たーくん。

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4/28/2025, 11:44:01 PM

太陽が消え、永遠に暗い夜が続く空。
夜の魔王が太陽を封印し、空を支配したのだ。
ずっと夜が続き、外で遊べなくなった子供達は太陽を取り戻すべく、親が寝ている隙に、夜の魔王がいる魔王城へ向かった。
夜の魔王城は、まるでお化け屋敷のような不気味さで、子供達は怖くてなかなか城の中へ入る勇気が出ない。
「ぼくが先に入るから、みんなついて来て!」
一人の男の子が、先頭に立ち、扉を開けて城の中へ進んでいく。
子供達は男の子のあとに続いて、城の中へ入った。
城の中は薄暗く、明かりは壁に灯されている松明の火のみ。
男の子は松明の火が続く廊下を、先頭でどんどん進む。
あとに続いて歩く子供達は、勇気ある男の子を勇者と呼ぶようになった。
子供達はひたすら歩き、ようやく夜の魔王がいる王座の間に辿り着く。
奥には、夜の魔王が足を組みながら大きな椅子に座っている。
「よく来たな……って、大人ではなく子供が来たのか。まぁいい。子供であろうと容赦は──」
「みんな!とつげきだぁー!」
「わあああ!!!」
夜の魔王が語り終わる前に、子供勇者の合図と共に子供達は走り出す。
廊下の途中で拾った松明の木の棒を武器に、子供達は夜の魔王を叩いたり、殴ったり、突いて攻撃した。
「たいようをかえせ!夜のまおー!」
「お前のせいで、外であそべなくなったんだぞ!」
「こうさんしろー!」
子供達は何度も何度も、手加減なしで夜の魔王に攻撃する。
「分かった……!分かった!太陽は返す!だからもうやめてくれ!いてぇ!」
夜の魔王はあっさり降参し、太陽を封印したクリスタルを子供達に渡す。
子供勇者が封印を解くと、窓の外から光が射し込んできた。
空には太陽が現れ、光が地上を照らしている。
長い長い夜が、明けた。
「夜のまおー、はんせいしてもらうために、このクリスタルの中に入ってもらうぞ」
子供勇者はクリスタルを夜の魔王に向けて言った。
「そんなことをすれば、今度は永遠に夜が来なくなるぞ。それでもいいのか?」
「えいえんに夜が来ない……?」
夜の魔王の言葉を聞いて、子供勇者と子供達はニヤっと笑う。
「ま、まさかお前達……待て、早まるな」
夜の魔王は後退りし、逃げようとしている。
子供勇者は迷うことなく、クリスタルで夜の魔王を封印した。
「これでずっと外であそべるぞ!」
「やったーーー!」
永遠に夜が来なくなり、子供達はずーーーっと外で遊びに遊びまくった。
親という真のラスボスがいることを忘れて……。

4/28/2025, 3:22:15 AM

壁に貼られた複数枚の彼女の写真。
僕は写真が趣味で、彼女の写真をよく撮っていた。
特に気に入っているのが、ふとした瞬間に出る何気ない表情の写真だ。
色気が出ていて、今見てもドキドキする。
だけど、二年前に彼女にフラれた。
僕は必死に引き止めたけど、彼女の気持ちは変わることはなく、僕達の恋人関係は終了。
彼女は元カノになり、彼女の写真は思い出の写真になってしまった。
写真を捨てようと思ったが、捨てられない。
新しい恋をしようという気持ちも沸かない。
だって、彼女が全てだったから。
……確か、彼女は今、男と同棲しているらしい。
この前、手を繋いでマンションの中へ入っていくのを見た。
彼女は今、どんな表情をしているのだろう?
彼女の、新しい写真が欲しいな……。
僕はカメラを持ち、彼女と男が同棲しているマンションへ向かった。

