たーくん。

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5/6/2025, 1:16:11 AM

エアコンが効いて快適過ぎる教室。
昼飯を食べたあとは、睡魔が襲ってきて眠い。
ただでさえ眠いのに、午後一発目の授業は国語。
先生が喋る言葉が子守唄のように聞こえ、更に眠気が増す。
マジックでホワイトボードに書く時に鳴る“キュッキュッキュッ“の音は、まるで子守唄の間奏のようだ。
もうすぐ中間テストだから、眠気と戦いながらホワイトボードを見ていると、横から紙くずが飛んできた。
なんで紙くずが?俺の席はゴミ箱じゃないぞ。
紙を広げると、何か書いていた。
『あなたのことが好きです。私と付き合って下さい!山本より』
紙はくしゃくしゃだけど、字は綺麗で可愛い。
これはもしかして、ラブレターってやつか?
山本って……。
周りを見渡すと、一人の女子がこっちを見ていた。
山本さんは大人しくてクラスであまり目立たない子だが、隠れ美女として、男子の間で噂になっている。
まさか授業中にこんな大胆なことをしてくるとは。
山本さんは照れているのか、こっちを見ながらあたふたしている。
ふっ……可愛いやつめ。
俺は見つめてくる山本さんの目を見つめ返し、イケメンスマイルを送った。
だが、山本さんは大きくぶんぶんと首を横に振る。
多分、『他の子達に見られちゃうから、あとで私だけに見せて!』と訴えているのだろう。
仕方ないなぁ、あとでたっぷりイケメンスマイルを見せてあげるか。
「田中君っ」
隣の井上さんから、小声で呼ばれた。
同時に折りたたまれた紙を渡される。
「山本さんからだって」
紙を受け取ると、井上さんは何事もなかったかのように、すぐにホワイトボードの方を向く。
これは、追いラブレターってやつか?
授業が終わってからたっぷり告白を聞いてあげるのに。
まったく、我慢が足りない子猫ちゃんだぜ。
山本さんからの追いラブレターを開き、内容を読む。
『さっきの手紙、田中君へ送ったものじゃないの!返して!』
さっきの字とは違い、力強くて荒々しい字。
つまり、他の誰かに送るラブレターが、まちがって俺の所へ飛んできたということか。
俺は告白されるどころか、フラれただけになってしまった。
俺の純粋な心に、ダメージを負う。
恥ずかしさと怒りで、ビリビリと音と立てながら紙を破りちぎる。
「ちくしょー!」
「うるさいぞ田中!」
先生に注意され、更にダメージを負った。

5/4/2025, 11:42:01 PM

緑が多くて、自然溢れる公園。
木々の隙間から太陽の光が差し込み、あちこちに光の柱が出来ていて、神秘的な世界に包まれている。
今日も、気になる彼女に会いに来た。
彼女は草のじゅうたんに寝転び、光の柱に当たって、気持ち良さそうに日向ぼっこしている。
俺は気づかれないようゆっくり近づき、彼女の横に寝転ぶ。
今日は気温が低めだから、ぽかぽかした太陽の光が気持ち良くて、このまま寝てしまいそうだ。
「ふあ~~~」
俺が大きな欠伸をすると、彼女の体がビクッと跳ねる。
こっちを向き、俺を確認すると、プイッと顔を反らす。
初めて出会った時は目を合わせてくれたのになぁ。
これでも彼女との距離は縮まったと思う。
最初は近づくだけで逃げられたし、心を開いてくれなかった。
諦めずに何度も彼女と接した結果、逃げなくなった。
まぁ、俺が一方的に話しかけたんだけど。
いつかまた、目を合わせてくれる日は来るのだろうか。
彼女の頭を撫でようとすると、パンチが飛んできた。
「にゃっ!」
気安く触るんじゃないよ!と訴えるかのような猫パンチ。
彼女は立ち上がり、俺に尻を向けて去っていく。
思わず見入ってしまうほどの、ふわふわの尻尾とプリプリなお尻。
「まったく、照れ屋な子猫ちゃんめ……ん?」
彼女のお尻の下には、立派なにゃん玉が付いていた。

5/3/2025, 11:28:07 PM

どこまでも広がる青い海と青い空。
見ているだけで吸い込まれそうになる。
どうして海と空は青いのだろう?
地球に水が多いからか、太陽が光を照らして青くしているのか、神様が頑張って色を塗ったのか。
そんなつまらないことを考えながら、海と空をぼーっと見ている。
「おじちゃん、じゃまだよ。そこどいて」
「っと、ごめんよ」
「ありがとー!」
俺がその場から離れると、女の子は俺が立っていた場所にしゃがみ、小さい青いスコップで砂浜を掘り始めた。
周りには、潮干狩りに来ている人達でいっぱいだ。
「……帰るか」
まったく、独り身はつらいぜ。
砂浜を歩いている途中で強風が吹き、目と口に砂が入る。
「ゲホッ!ゲホッ!ぺっぺっ!」
俺は足を止めて振り返り、青い海と青い空に向かってキッと睨み、目で文句を言ってやった。

