たーくん。

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エアコンが効いて快適過ぎる教室。
昼飯を食べたあとは、睡魔が襲ってきて眠い。
ただでさえ眠いのに、午後一発目の授業は国語。
先生が喋る言葉が子守唄のように聞こえ、更に眠気が増す。
マジックでホワイトボードに書く時に鳴る“キュッキュッキュッ“の音は、まるで子守唄の間奏のようだ。
もうすぐ中間テストだから、眠気と戦いながらホワイトボードを見ていると、横から紙くずが飛んできた。
なんで紙くずが?俺の席はゴミ箱じゃないぞ。
紙を広げると、何か書いていた。
『あなたのことが好きです。私と付き合って下さい!山本より』
紙はくしゃくしゃだけど、字は綺麗で可愛い。
これはもしかして、ラブレターってやつか?
山本って……。
周りを見渡すと、一人の女子がこっちを見ていた。
山本さんは大人しくてクラスであまり目立たない子だが、隠れ美女として、男子の間で噂になっている。
まさか授業中にこんな大胆なことをしてくるとは。
山本さんは照れているのか、こっちを見ながらあたふたしている。
ふっ……可愛いやつめ。
俺は見つめてくる山本さんの目を見つめ返し、イケメンスマイルを送った。
だが、山本さんは大きくぶんぶんと首を横に振る。
多分、『他の子達に見られちゃうから、あとで私だけに見せて!』と訴えているのだろう。
仕方ないなぁ、あとでたっぷりイケメンスマイルを見せてあげるか。
「田中君っ」
隣の井上さんから、小声で呼ばれた。
同時に折りたたまれた紙を渡される。
「山本さんからだって」
紙を受け取ると、井上さんは何事もなかったかのように、すぐにホワイトボードの方を向く。
これは、追いラブレターってやつか?
授業が終わってからたっぷり告白を聞いてあげるのに。
まったく、我慢が足りない子猫ちゃんだぜ。
山本さんからの追いラブレターを開き、内容を読む。
『さっきの手紙、田中君へ送ったものじゃないの!返して!』
さっきの字とは違い、力強くて荒々しい字。
つまり、他の誰かに送るラブレターが、まちがって俺の所へ飛んできたということか。
俺は告白されるどころか、フラれただけになってしまった。
俺の純粋な心に、ダメージを負う。
恥ずかしさと怒りで、ビリビリと音と立てながら紙を破りちぎる。
「ちくしょー!」
「うるさいぞ田中!」
先生に注意され、更にダメージを負った。

5/6/2025, 1:16:11 AM