たーくん。

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5/15/2025, 11:21:41 PM

水滴が垂れ落ちる音しかしない真っ暗の洞窟。
戦士達がこの洞窟を通るという噂を聞いた魔物達は、戦士達を食らうべく、洞窟内の灯りを消して結界を張った。
突然灯りが消え、慌てる戦士達。
魔物達は、ゆっくりと戦士達の所へ近づいていく。
「魔法使い!ライトの魔法で光を!」
「分かりました戦士さん!ライト!」
魔法使いはライトの魔法を唱えるが、ふわっと光るだけですぐに消えてしまう。
「駄目です戦士さん!洞窟内に魔法力を低下させる結界が張ってあります!」
「魔物の仕業か。ならば……僧侶!頭を借りるぞ!」
戦士は僧侶の頭を両手で掴み、魔法使いの前に出す。
「戦士よ、了解する前にいきなり頭を掴まないでくれ」
「魔法使い!僧侶の頭にライトの魔法を使ってくれ!」
「……聞いとらんな。これだから若いもんは……」
「僧侶さん、頭借ります!ライト!」
魔法使いが僧侶の頭に向かってライトの魔法を使うと、まばゆい光を放ち、洞窟内は光に包まれる。
「なんだこの光は!グアアア!」
魔物達は光と共に消滅した。
徐々に光は収まっていき、消えていた洞窟内の灯りが再び灯る。
戦士は僧侶のハゲ頭を利用し、ライトの魔法を反射させて威力を上げたのだ。
「まさかわしの頭が役に経つとはな。これで先へ進め……ん?」
僧侶の周りには、光でやられた戦士と魔法使いが倒れていた。

5/14/2025, 11:13:10 PM

休日の昼間の街に溢れかえる若い女性達。
すれ違うたび、いい匂いがする。
女性の匂いを堪能するのもいいが、俺は酸素になりたい。
そうすれば、女性の鼻と口から体内に入り、じっくり体内を冒険してから、女性の二酸化炭素となって外へ出れる。
想像するだけて頬が緩み、今にもよだれが出そうだ。
「ママー、あの人一人でわらってるよー」
「しっ!変な人に指ささないの!」
幼女と人妻にボロクソ言われているが、対象外なのでなに言われてもノーダメージ。
「……」
黒髪ロングの清楚な女性に、変な目で見られている。
ゾクゾクして、なにかに目覚めそうだ。
世の女性から冷たい目で見られても、俺は生きている。同じ空気を吸って!
「すぅーーー!」
「なんかこっち向いて息吸ってる!?」
「やだ!キモい!」
罵声を浴びながら、俺は思いっきり女性達の匂い付きの空気を吸ってやった。
この後、不審者として警察官から職質を受けたのは言うまでもない。
……やっぱり俺は、人目につかない酸素になりたい。

5/13/2025, 11:15:39 PM

空は夜のように暗く、先が見えない海。
この海の中から探さないといけないのか……。
意を決して海に潜って探すが、全然見つからない。
いったいどこに沈んでしまったのだろう?
「まだ思い出せないの?」
海の外から、彼女の声が聞こえてきた。
「も、もう少し待ってくれ!すぐに思い出すから!」
俺は慌てて彼女に返事をする。
彼女はもう待ってくれそうにない。早く探さなければ。
いったいどこにあるんだよ……彼女と付き合い始めた日の記憶は!
この記憶の海の中にあるはずなのに、見つからない。
海から出て、待ちくたびれている彼女に結果を報告する。
「ごめん。思い出せなかった。いつだったっけ?」
「今日よ!バカ!付き合い始めて今日で一年なのに忘れるなんて、信じられない!」
女って、どうしてこんなに記念日とか気にするんだろう?
忘れてた俺も悪いけど、そこまで怒るかね……。
「俺が悪かったよ。ごめん。埋め合わせはきちんとする。なにかしてほしいことがあれば言ってくれ。なんでもするから」
俺は頭を深く下げ、彼女に謝った。
「分かった。今回は許してあげる。でも、ちゃんと覚えててね?」
「もう絶対に忘れないさ」
今度はすぐ思い出せるよう、記憶に目印をつけておこう。
「なにしてもらおうかなぁ」
彼女はあごに手を当てて、俺になにをしてもらおうか考えている。
「じゃあ、私の大好物をご馳走してくれる?」
「お安いご用さ。えっと……」
彼女の大好物って……なんだっけ?
俺は思い出すべく、再び記憶の海に潜った。

5/12/2025, 11:22:26 PM

電気がついていなくて、時計の秒針が動く音しかしない家の中。
俺のことを分かってくれるのは、ただ君だけ。
そう……思っていた。
「あなたとはもう一緒に居たくない。離婚して」
時間を掛けて愛を育んで一緒になったのに、別れる時は一瞬。
暗い家の中を見ていると、寂しさと恋しさが襲ってくる。
「パパー」
娘に呼ばれて、我に返る。
どうやら俺はボーッとしていたらしい。
妻と別れてから、娘の幼稚園の送り向かいは俺がしている。
娘には色々苦労かけて、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「だいじょうぶだよパパ。わたしがついてるから。ずっといっしょだよ」
娘は花が咲いたようにニコニコ笑う。
見ているだけで、心が温かくなっていく。
「……ありがとう」
娘の頭を撫でると、娘は「えへへ」と喜ぶ。
娘に心配かけないよう、もっとしっかりしないとな。
俺は娘と手を繋ぎ、照明スイッチを押して、家の中の明るくした。

5/11/2025, 11:22:43 PM

地元の港にやってきた大きな白い船。
名前は、未来丸というらしい。
俺を含む数人の男女は、更正させれるために港へ連れてこられた。
全員、ひきこもりのニートなのだ。
ここから離れた島に更正施設があるらしく、今日から一年間そこで過ごすことになる。
正直、行きたくない。
だが、将来のことを考えて、親に迷惑をかけたくないので、頑張ろうと思う。
船から、強面のムキムキ男が降りてきた。
筋肉を見せつけたいのか、服装は半袖半ズボン。
この人が更正施設の教官なのだろうか?
俺達は男に厳しい目を向けられる。
「あなた達、いい目をしているわね。大丈夫、心配しないで。あなた達ならきっと更正出来るわよ。さっ、船に乗って」
男はおネエ言葉で俺達を激励した。
この人が教官か……少し、不安だ。色んな意味で。
俺達は船に乗り込む。
船は波でゆらゆら揺れて、少し怖い。
「全員乗ったわね!未来丸船長の私が、あなた達の未来を変える第一歩として、無事に島まで送り届けるわ!未来丸、出港よ!」
だからこの船は未来丸って名前なのか。
船はエンジン音を響かせながら、動き始める。
いや、それにしても……。
このムキムキおネエ男は教官ではなく、船長だったとは。
外の世界は不思議で溢れてるんだなと、実感した。

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