『消えない灯』
私はもうすぐ死ぬ。
命の炎が燃え尽きるのを、ひしひしと感じている。
物事には終わりというものがあり、人間には寿命というものがある。
だから、
「死なないで! 死なないでよ! ねぇ!!」
もう瞼が開かない中、顔面にぼたぼたと熱い涙が落ちてくる。
あぁ、泣いてくれるのか。こんな私のために。
なんて、なんて優しくて、愚かな子だろうか。
「師匠! ねぇ! 師匠!! 言ったじゃん! アタシが一人前の陰陽師になるまで死なないって! 必ず側で立派に育てるって! ねぇ!!」
あぁ。本当に。
ごめんなさい、そして、ありがとう。
「っぁ…、」
「師匠!? なに!?」
首元にかかるネックレス、陰陽師として一人前の証を指差した。
「ぉまえ、だいじょぶ……ぃき、なさぃ」
「!!! ……はい」
あの子が私のネックレスを取って、駆け出して行く。
そうだ、それでいい。
私の灯はここで潰える。
だが、消えない灯がある。
正義という心だけは、私からあの子へ。
消えることなく聖火のように渡された。
願わくば、あの子の未来に前途あることを。
あの子に一緒に笑い合える仲間が出来ますように。
私はろくに動かない口元を無理やり動かして笑い……。
そのまま意識は沼のように沈みこんだ。
おわり
12/7/2025, 5:17:47 AM