしく。」
と俺が密かに、想いを寄せている人からだった。
メッセージを見た後、少し考えてから返信した。
『そうだね。暫く皆に会ってなかったから、行こうかな。仕事も今は落ち着いているし、今度有給取って行くよ。』と返信すると、『やった!皆に言っとくね!』と帰ってきた。
なんとなく彼の喜ぶ顔が浮かんで嬉しくなった。
だけど、同時に悲しみも出てきた。
俺は彼のことが好き…だけど同性愛なんて気持ち悪いに決まってる。彼は皆にネタでゲイって言ってるだけで、本当は嘘に決まっている。彼はただ単に楽しんでいるだけで、俺のことなんてただの友達にすぎない。
勝手に苦しんでてなんて情けないんだろうか。皆に会いたいのは本当の気持ちだけど、彼の顔を見たら気持ちを押し付けてしまう。俺はなんて最低な人間だろうか。
そう思いながら、メッセージを再度確認した。友人同士のグループチャットには、彼が俺のことを話していた。俺は入っていながらもそこまで、発言しない。
だからただの閲覧者にしか過ぎない。
彼はやっぱり楽しそうだった。

 ー当日ー
いつも以上に服装に悩んでいる自分がいた。
皆からはいつもオシャレで羨ましいと言われるが、今だけは何を着て行こうか、悩み過ぎている。
刻々と時計は時間だけを刻んでいく。早くしないと間に合わないのにってより焦る。
悩んでいると、部屋の戸が開いた。
振り返ると立っていたのは、妹だった。
妹は俺の悩んでいる姿を見ると、ニヤニヤして言った。
「お兄ちゃんw何悩んでるの?もしかしてぇ、デート?www」と茶化してくる。
俺が「違う」と即答すると、妹はつまらなそうな顔をしていた。
「久しぶりに皆に会いに行くけど、服が決まらないだけなんだ。」と言うと、妹は目をキラキラさせていた。なんとなく俺は良からぬ事を考えているのかと思っていると、妹は俺の方にやって来て言う。
「じゃぁ、僕にやらせてよ。服選ぶの。」
俺は予想外の事を言う妹に戸惑っていると、妹は服を選び始めて、あっという間にかっこいい感じに仕上げた。
「はい。これ。お兄ちゃん着て。」と言って俺の方にずいっと服を押し付けて来た。
俺が着替えていると妹は言った。
「せっかく好きな人に会うってのに、ダサい格好で行かせられないっしょ。」と言って来たので慌てて妹の方を見た。妹に好きな人のことなんて言っていないのに。
妹は「何年兄妹してると思ってるの?お兄ちゃんのことなんてお見通しだよ。別に恋人が出来ないからって恨んでるわけではないよ。お兄ちゃんが同性が好きでも、異性が好きでも僕は態度を変えないよ。お兄ちゃんが幸せになるんだったら、それが僕にも幸せってこと。今日は二人きりになったら、告白するんだよ?フラれても、僕が慰めるし、次の恋も応援するから行っておいで?」
そんなこと言う妹に感動していると、妹は玄関まで俺を押して行った。玄関まで行くと妹は俺に「さぁ行ってら!」と言ったので、俺は「行って来ます。」と言って家を後にした。














僕がお兄ちゃんが行ったことを確認すると、スマホを開いて、例の人に電話した。
「お兄ちゃんの事よろしく。」
電話の向こうで笑い声が聞こえた。
『はい。君のお兄さんはこちらで幸せにします。』
暫く会話した後電話切って、その場で伸びをした。
「お兄ちゃん。今見てる景色は色づいてる?カラフルな世界?そうなら嬉しいよ。これこそ自慢のお兄ちゃんだね…。あの人が選んだのは僕じゃなくて、お兄ちゃんの方だったね。」
僕の頬に冷たい雫が垂れた。

5/1/2024, 11:32:28 PM