セミが鳴き始めた七月中旬。
外営業の途中、少し休憩するために近くの公園に寄る。
木の影がちょうどベンチにかかっていたので、座って涼む。
柔らかくて緩やかな風が、身体を撫でて気持ちいい。
「……連絡してみるか」
鞄からスマホを取り出し、彼女にメッセージを送ろうと文字を入力していく。
"8月、君に会いたい"
送信ボタンを、ゆっくり押した。
彼女と最後に会ったのは、去年のクリスマス。
「それじゃあね」
予約していたレストランでの食事を終え、どこにも寄らず真っ直ぐ帰っていく彼女。
まるでその姿は、義務を終えた感じだった。
それから、半年以上彼女と会っていないし、連絡もない。
こっちから連絡しても「今忙しいから」という愛想がない返事だけ。
彼女も仕事をしているから、忙しいのだろうと思っていたが、だんだんと疑問へと変わる。
多分、彼女は……。
メッセージを送ってから数分後、返信が届く。
"私、新しい彼と生活してるから無理。もう連絡してこないで"
……こんなことだろうと、思っていた。
少しでも信じていた俺は……馬鹿だ。
画面を消し、スマホを鞄へ押し込む。
近くの木でセミが鳴き始め、鳴き声が俺の心にジンジンと響いた。
8/1/2025, 10:14:46 PM