たーくん。

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5/26/2025, 11:24:16 PM

やっと、俺にも彼女が出来た日。
ここまで、本当に長かった。
嬉しすぎて踊りそうになったけど、高ぶる気持ちをぐっと抑える。
「今日から恋人だから、私のこと名前で呼んでほしいな」
「分かった。友子、改めてよろしく。君のこと大事にするよ」
そして、初めて君の名前を呼んだ日でもあった。
「……私、友美なんだけど」
「えっ、ああ!そうだった!友美だ!友美!」
「やっぱり噂は本当だったのね。あんた、色んな女の子に手出してるでしょ?」
「いや……そんなことは……」
冷や汗が頬を伝う。 
毎日、複数人の女の子達と話しているから、つい名前を間違えてしまった。
しかも噂になっているとは知らなかった……ど、どうしよう。
「動揺がモロに顔に出てるわよ。はぁ……噂は嘘だと思ってたのに……信じた私が馬鹿だったわ」
「と、友子が本命なんだ!信じてくれ!」
「だから私は友美だってば!この馬鹿!」
ボクサーのパンチより素早いビンタを飛んできた。
頬にクリティカルヒットし、俺は見事にノックアウト。
友子……いや、友美は早足で教室から出ていった。
俺は、今日という日を忘れないだろう。
彼女が出来たと思えば、名前を呼び間違え、ビンタをされて振られた日のことを。
ヒリヒリと痛む頬をさすりながら、そう思った。

5/25/2025, 11:22:35 PM

ベッドの上以外、物が散乱している暗い部屋。
枕元に置いているスマホを取り、画面を点けると、部屋に小さな明かりが灯る。
時刻は……5時36分。
24分早く目が覚めてしまった。
外からは、パラパラと雨が降っている音が聞こえる。
雨音が心地よくて、目を瞑れば二度寝出来そうだ。
まだ起きるには早いし、もう一回寝ちゃえ。
画面を消し、スマホを枕元に戻す。
目を瞑り、再び寝るモードに入る。
……そういえば、今日は会議があるんだっけ。
嫌だなぁ……誰か代わってくれないかな。
あと、今日中に書類を提出しないといけない。
面倒だなぁ……課長、期限伸ばしてくれないかな。
寝ようと思ったのに、次々と嫌なことばかり思い出してしまう。
よーし、今度こそ頭を無にして──。
ピピピ!ピピピ!
スマホにセットしていた目覚ましが、部屋中に響く。
時間切れ!早く起きなさい!と言っているかのように。
スマホに手を伸ばし、目覚ましを止める。
「はあ……」
溜め息をつきながら、ベッドから起き上がる。
外から聞こえる雨音は、さっきより少し弱まっていて、まるで私を励ましてくれているように思えた。

5/25/2025, 3:07:25 AM

夜に近づくと共に賑わう駅前。
向かいのビルの大きいモニターからは、テレビで見たことあるグループのMVが流れている。
しばらく聴いてみたが、曲調が早く、早口で歌っていて、何を言っているのか分からない。
これを聴いている今の若者はすごいなぁって感心する。
駅前には、新社会人らしき若者が沢山いた。
笑顔で会話していて、まるでキラキラ輝く宝石みたいだ。
俺も昔はあんな感じだったのだろうか。
今は輝きを失った石ころだけどな……ハハハ。
今の仕事を辞めて、昔やりたかった仕事に就きたいって気持ちはあるけど、今更この歳でって思うと、勇気が出ない。
まぁ、別にこのまま現状維持でも、いいか……。
駅の入口へ向かっていると、ギターの音と歌声が流れてきた。
入口から少し離れた所で、俺と同い年ぐらいの男性がギターを弾きながら歌っている。
観客は一人もおらず、チラ見するだけで誰も足を止めない。
俺は歌っている男性に興味をもち、男性の元へ向かい、観客第一号になった。
曲調がゆっくりで、優しい口調で歌っていて、耳にすんなり入ってくる。
歌詞も分かりやすく、一昔の曲って感じだ。
「ありがとうございました」
男性は全ての曲を歌い終わり、ギターと一緒に一礼した。
観客は増えず、最後まで俺一人だけ。
俺は歌いきった男性に拍手を送る。
「最後まで聴いてくれたのは、あなたが初めてです。本当に、ありがとうございます」
「曲は全てあなたが作ったんですか?」
「はい、学生の頃に作った曲です。本当は音楽の道へ行きたかったんですけど、親に心配させたくなくて、普通に働く道へ進みました。でも、心のどこかで諦められない気持ちがあって……こうしてここで歌ってます。今更この歳でこんなことして変ですよね、ははは」
男性は笑いながら頬を掻く。
確かに、こういうのは若者がやることだが、俺には男性が若者と同じくらい輝いて見えた。
「いえ、そんなことないですよ。むしろ輝いててかっこよかったです。それに、勇気が出ました」
「勇気?」
「あ、いえ、こっちの話です。また歌ってるのを見掛けたら必ず見に来ますね」
「ありがとうございます。気をつけて帰って下さい」
俺は男性に軽く手を挙げて挨拶してから立ち去る。
俺も、やりたかったことやってみるか。
さっきより軽くなった足取りで、再び駅の入口へ向かった。

5/23/2025, 11:27:45 PM

窓から太陽の光が射し込んで、少し明るくなった私の部屋。
隣で、彼氏は団子虫のように丸くなって、寝息をたてながら寝ている。
夜中暑かったのか、掛け布団はめくれていた。
だけど、朝はまだ少し寒い。
私は彼氏に抱きついて温めてあげようとしたら、彼氏は寝返りして反対方向へ向く。
「むー」
なんでこのタイミングで寝返りするかなぁ?
せっかくのモーニングハグが台無しだよ。
「だったら私も寝返りしてやるもんね」
私も寝返りし、反対方向へ向く。
彼氏と背を向く形になり、なんだか虚しくなってきた。
もう一度寝返りして、彼氏の方を向こうとしたら、背中から温もりを感じる。
彼氏が、私を包み込むように後ろから抱きつかれていた。
彼氏の寝息が後ろ髪にかかり、ドキドキする。
どうやら彼氏はまだ寝ているらしい。
もう、仕方ないなぁ。
私は彼氏が起きるまで、温もりを味わった。

5/22/2025, 11:15:14 PM

容量を圧迫しているスマホの写真フォルダ。
中には、先月別れた彼氏と一緒に撮った写真がいっぱい入っている。
何度も消そうとしたけど、なかなか消せなかった。
だけど、昨日の私と今日の私は違う。
フォルダに親指を置き、長押しする。
削除ボタンが現れ、迷うことなく……押す。
写真は、フォルダと共に消えた。
これでいい……はずなのに、消えたと思うと、後悔の波が押し寄せてくる。
やっぱり、消さないほうがよかったかもしれない。
写真は思い出として、残すべきだったかも。
……そういえば、万が一のために、USBメモリに写真のデータをコピーしていたことを思い出す。
スマホをベッドの上へ放り投げ、机の上にあったUSBメモリをパソコンに刺した。
さっき消した写真フォルダを見つけ、一安心する。
いつでも見れるように、スマホに写真フォルダをコピーしておこっと。
今日の私は違うはずだったのに、昨日の私に逆戻りしてしまった。

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