椿灯夏

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お題《真夏の記憶》


杜の奥 鳥居の向こう
濡羽色の闇の向こう側に
夜明けを夢見てた
逃げ水のように
追えば追うほど遠ざかる
追えば追うほど霞がかる


鳥居の向こうでしかあなたに会えない
会いたい時にあなたは会えない
それでも胸を焦がす涼やかな熱
待ちぼうけでもいい
それでもあなたがいい



「おれは鏡の向こう側でしか存在できない。おれは、ヒトを捨てたから。だからカミサマの怒りを買った、でも後悔はないよ」


「……想いを口にすることだけはできないんだ。ごめんね」



あなたはヒトじゃない
それでもいい
淡い希望でもいい
不条理なこの現実で
あなただけは信じられた



真夏に出会った


幻想と現実の狭間の境で





8/12/2025, 12:30:49 PM