白井墓守

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2/13/2026, 4:40:50 PM

『待ってて』

またやった。バイバイみんな、さようなら。そんな気分。

冬のかじかむ指で急いで文を記入すると、たまに操作ミスをする。アプリを終了させたら、もう終わり。
書いていた文は電子の彼方へ飛んでった。

——待ってて、さっきの文をもう一回!

っと思っても、衝動で一筆書きしてるから、覚えてる筈がないんだな、これが。

今日は終わり、また明日。
冬の悴む指には、お気をつけて。なんちゃって。

くだらない戯言で、御座いました。

おわり

2/12/2026, 1:03:29 PM

『伝えたい』

伝えたい、この気持ち。
伝えたくない、この真実。

○○○

愛している人が居る。
同じクラスの女の子だ。

快活そうなショートヘアに、くりくりとした目。
リスのように小さな体と、鈴を転がしたような声。

愛している、と伝えられたらどれだけ良かっただろう。

「なぁ、あの子って可愛いよな」
「あーたしかに。お前、告ってこいよ」

クラスの男子達の雑談が届く。
羨ましい。
どす黒い気持ちが溢れそうになって、強く唇を噛み締めた。

くるりと、あの子が私の方を向いた。

「先生! プリント集まったよ!!」
「……いつも、ありがとう」
「いーえ! 先生もお仕事、頑張ってね!!」

太陽のような眩しい笑顔を浮かべながら、あの子は去っていく。
私の元から、簡単に。

「なぁ、あの子って先生とちょっと似てね?」
「はぁ? いや、性別とか髪色とか違うじゃん」
「あー。そっか、そうだよなぁ。なんかちょっと目鼻立ちが似てる気がしたんだけど」
「んなことより、はやく帰って最新ゲームしようぜ!」
「おう!」

凍ったように体を固まらせた私の側を、男子達が駆け抜ける。

あぁ、どんなに言えたら良いのだろう。

あの子は、私の異母妹だよ。と。
私はあの子を本当に愛しているんだ、と。

——半端な気持ちで、可愛い妹に手ェ出すんじゃねぇクソが。と。

言えたら良かったのに。

伝えたい、この気持ち。
伝えたくない、この真実。

あの子はきっと、信じている。
今の父親と血が繋がっているって信じている。

だから、今はまだ。
そっとしておこう。

……今は、まだ。


おわり

2/11/2026, 4:48:15 PM

『この場所で』

この場所で私は死ぬ。
誰に看取られることもなく。

……きっと、それは幸せなことなのだ。

○○○

一匹の猫が人目につかない場所で死んでいた。
首輪に乗っていた住所に連絡すると、たいそう家族は泣いていた。
何度も何度も名前を呼び、死んで冷たくなった体をさすって温めようとしていた。

猫は死期を悟ると身を隠すと言うが、それは愛する家族を泣かせないためだというなら、この猫はたいそう愛されていたのだろう。


おわり

2/9/2026, 4:53:28 AM

『スマイル』

スマイル・スマイル・スマーーイル!!
笑顔でみんな死ね。

○○○

笑うとはどういうことだろう。
きっと良い事だ。
だって、笑ってたら、みんな笑う。
笑わないより、笑ってた方がずっといい。
……だから笑わせてあげたの。

「こっ、殺さないで! 殺さないでくれぇ!!」
「スマイル、プリーズ?」

笑わなかった、笑わなかった、笑わなかった。
だから殺した。

死体に按摩を施して、肉体を緩和させ、笑ってるようにする。
ほら、簡単。

生きてても笑わないなら、死んでから笑えばいい。

「そ~思わない?」
「……アンタの頭の異常さには寒気がします」
「スマイル、プリーズ?」
「迅速な仕事の完了ありがとうございます。つきましては、次の依頼を引き受けて下さるともっと笑顔になれるのですが?」
「……おっけー!」
「ありがとうございます」

黒服の男が笑顔でお辞儀をして去っていく。
冬の路地裏には、ピエロ姿の私が独りぼっちだ。
寒い。

殺人鬼・キラーピエロ。
通りではそう言われている。
……私はただ、みんなを笑顔にしているだけなのに。

きっと笑顔が足りないんだ。
もっともっとも~っと、たくさんの人を笑顔にしたら、みんなの評価も変わるよね!

「スマイル、プリーズ?」

わたしはあなたに言っているんだよ?
……ほら、画面越しに見てるでしょ?


おわり

2/6/2026, 6:27:40 AM

『溢れる気持ち』

洪水のように溢れる気持ちが、止められなかった。
我慢して我慢して我慢してダムのように決壊したソレは、瞬く間に全てを奪っていった。

○○○

世の中には、良い事と悪いことがある。
良い事はしてもいいけど、悪いことはしたらいけない。
悪口を言うのは良くないこと。人を嫌うのは良くないこと。
仲良くするのはいいこと。喧嘩するのは悪いこと。

……だからずっと、我慢してきた。

僕はどうにも凡庸で、やることなすこと在り来りだ。
特に長所もなければ、短所もない。
至って平均点が取れるような、そんな凡庸さ。

隣の幼馴染は、顔が良くて、性格が良くて、勉強も運動も出来て、色んな人から人気だ。
幼馴染であった僕らは、よく比べられた。
そのたびに彼は言う。

「俺ら、友達じゃん。そんなの関係ないよ」

僕が、一番そう思いたかった。
…………思えなかった。

募って募って、限界まできていた僕はやらかした。

幼馴染の結婚式。
僕は親友としてスピーチを任された。

偽るべきだった。根も葉もない嘘八百を並び立てるべきだった。この世に存在しない親友とやらの役を演じ切るべきだった。出来なかった、そんなこと。

全てを吐露した。
人生にたった1度しかない晴れ舞台をぶち壊した。

僕は全てを失った。
友人、知人から縁を切られ、両親からも絶縁された。

「お前がそんなヤツとは思わなかった。言ってくれれば良かったのに、俺ら親友だろ?」

——僕は親友だと思ったことは、一度も無かったんだよ。

全てを失った筈なのに、どこか清々しい気分だった。
なんとなく空を見上げる。

「あぁ、空ってこんなに青かったんだ」

思わず涙が溢れてきて、僕はボロボロと子供のように泣いた。

やっと、生きてるって気がした。


おわり

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