月下の胡蝶

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お題《夜の海》


夜が還るまで。


幻想と現実の狭間を彷徨う。




夜は言葉を走らせる。


淡い水彩の海のノートに、想うままに言葉を描き殴る。


最近入ったアンティーク雑貨専門のお店で、すてきな万年筆を見つけた。希少な木からつくった一点ものと言われたら買うしかない。それから深蒼という、珍しい深さの蒼とかいうインクを買った。


子供の頃なりたかった夢のカケラを夜になると、想い出す。


絵本作家の夢は、夜の海から始まって。


悲しい時姉さんが夜の海へ、ドライブに誘ってくれたのだ。


「夜の海には、月光くじらが希(まれ)にやってくるの。そのくじらはね、月灯りが食事なのよ。気分がいい日は星屑を吹きだすの」




姉さんは画家で、夢のある絵を描くのだ。

姉さんの部屋には木漏れ陽がさし、木漏れ陽の海にキャンパスがあるようだった。カラフルなお菓子の入った瓶に、たくさんの画材と本。



ずっと、魔法使いだと信じてたんだよね。






今でも夜の海を想い出すと、描くのは姉さんのいる美しい世界。




8/15/2022, 11:12:29 AM