5/3/2025, 1:07:07 AM

テーブルの上に並んだ甘いお菓子達。
仕事帰りに、お気に入りの洋菓子店で買ってきたのだ。
『先輩は彼氏との甘々な思い出とかあるんですか?』
今日、職場で後輩から聞かれた質問。
今思い出しても、腹が立つ。
私は今まで彼氏が出来たことがないし、仕事以外で男性と話すことはほとんどない。
私が回答に困っていると、後輩は追い討ちをかけるように攻めてくる。
『あれれ?もしかして先輩って──』
『あ、あるわよ!少しぐらい……』
つい勢いで言ったけど、後輩はニヤニヤしていた。
絶対バレてるよね……。
「はあ……」
大きな溜め息を吐きながら、お菓子を掴んで口へ運ぶ。
疲れた時とストレス発散は、やっぱり甘い物を食べるに限るよね。
手を伸ばすごとに、次々とお菓子が減っていく。
お腹の肉を掴むと、まるで大きなハンバーガーを掴んだような感触がする。
ダイエット、したほうがいいかな。
痩せたら彼氏が出来るかもしれないし。
甘々な思い出どころか、体重が増えていく一方だ。
「今日は沢山お菓子買っちゃったし、まっ、いっか。お菓子に罪はないし、食べよ食べよ♪」
私は鼻歌混じりでお菓子を口の中に入れ、ゆっくりと何度も噛み、甘々でとっても幸せな時間を堪能した。

5/2/2025, 1:05:54 AM

ピンクが多くて良い匂いがする可愛らしい部屋。
俺がまさか蚊に転生するとは思わなかった。
寝坊して急いで会社へ向かっている途中、信号無視して横断歩道を走って渡っていると、トラックが走ってきて……。
気がつくと、俺は蚊になっていたのだ。
空を飛んでみたいという願望はあったが、こんな姿
で空を飛ぶことになるとは……。
しかもここは、若い女性がいる部屋。
どうやら女性の職業は看護婦で、一人暮らしをしているらしい。
壁には、ナース服をハンガーに掛けて吊るしている。
今日は一日部屋でだらだらする予定と、独り言で言っていた。
タンスの上で身を潜め、女性を観察して俺なりにまとめた情報だ。
女性の髪は流れるような長い黒髪で、思わず見とれてしまう。
着替えもばっちり見させてもらったぜ……ぐへへ。
おっと、頭の中をピンクに染めている場合ではない。
これからどうするか考えないとな。
とりあえず、腹が減ったので女性の血をいただくとするか。
吸う場所は……そうだな、内ももがいいな。
女性は今ショートパンツ姿だから、ちょうどいい。
下心で選んだのではなく、気づかれにくい場所を選んだだけだからな?
あとはどのタイミングで吸いにいくかだ。
「今日は少し暑いなぁ。換気ついでに窓開けよっと」
女性は部屋の窓を少し開けた。
外から入ってくる弱い風を受け、気持ち良さそうな顔をしている。
……風になって女性の身体に擦り付きたい。
いや、今の俺は蚊。
今出来ることを全力でするしかない。
そうだ、風に乗って一気に女性の内ももへ飛び込もう。
そうすれば、あまりの速さに女性は俺に気づかないはず。
俺は羽をパタパタさせながら、宙に浮く。
風と共に女性の内ももへ向かって、一直線に飛んだ。
「窓開けてたら蚊が入ってくるかもしれないし、スプレーしとこっと」
女性は近くにあったスプレーを持ち、シャカシャカと振ってから、シューと音を鳴らしながら部屋にスプレーをひと噴きする。
……あれ?身体に力が入らない。
羽を動かすことが出来なくなり、そのまま床に落ちた。
目の前には、綺麗で美味しそうな女性の素足。
くちばしの針を伸ばし、血を吸おうとするが、届かない。
くそっ……もう少しなのに……。
「今夜から夜勤だし、もう少し寝よっと」
女性が移動を始め、素足が上がり、俺の頭上に……。
「……はっ!」
気がつくと、俺は白いベッドで横になっていた。
身体を動かそうとするが、動かない。
身体中、包帯でぐるぐる巻きになっている。
一体どうなってるんだ?
「あっ!無理に動いちゃ駄目です」
近くにいた看護婦が、長い黒髪をふわっとさせながら、俺の元へとことこと走ってくる。
「今朝、あなたはトラックに轢かれて病院に運ばれたんです。危険な状態だと言われてましたが……目を覚ましてくれて安心しました」
……そうか。あれから病院に運ばれたのか。
どうやら、俺は運が良かったらしい。
さっきまで蚊に転生していたのは、夢だったのだろうか?
「空気を入れ換えるので、少し窓を開けますね」
看護婦は病室の窓を少し開けた。
外から弱い風が入ってきて、当たると気持ちいい。
生きてるって感じがする。
「助かって良かったですね」
看護婦の長い黒髪が、風と共になびく。
俺の担当の看護婦は、蚊に転生した夢の中に出てきた女性とそっくりだった。

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