SHADOW (めちゃくちゃ不定期)

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9/14/2024, 2:06:24 PM

命が燃え尽きるまで


⚠️死亡表現あり⚠️


今日も人間界に降りる。
そっとビルの屋上に腰掛け、リストを確認する。
「今日は誰かなぁ?」
ペラっとページを捲る。
「へぇ…この人ねぇ…若いのになぁ…勿体無いね。」
リストを閉じた瞬間、下の方で沢山の悲鳴が聞こえた。下では耳が痛くなるほどの騒音や悲鳴。

私はビルの屋上から飛び降りる。
音も立てずに降りて、現場確認。
ほとんどの人は私を視る事はで出来ないが、たまに私の事が見える奴がいる。私は現場確認を終えて、魂だけが出ているモノを探す。
「おっ!いたいた。」
私は魂だけになったモノの腕を掴んで、連れて行こうと開いた瞬間、後ろから声をかけられた。

「…あの…憐さんを何処に連れていくんですか…」
声をかけてきたのは、か弱そうな男性。
一見女に見間違えそうになる。
私の事が視えるのか…たまにいるんだよなぁ。事故に遭遇した人が衝撃で、一時的に視えるようになるって。私が一人で納得していると、男性は泣きそうな声で、言葉を紡ぐ。
「…連れて行かないで。俺の事を認めてくれた…唯一の人なのに…好きだったのに…。」
その場に泣き崩れる男性を見て、私はなんともいえなくなってしまった。

『同性愛が嫌だ』とかではなくて、此方も仕事をしているだけだ。私だって本当はしたくない仕事だ。
だが、《死神》として生まれてきてしまったものだから、私にどうこう言っても変わらない。
私は一旦それを置いておき、男性に近づき優しく話しかける。
「すみませんねぇ…私だって本当は戻してあげたいのですが…今日のリストに載っていない人がね?本来なら連れていくのは、貴方だったはずなんですよ。」
私がそう言うと、男性は声を荒げて言う。
「だったら!憐さんじゃなくて…俺を連れてけよ!
なんで憐さんなの…。」

私が対処に困っていると、憐さんだったモノがそっと男性の頭を撫でる。

『ごめん。僕…湊が危ないって思ったら。別に僕が勝手にやった事。湊は自分を責めないで?僕は向こうで待ってるから、《命が燃え尽きるまで》生きて。』

そのモノはそっと男性から離れると、私の袖を引っ張り、『にこり』と微笑む。
「…もういいんですか?」
私がそう尋ねると、それはコクリと頷く。
私は未知の空間を開く。開かれた空間は光に暖かい光に満ちた場所だった。憐は振り返り、男性に手を振り空間に入る。入った瞬間空間は元に戻り、何事もなかったかのように日常に戻る。
男性はただ単にその場に泣くしかなかった。

『今までありがとう』

そう聞こえたらしい。




《誤》
蒼 憐 アオイ レン 20歳 
死亡時刻 20XX年 XX時 XX分
死亡理由 事故死

《失》
茶川 湊 チャキ ミナト 25歳
死亡時刻 20XX年 XX時 XX分
死亡理由 事故死

『茶川 湊』は想い人に助けらた。
代わりに『蒼 憐』が死亡。
急『茶川 湊』の対処を。

私はリストにそう書き加えた。

9/8/2024, 10:55:12 AM

胸の鼓動

今日も『ドクッドクッ』っと胸の鼓動が聞こえる。
人の生命の源。
鼓動が続く限り、人は生き続けるだろう。
私も彼も鼓動が続く限りなんだろう。
私はそう思いながら、ベットで眠る彼の頬を撫でる。
彼は病気で植物状態。
私は毎日彼に会いに病院に行く。
起きないと分かっていても…。

今日も彼に会いに行く。
分かっていながらも…。

8/31/2024, 10:44:05 AM

不完全な僕

誰からも愛されない。
いや…そもそも愛し方を知らない。
親から“愛情”と言うもの以外は受け取った。
親曰く、『愛なんて知っても、貴方は育たない。』
そう言われ続けてきた。
幸い、学力等には問題はなかった。
だから僕は“不完全”なんだ。

8/26/2024, 1:03:16 PM

私の日記帳

紙の上を滑るペンの音が、部屋に響く。
今日も一日を締める為に、今日の出来事を綴る。
書き終えて、そっと閉じる。
明日こそはいい日になるといいな…。

8/12/2024, 1:34:10 PM

君の奏でる音楽

今日も何処かから音楽が聞こえる。

「はぁ…。書類が終わらない…。」
そう嘆いていると、同じく生徒会の書類を捌いている副会長が、目を通しながら文句を言う。
「終わらないのは、どっかの誰かさんがサボるからでしょ?サボらなきゃ終わってます。」
本当の事を言われ何も言えずにいると、何処からか優しい音楽が聞こえてきた。
「なぁ…赤羽?いつも聞こえる音楽は、誰がやってるんだ?」俺が書類にサインしながら聞くと、赤羽は作業の手を止めて答える。
「多分…彼奴ですよ。一年の【狐火】。楽器が得意らしいっすよ。」赤羽は言い終わると、また書類を捌き始めた。何故此奴が詳しく知っているのか考えていると、赤羽は溜息をつき、「一旦休憩しましょう。休憩がてら言いますよ。」俺はその言葉に目を輝かせた。

休憩しながら赤羽の話を聞く。
「俺もそこまでじゃないっすよ。噂程度の話です。
一年の狐火がやってるって噂。彼奴には欠点があるらしくて、その欠点は【目が見えない】。目が見えないながらも、幼少期から色々な楽器をやってきたから、あそこまで出来るようになったらしい。」
そう言って赤羽は紅茶を一口飲む。
俺はその狐火という奴が気になって、赤羽に居場所を聞いた。
「えぇ…ガチで行くんですか?まぁ放課後音楽室にいるらしいっすよ。あ…水木金曜日だけっすけど。月火曜日は、休む日と検診の日らしいっすよ。」
俺は残りの紅茶を飲み干すと、赤羽にバレないように生徒会室を出た。

「……。本当に物好きな会長だなぁ…。」
俺は会長の残した書類に手をつけた。

音楽室に近づくにつれ、音楽が鮮明に聞こえ始めた。
俺はそっと音楽室の扉を開けた。
中に入ると、ピアノを弾いている女子生徒がいた。
女子生徒の目線は虚空を見つめていたが、手は確実に音を捉えて奏でている。
俺は音を立てないようその辺の椅子に腰掛けて、彼女が奏でる音楽に聴き入った。
彼女が奏でる音楽は、優しくとも消え入るようなものだ。
彼女が弾き終えると、俺は拍手してしまった。
驚いた彼女は周りを見渡していた。
俺は足音を立てて彼女に近づいた。
彼女は驚いたが、俺がそっと触ると俺の手に触れてきた。
「あの…いつから聞いていたんですか…?」
彼女の焦点は合っていなかったが、俺は気にせず彼女に答える。
「途中から。生徒会室にまで聞こえてきたから、気になってな。」
俺が答えると、彼女は申し訳なさそうに言う。
「すみません…。うるさかったですか…?」
俺は慌てて否定する。
「そんな事ないぞ!むしろ…綺麗だった。」
彼女は恥ずかしそうにしていたが、またピアノを弾き始める。俺は彼女の隣に座り一緒に弾く。


今日も彼女と一緒にピアノを弾く。
狐火はいつの間にか俺の恋人になった。
俺の幸せと彼女の幸せは、ピアノの旋律に乗って奏でられる。

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