お題《信号》
目の前を通り過ぎていく
目の前のこと必死すぎて
目の前のこと見えてなかった
ルールはまもるから
ルールになる
目の前を通り過ぎていく
目の前のこと必死すぎて
目の前のこと見えてなかった
縛られないからこそ
ルールになる
立ち尽くしているだけだった
人生も
今なら一歩、歩みだせる
今なら勇気を
今ならできるから
お題《言い出せなかった》
「君に会えばきっと俺は……」
君と出会わなければ
君が話しかけてこなければ
君が「もっと笑えばいいのに。私、そっちの方が大好きだよ」 ――なんていうから
神殿の渡り廊下を風が吹き抜ける
心がきしむ 世界が重い
君を追いかけたかった
君を信じればよかった
君を 君を 君を
君と生きていきたかった
心の叫びは音にならず
心の叫びは届かない
崩れ落ちる ひざから
はりついた影は
ここに縫い止める
「俺がいなければ、君は苦しまない。俺が、俺さえいなければ」
――君は。籠の鳥にならなくていい
それでも言葉にできないのは
君が
君だから
お題《秘密の恋》
お題《ページをめくる》
亡国
風花が舞う
少年は
約束の場所へむかう
蔦に覆われた図書館
時間は氷結し
さしこむ淡い光
埃かぶった文机
一冊の書物と手紙
炎であぶった手紙の束
ページをめくる
書物に綴じ込めた真実
これは
遺すべきではないのだろう
それでもこれは
遺すべきなのだろう
少年は地面をみつめる
「これで、よかったのか……」
想いは綴じ込めて
書物に綴じ込めて
炎であぶった手紙の束
灰になり散る
亡国
風花が散る
少年は動かない
少年はもう、語らない
お題《夏の忘れ物をさがしに》
ラムネ瓶のビー玉さがしてた
ラムネ瓶には夏がいる
りーん りーん
風鈴の澄み渡る音
夏の終わりに
夏の音を聴く
読み終わった課題図書
積み上がった借りた本
テーブルのスイカは
まだ 食べられない
ラムネ瓶のビー玉さがしていた
ラムネ瓶には夏がいる
扇風機の羽音
むしむし暑い夏の終夜は
都市伝説がお守り
兄が語り
私が語る
特別じゃない
特別がある
ラムネ瓶のビー玉さがしていた
ラムネ瓶には夏がいる
海のみえる図書館
果ての果てまで綴く
物語の書架
夏の香りが宿る
夏の間だけ
その扉をひらけば
夢がひらく
ラムネ瓶のビー玉をさがしていた
ラムネ瓶の夏は、ここにある