電気がついていなくて、時計の秒針が動く音しかしない家の中。
俺のことを分かってくれるのは、ただ君だけ。
そう……思っていた。
「あなたとはもう一緒に居たくない。離婚して」
時間を掛けて愛を育んで一緒になったのに、別れる時は一瞬。
暗い家の中を見ていると、寂しさと恋しさが襲ってくる。
「パパー」
娘に呼ばれて、我に返る。
どうやら俺はボーッとしていたらしい。
妻と別れてから、娘の幼稚園の送り向かいは俺がしている。
娘には色々苦労かけて、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「だいじょうぶだよパパ。わたしがついてるから。ずっといっしょだよ」
娘は花が咲いたようにニコニコ笑う。
見ているだけで、心が温かくなっていく。
「……ありがとう」
娘の頭を撫でると、娘は「えへへ」と喜ぶ。
娘に心配かけないよう、もっとしっかりしないとな。
俺は娘と手を繋ぎ、照明スイッチを押して、家の中の明るくした。
5/12/2025, 11:22:26 PM