お題《星》
天幕の向こうに星火が灯る
旅人の行く末を示す羅針盤
いつか邂逅を果たすその時まで
それを道標に狭間を渡る
散りゆく花に誘われて
新たな物語を紡ぎだす
星空の向こう竜の詩を聴いた
お伽話のように懐かしく
伝承のように神々しい
いつかの記憶がよみがえる
異端扱いされた少女と詩季綴りの少年
ふたりは出会うはずのない
世界から泡沫となった、ふたり
《途中書き》
お題《願いがひとつ叶うならば》
「沈黙は願いを叶える美しい象徴。お前はどんな夢を望む?」
真実の魔法使いと語るにはあまりにも綺麗な嘘をつく男
その男の名は“アメシウス”
“沈黙は大罪”
“沈黙は願いを汚す行い”
神を崇めるその街は魔法使いを嫌う
街一番の教会は魔法使いを裁くための籠鳥
そこには地位の高い聖職者と魔法使いを狩る吸血鬼が
永遠とも想える悪夢を再演するのだ
誰も彼もが騙し合う
己の願いのために
嘘と嘘を重ねて“真実”にする
《途中書き》
お題《秘密の場所》
淡い春の泡沫に約束を埋めた
果たされることのない約束を
散りゆく花弁の海で蒼穹を呪う
あまりにも美しく空が笑うから
憎らしくなったんだ
君と交わした約束はこの世界に
もう残っていないようで
《途中書き》
お題《ラララ》
この世界は奇劇で出来ている
たくさんの人が生きる喜劇
それは時にどうしようもなく哀れで
どうしようもなく美しい
《途中書き》
お題《風が運ぶもの》
「愛は不確かで幻想だ。君はそれでも愛は崇高だと歌うの。――ねえヒメサマ? 愛はもっと毒を孕んでいて、狂気なんだけど、それでも君は素晴らしいと俺に嘘を説くわけ?」
カラスのように夜を纏った青年は柔らかい笑顔を浮かべている
月でさえ彼を照らすのは難しく
すべての光から隔離されているようだと少女は思った
はじめて出会ったのは町の果てにある古びた教会
カラスを肩にのせた女神のステンドグラスが
印象的だったのを今でもよく覚えている
それをじっと見つめる青年は身動きもせず
何の感情も無い表情で
ただ――それを眺めているだけだった
身寄りのない少女はその教会で住まわせてもらっていた
しかし青年を見たことはなかった
町でもそんな青年はいない
見目が美しく整っていたが
吐く言葉はすべて毒でしかなく優しさはないに等しい
《途中書き》