たーくん。

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俺に向けられた、明るすぎるライト。
眩しすぎて、薄目でしか目を開けられない。
もっとあなたの顔を見たいのに。
もっとあなたの顔を目に焼きつけたいのに。
ライトが、邪魔をする。
「あのぉ……目つぶって下さいね?」
歯科衛生士のお姉さんが、俺を見下ろしながら言った。
嫌だ……。俺はお姉さんの顔をもっと見たいんだ!
俺はライトの光に負けじと、カッ!と目を開ける。
「目隠して」
「はい」
反対側に座っていた歯科衛生士の助手が、布みたいな物を俺の目の上に乗せる。
眩しいライトも、お姉さんの顔も見えなくなり、目の前が暗くなった。
くっ……負けるものか!
俺は目の上に乗せられた布を取ろうと手を動かす。
「お・と・な・し・く・し・て・く・だ・さ・い・ね?」
お姉さんはゆっくりとした怒った口調で、俺に言った。
「は、はい……」
もはやここまでか……。
大人しく、お姉さんの指示に従おう。
今日の歯石取りは、いつもより少し痛く感じた。

7/31/2025, 10:24:37 PM