椿灯夏

Open App
8/12/2025, 12:30:49 PM

お題《真夏の記憶》


杜の奥 鳥居の向こう
濡羽色の闇の向こう側に
夜明けを夢見てた
逃げ水のように
追えば追うほど遠ざかる
追えば追うほど霞がかる


鳥居の向こうでしかあなたに会えない
会いたい時にあなたは会えない
それでも胸を焦がす涼やかな熱
待ちぼうけでもいい
それでもあなたがいい



「おれは鏡の向こう側でしか存在できない。おれは、ヒトを捨てたから。だからカミサマの怒りを買った、でも後悔はないよ」


「……想いを口にすることだけはできないんだ。ごめんね」



あなたはヒトじゃない
それでもいい
淡い希望でもいい
不条理なこの現実で
あなただけは信じられた



真夏に出会った


幻想と現実の狭間の境で





8/7/2025, 11:00:48 AM

お題《心の羅針盤》


8/5/2025, 1:48:43 PM

お題《泡になりたい》


朽ちてゆくだけのうつわだった
イチリンソウの咲く頃に
あなたの夢をみる
いつか、叶うと、信じてた

「君を世界でいちばん幸せにするよ」


朽ちてゆくだけのうつわだった
イチリンソウの咲く頃に
あなたの夢をみる
いつか、叶うと、信じてた


「ここを君とふたりで幸福の咲く国にしよう、誰も悲しまない、争いのない国に」


朽ちてゆくだけのうつわだった
イチリンソウの咲く頃に
あなたの夢をみる
いつか、叶うと、信じてた


花は枯れて大地に散るだけ
誰も知らない歌は
誰にも歌われることはない
誰も知らない物語は
誰にも語られることはない


朽ちてゆくだけの、うつわだった
イチリンソウの枯れる頃に
あなたの幻影を手をひかれる


待ち望んだのは枯れることのない、永遠






7/5/2025, 2:58:10 PM

お題《波音に耳を澄ませて》

寄せてはかえる
寄せてはかえる
追いかけては遠ざかり
繰り返し 繰り返し 鼓膜に刻む
人魚の泡を
人魚の泡を

いつか聴いたあの歌は
人魚の残した形見だろうか
ゆらゆら ゆらゆら 揺蕩い
鼓膜のに響く水の音
魅了という名の呪いの果て
僕らは月の輝く夜の海にかえる


“水底で骨になり。水底で、青い夢をみる”


足を海水に浸せば
僕らは魚になる
僕らは泡になる
ゆらゆら ゆらゆら 彷徨い
僕らは月の輝く夜の海にかえる

僕らは水底から生まれ
僕らは水底に帰る



――眠ろう眠ろう現の想い出とともに

――眠ろう眠ろういつか、ふたたび目覚め、陽を浴びる日まで




《途中書き》

6/24/2025, 3:56:11 PM

お題《空はこんなにも》
 
透く澄んだその瞳
忘れることはできなくて
今も想い出す
夜明けに淹れたハーブティー
吟遊詩人が語る亡国の空

――これは神代に滅んだ古の国の物語
歴史にものこらない小国の歩んだ、悲劇の物語
空は何も語らない
空は遠い果てに死んでしまった
空は何も語らない

《途中書き》

Next