椿灯夏

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3/9/2025, 3:07:30 AM

お題《秘密の場所》


淡い春の泡沫に約束を埋めた

果たされることのない約束を


散りゆく花弁の海で蒼穹を呪う

あまりにも美しく空が笑うから

憎らしくなったんだ

君と交わした約束はこの世界に

もう残っていないようで

《途中書き》





3/7/2025, 3:57:19 PM

お題《ラララ》

この世界は奇劇で出来ている

たくさんの人が生きる喜劇

それは時にどうしようもなく哀れで

どうしようもなく美しい

《途中書き》

3/6/2025, 1:09:14 PM

お題《風が運ぶもの》

「愛は不確かで幻想だ。君はそれでも愛は崇高だと歌うの。――ねえヒメサマ? 愛はもっと毒を孕んでいて、狂気なんだけど、それでも君は素晴らしいと俺に嘘を説くわけ?」


カラスのように夜を纏った青年は柔らかい笑顔を浮かべている


月でさえ彼を照らすのは難しく

すべての光から隔離されているようだと少女は思った


はじめて出会ったのは町の果てにある古びた教会

カラスを肩にのせた女神のステンドグラスが

印象的だったのを今でもよく覚えている

それをじっと見つめる青年は身動きもせず

何の感情も無い表情で

ただ――それを眺めているだけだった


身寄りのない少女はその教会で住まわせてもらっていた

しかし青年を見たことはなかった


町でもそんな青年はいない


見目が美しく整っていたが

吐く言葉はすべて毒でしかなく優しさはないに等しい


《途中書き》

3/5/2025, 7:29:39 AM

お題《約束》

忘れじの森の氷結の湖

冬が来ると閉ざされる森

何処もかしこも月灯りがさした銀花を

美しく着飾ってお洒落して

水面に神々しく咲く氷花

薄氷の花に月灯りがゆれる


誰の面影を夢見て

誰の訪れを待つ


泡沫の恋が永遠に実ることはなく

それは夢幻でしかない


氷翠の青年はそれでも永遠にここで待つ

あの日彼女が残していった春の花弁をお守りに


春を忘れた青年は

春を手に入れた


常春の彼女は今も行方知れず


冬の蝶が舞うこの森で青年は

空白な虚ろを抱いてひたすら待つ


きっといつか春はここへ舞い降りると信じて



氷翠の青年は永遠を夢見て


冬の湖に散っていく

3/4/2025, 9:35:30 AM

お題《ひらり》


夢路で花木から淡いの花弁が零れ落ちる

深々と地面に舞い落ち一面ミルク色

ふわりと仄かに甘い香りが心をくすぐる

ミルクの海に沈んでいく

器の痛みも記憶の痛みもすべて

真っ白な世界へ朧気に

風花となって運ばれ

蝶になって空を羽ばたく


あなたを探して


「俺の持つ月灯りをお前にやろう。お前がこの先、一生迷わないように」


月光花の海で月灯りが瞳に零れ落ちる

あなたの瞳から届けられた奇跡



でもそれは



――永遠にあなたを失うこと



《途中書き》

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