どこまでも広がる白い雲。
俺は交通事故で死んでしまい、早めの天国へ来てしまった。
「まだここは天国ではないですよ。ここで天国行きか地獄行きか判断します」
一匹の天使が近づいてきて、そう言った。
手には紙を持っていて、俺と紙を交互に見ている。
「……残念だけど、君は地獄行きだね」
「え!?なんでだよ!罪を犯してないのに!」
「君は蚊を千匹以上殺している。蚊とはいえ小さな命だ。その命を沢山奪ったのがよくなかったね」
「そ、そんな……」
蚊を叩いただけで地獄行きになるなんて……。
そんなことがあっていいのか?
「それじゃ、地獄へいってらっしゃ〜い!」
天使は俺に向かって手を振る。
足元の雲に穴が開き、俺は納得出来ないまま、真下へ落ちていった。
自宅に届いた一枚の手紙。
送り主の名前は、相変わらず書いていない。
中身の手紙に書いているのは「Love you」の文字だけ。
これで今日を含め、三十通目。
手紙は一ヶ月前からポストに入れられ始めた。
俺がここへ引っ越して来た日からだ。
最初はイタズラかと思って気にしなかったが、一ヶ月も続くと不気味になってくる。
心当たりはないし、一体誰が……。
犯人を捕まえるべく、ポストに手紙を入れられる瞬間を待ち伏せすることにした。
深夜1時、ウトウトしかけた時に、ポストの蓋が開く音がしたので急いで外へ出る。
そこに居たのは……一人の若い女性だった。
「君が毎日手紙を入れてたのか?」
そう問うと、女性はあたふたしながら口を開く。
「私、あなたを一目見た時から好きだったんです。直接伝えづらくて、手紙を入れてました……ごめんなさい」
女性は頭を下げて謝ってくれた。
反省してくれてるみたいだし、これ以上責める気はない。
「ちなみにですけど、どこの方ですか?」
女性に問うと、女性は俺の家の隣に指を指す。
隣の家は確か……誰も住んでいない空き家のはず。
「私、借金返済に困って自ら命を絶ったんです。隣の人に助けを求めても助けてくれませんでした。私が自殺したあと引っ越したらしいけど、こうしてまた、あなたが来てくれて嬉しい」
女性をよく見ると、肌が真っ白で、首にはヒモで強く絞められたような跡が付いていた。
空に浮かぶ、太陽のような明るくて丸い物体。
太陽が温暖化の原因と言い張る大統領が、ロケット型宇宙ミサイルを打ち上げ、太陽を破壊してしまった。
大統領は死刑になり、太陽の代わりに人工太陽を打ち上げてから十年。
気温は下がるどころか、10℃以上上がっている。
人工太陽は、もう空のオブジェとしかなっていない。
だが、そんな太陽とも、もうすぐお別れだ。
我々は地球を捨て、別の惑星へ移住する。
宇宙船に乗り、宇宙へと飛び立つ。
窓から宇宙空間を見ると、人工太陽が羨ましそうにこっちを見ていた。
何を始めるのも、全て0からのスタート。
色んな経験をして、どんどん数字を増やしていく。
途中で数字が止まっても大丈夫。
だって、一気に数字を増やしても疲れるだけだから。
少しずつ、ゆっくりと、数字を増やしていくといい。
気長に、100を目指していこう。
「辛かったねぇ」
「分かるよ、その気持ち」
「私でよければ相談に乗るよ!」
私の事を分かったかのように近づいてくる女達。
顔や言い方は私のことを同情していても、心の中では嘲笑っている。
だから、私は同情されても軽く流して無視しているのだ。
「なによあいつ」
「折角同情してやってるのに」
ほら、すぐに本性を現した。
あんな奴らに同情されるぐらいなら、私は一人でいい。
「えー!そんなことがあったの!?」
「私も同じことあったから気持ち分かるよ!」
歩道を歩いていると、前から歩いてきた三人組とすれ違う。
「はぁ……」
思わず、溜め息が出る。
少し羨ましいと感じながら、私は一人で遊びに出かけた。