4/27/2025, 2:36:29 AM

真っ黒のボディで、いかつい蒸気機関車。
今日は、恋人のミアの見送りで駅に来ていた。
ミアは家庭の事情で、遠く離れた地へ行ってしまう。
俺は駅のホームから窓際の席に座っているミアと、窓を開けた状態で、発車する時間まで話す。
ミアはずっと微笑んでいて、この前号泣していたのが嘘のようだ。
多分、俺を心配させないように、悲しい気持ちを抑えて、微笑んでいるんだと思う。
俺は、ミアに向かって想いをぶつける。
「どんなに離れていても、俺は君への想いは変わらない。ずっと愛しているから!」
「ああ……ルイス……。あなたの言葉、すごく嬉しいわ!お願い、私の手をギュッと握って!」
「ミア!」
窓から出てきたミアの手を、俺はギュッと握る。
離したくない……この手を。
駅の時計を見ると、もうすぐ発車の時間だ。
「ミア、名残惜しけど、発車の時間だ。手を離してくれないか?」
だが、ミアは手を離そうとしない。
蒸気機関車は黒い煙と白い煙を出しながら、プオォォォ!と汽笛を鳴らす。
「どんなに離れていても想いは変わらないから、だから……手を離してくれないか?」
「いやよ!」
こうなったら無理にでも手を離して……あれ?離れないぞ。
まるで手と手が磁石でくっついているかのようだ。
「私の手には超強力な接着剤を塗ってあるの。ルイス、私と一緒に行きましょ!」
蒸気機関車が動き始めた。
手を離すことが出来ず、俺はそのまま蒸気機関車と共に走る。
「うおおお!!!ミアあああ!!!」
「ルイスううう!!!」
周りからは蒸気機関車に乗った恋人を必死に追いかけているように見えるが、俺は蒸気機関車とミアに引っ張られているのだ。
このままでは俺だけでなく、ミアの身も危ない。
「ていっ!!!」
俺は蒸気機関車へ飛び移り、身体を機関車にくっつける。
「ルイス!これで私達、ずっと一緒ね!」
「あ、ああ……強制的にだけど……ゲホッ!ゲホッ!」
前から飛んでくる蒸気機関車の煙に当たり、咳き込む。
駅まで体力と身体は持つだろうか……。
命綱は、ミアの手だけだ。
俺は蒸気機関車にしがみつきながら、ミアと共に遠い地へ向かった。

4/26/2025, 1:29:57 AM

彼女とのメッセージのやり取りが映るスマホ画面。
俺達は遠距離恋愛をしていて、お互い社会人で忙しく、月に一回しか会えていない。
また会いたいねって話になり……。
「最近俺ばっかりそっちに行ってるから、たまにはこっちに恋よ」
“来い“を“恋“と間違えて変換してしまい、そのまま送ってしまった。
削除しそうとした瞬間、彼女からメッセージが届く。
「また愛にきて♡」
彼女は“会い“を“愛“にわざと変換して、おまけにハートを付けて送ってきた。
……可愛いやつめ。
「分かった。俺が、また愛に行く」
「うんっ。楽しみに待ってるね!」
結局また俺が行くことになったけど、誤変換のおかげで愛が深まり、早く彼女に会いたくなった。

4/24/2025, 11:18:47 PM

現実と同じくらい、星の数ほどいるSNSの女性達。
今日も自室に籠り、複数人にダイレクトメッセージを送る。
何人か返事が返ってきて、数回やり取りをするが、最終的にブロックされてしまい、強制終了してしまう。
運命の出逢いとかいうけど、俺には全く縁がない。
だから俺は、こうして自分で出逢いのきっかけを作るしかないんだ。
巡り巡って出来た出逢いが、本当の運命の出逢いだと、俺は思う。
トイレへ行き、戻ってくると、誰かからダイレクトメッセージが届いていた。
「あんた、何人もの女性にメッセージを送ってるらしいじゃない。都合が悪くなったらアカウント作り直してるみたいだし。そんなに出逢いがほしいなら、外に出て探しなさいよ」
正論の矢が飛んでいて、胸に突き刺さる。
矢を抜くことも、言い返すことも出来ず、放心状態になり、指を動かすことも出来なかった。

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