椿灯夏《少しずつ削除します》

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8/17/2022, 12:22:02 PM

お題《いつまでも捨てられないもの》



すっかり色褪せてしまった文字。


何度も何度も見返した。



たとえ遠く離れていても僕らは、ずっとずっと一緒だ。





季節の花々を栞にして同封したり。


そこそこの名産品を。薔薇と蜂蜜のお酒、シロップ漬けにした果実、香草焼き、月魚の燻製――月の魔力が一番強い夜にだけ、それらを食しながら手紙を読む。



何千何万と交わした言の葉。


今日も弟子が手紙と紙包みを持って、愚痴るのを笑顔で聞く。





「紙なんか貯めて、一体どうするんです? 読んだら不要でしょうに」


「ただの紙切れが、僕にとっては一番の宝物なんだよ」





8/16/2022, 11:13:39 AM

お題《誇らしさ》



雪華(せっか)強くおなりなさい。守る者は誰より強くあらねばなりません、誰より美しく、綺麗な生き方をなさい。


――天に立つ者ならば。





食うに困らずの生活とはどんなものだろう。


空腹とは空白。



――生きるために。



なんでもいいからと、まだ熟してない青い実や草を口に入れ、ときには人様の畑から盗む。――どんなに不味くても食べるし、身体に良くないものでも食べる。




生きることに、意味はない。


ただ本能的に、死にたくはない。




そんな私を変えてくれたのは、今の姉様。



身寄りのない私を拾い、《雪華》という名前をくれた。



雪の降る日に出会ったから、と。




銀色の長い髪を結われた姉様が微笑む。季節の花々に囲まれた姉様は、世界にひとつだけの華。



「雪華の好きな紅茶を取り寄せてたのが今日届いたから、一緒に飲みましょう。それから紅茶によく合うお菓子も焼いたの」


「はい」





私は今日も姉様の言葉を胸に生きている。




8/15/2022, 11:12:29 AM

8/14/2022, 11:50:04 AM


8/12/2022, 10:58:56 AM

お題《君の奏でる音楽》



雨の中手を天に向け、歌う少女。


彼女は女神か天使か。




月並みな表現しかできないが、頭の中に壮大な風景が想い浮かぶ。手を伸ばせば、風に游ぐ花にさえ触れられそうだ。


雨さえも祝福しているかのようで。



「……これは夢なのかな。俺は、もう何かから逃げなくてもいいのか、な……」



戦場にあるのは、それぞれの儚く強き覚悟と。失い奪われ散りゆく風花(いのち)だけ。



せめて。


せめて夢の中だけでは…………。





青年の瞳から零れ落ちる雫が、血溜まりに消えていった。



そして、少女の歌は止んだ。



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