『明日世界が終わるなら……』
仕事も税金も気にしなくていいから、惰眠を貪ります。
わーい! 好きなだけ、眠れるぞー!!
『君と出逢って、』
君と出逢って、何が一番最悪だったかって。
そりゃあ、もちろん——君と恋に落ちたことに他ならない。
……これだから、嫌だったんだ。本当に。
僕はそう言って、君の死体にキスをした。
遠くから孫の呼ぶ声がする。
「ひいおじいちゃん、もうお別れは済んだの?」
私は振り返って、孫の頭を優しく撫でながら呟いた。
「どんなに長く生きても、別れは辛いね」
お互いの皺が、愛の年月を物語っていた。
おわり
『耳を澄ますと』
耳を澄ますと聞こえてくる。
——地獄から響く友人の聲が。
○○○
死ぬ前の言葉というのは、特別だ。
それはお守りにもなるし……呪いにも、なる。
最期、その人が人生を掛けて“何を”伝えたいか。
「助けてー!!」
その声に頭より体が先に動いた。
目の前のひったくりから、女性物のバックを取り上げて、走るひったくりの男性の足を引っ掛けて転ばした。
「大丈夫ですか、お嬢さん。もう平気ですよ、ほら」
「あ、ありがとう……!」
……人助けをするのは、もうこれで何度目だろうか。
薄っぺらい笑みを貼り付けて、俺は被害者に笑いかける。
——人を救う気なんぞ、一欠片も無いくせに。
『なぁ、兄ちゃん。オイラの代わりにヒーローになってよ。兄ちゃんはスゴいから、きっとすげぇヒーローになれる。悪役よりも、誰かに慕われる方がずっといいや』
俺の性分は、ちんけな詐欺師だ。
オレオレ詐欺とか、ネズミ講とか、結婚詐欺とか、そういうので小銭稼ぎして、汗水垂らして働かずに、楽に暮らしたい。
ただ、それだけの、野望もない、ずる賢いだけの小悪党。
……なのに、なんで、こんな、無償の人助けなんてしているんだか。はぁ。
死んだ眼で空を見上げた。
空は青かった。俺の荒んだ心とは引き換えに、どこまでも高く自由に、青く澄んでいた。
耳を澄ますと、聞こえてくる。
——地獄から響く友人の聲が。
人を助けろ、と。ヒーローになれ、と。
まるで、呪いだ。人生をかけた、呪いなのだ。
だが、その呪いに俺は生かされている。
「すいません、助けて下さい!!」
「はいはい、次は何ですかね〜?」
「一週間後に渋谷全体が爆破されるんです! 防ぐために、協力して下さい!!」
「…………は?」
これは、正義感のない詐欺師と、正義感だけで動く“予知能力”の美少女の話。
渋谷を爆弾魔から守るための、お話だ。
……続かない!
おわり!!
『二人だけの秘密』
二人のだけの秘密。
これは、たった二人のだけの秘密だ。
——まぁ、残り人数三人の内の、たった二人なんだけど。
○○○
デスゲーム。
そんなものが本当に存在するなんて、思わなかった。
奇しくも、幼馴染三人が顔を合わせるなんて。世にも思わないだろう。
……三人、三人無事に出られたら良かった。
いや、最初は本当にそうする“つもり”だった。
——三人という数は残酷だ。
一人減ってもまだ、もう一人が居るし。
そして、二対一という圧倒的な格差を生み出してしまう。
残り人数が三人になる中で、ゲームマスターから告げられた最期の試練は【誰か、一人が死ねば、ゲーム終了】だった。
性別は、男一人、女二人。
最悪だ。最悪だった。限りなく。
たった一組の男女を結んで、残り一人が無残に散った。
これは、二人だけの秘密。
この世によくある、三人組の、残った二人だけの秘密だ。
一番残酷な、二人だけの秘密だった。
おわり
『優しさだけで、きっと』
優しさだけで、きっと世界は救われる。
消しゴムを落とした人に、消しゴムを拾って渡すような。
ハンカチを落とした人に、ハンカチを拾って渡すような。
そんな些細な無償の優しさで、世界が…………。
——救われたら、本当に良かったのにね。
20XX年。
世界は崩壊した。
……力なき正義は無意味なり。
優しさだけでは、世界は救えなかった。
そんな崩壊した世界でも、人は……“私達”は生きていかなければならない。
これは、そんな壊れた世界に住む、壊れかけの人間達の話。
……続かない!!
おわり!!!