お題《いつまでも捨てられないもの》
すっかり色褪せてしまった文字。
何度も何度も見返した。
たとえ遠く離れていても僕らは、ずっとずっと一緒だ。
季節の花々を栞にして同封したり。
そこそこの名産品を。薔薇と蜂蜜のお酒、シロップ漬けにした果実、香草焼き、月魚の燻製――月の魔力が一番強い夜にだけ、それらを食しながら手紙を読む。
何千何万と交わした言の葉。
今日も弟子が手紙と紙包みを持って、愚痴るのを笑顔で聞く。
「紙なんか貯めて、一体どうするんです? 読んだら不要でしょうに」
「ただの紙切れが、僕にとっては一番の宝物なんだよ」
お題《誇らしさ》
雪華(せっか)強くおなりなさい。守る者は誰より強くあらねばなりません、誰より美しく、綺麗な生き方をなさい。
――天に立つ者ならば。
食うに困らずの生活とはどんなものだろう。
空腹とは空白。
――生きるために。
なんでもいいからと、まだ熟してない青い実や草を口に入れ、ときには人様の畑から盗む。――どんなに不味くても食べるし、身体に良くないものでも食べる。
生きることに、意味はない。
ただ本能的に、死にたくはない。
そんな私を変えてくれたのは、今の姉様。
身寄りのない私を拾い、《雪華》という名前をくれた。
雪の降る日に出会ったから、と。
銀色の長い髪を結われた姉様が微笑む。季節の花々に囲まれた姉様は、世界にひとつだけの華。
「雪華の好きな紅茶を取り寄せてたのが今日届いたから、一緒に飲みましょう。それから紅茶によく合うお菓子も焼いたの」
「はい」
私は今日も姉様の言葉を胸に生きている。
お題《君の奏でる音楽》
雨の中手を天に向け、歌う少女。
彼女は女神か天使か。
月並みな表現しかできないが、頭の中に壮大な風景が想い浮かぶ。手を伸ばせば、風に游ぐ花にさえ触れられそうだ。
雨さえも祝福しているかのようで。
「……これは夢なのかな。俺は、もう何かから逃げなくてもいいのか、な……」
戦場にあるのは、それぞれの儚く強き覚悟と。失い奪われ散りゆく風花(いのち)だけ。
せめて。
せめて夢の中だけでは…………。
青年の瞳から零れ落ちる雫が、血溜まりに消えていった。
そして、少女の歌は止んだ。