お題《波音に耳を澄ませて》
寄せてはかえる
寄せてはかえる
追いかけては遠ざかり
繰り返し 繰り返し 鼓膜に刻む
人魚の泡を
人魚の泡を
いつか聴いたあの歌は
人魚の残した形見だろうか
ゆらゆら ゆらゆら 揺蕩い
鼓膜のに響く水の音
魅了という名の呪いの果て
僕らは月の輝く夜の海にかえる
“水底で骨になり。水底で、青い夢をみる”
足を海水に浸せば
僕らは魚になる
僕らは泡になる
ゆらゆら ゆらゆら 彷徨い
僕らは月の輝く夜の海にかえる
僕らは水底から生まれ
僕らは水底に帰る
――眠ろう眠ろう現の想い出とともに
――眠ろう眠ろういつか、ふたたび目覚め、陽を浴びる日まで
《途中書き》
お題《空はこんなにも》
透く澄んだその瞳
忘れることはできなくて
今も想い出す
夜明けに淹れたハーブティー
吟遊詩人が語る亡国の空
――これは神代に滅んだ古の国の物語
歴史にものこらない小国の歩んだ、悲劇の物語
空は何も語らない
空は遠い果てに死んでしまった
空は何も語らない
《途中書き》
お題《雨音に包まれて》
ここは願いの町
ここはまほろの町
ここは“雨に嫌われた町”
語られた運命の町
語られた伝承の町
語られた“雨に呪われた町”
祈り ゆらり ふらり
紡がれる先にあるのは
終焉か 始まりか 再生か
夢にゆらりゆれり落ちて
また雨音が纏わりついて
夢の間に間に儚く溶けて
ここは願いの町
ここはまほろの町
ここは“水鏡の町”
雨音に誘われて
雨音に誘われて
夢幻を彷徨う
終わりのない旅路
《途中書き》
お題《どうしてこの世界は》
季節はずれの花が舞う
透きとおる空は
果ての果てまでも
花のように微笑む君
想い出しては
青に泣く
「ずっとそばにいるよ。あなたは泣き虫だから」
錆びついてしまった機械と同じ
あの日 あの時に 心止まって
もう、奏でない
君と、過ごした美しい日々
季節はずれの花が舞う
枯れ果てた空は
いつ明けるのか
虹のように輝く君
想い出しては
追憶に逃げる
「好きなものがちがっても分け合えばいいじゃない。幸せって分け合うものでしょう? あなたの幸せをわたしも感じられるって……幸せだよ。だってわたしが大好きな人だもん」
君は、いつも笑って、泣かない
――僕が泣くから
君をまもりたかった
この手を、はなしたくなかった
この手を、はなした
「幸せ、だよ。僕は」
吐き出した想いは
レモンのように、澄み渡る
レモンのように、沁み渡る
「だって君が、笑うから」
季節はずれの花が舞う
僕の真上で
僕のそばで
お題《夢見る少女のように》
美しい物語を夢みてる
ずっと待ち続けてる
救いの手を
運命の人を
でもこれは永遠に解けることのない夢
夜 悪魔は囁いた 呪いの言葉を
「お前は愛する者を死へと誘う花だ。お前に死の選択はない。――あるのは“死”にゆく者の、呪いを聴くだけだ」
美しい物語を夢みてる
ずっと憧れ続けた
たったひとりを
不変の愛を
夜 愛する者は囁いた 毒の想いを
「花に心はない。この悪魔の花め、お前さえ現れなければ」
《途中書き》