月下の胡蝶

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お題《君の奏でる音楽》



雨の中手を天に向け、歌う少女。


彼女は女神か天使か。




月並みな表現しかできないが、頭の中に壮大な風景が想い浮かぶ。手を伸ばせば、風に游ぐ花にさえ触れられそうだ。


雨さえも祝福しているかのようで。



「……これは夢なのかな。俺は、もう何かから逃げなくてもいいのか、な……」



戦場にあるのは、それぞれの儚く強き覚悟と。失い奪われ散りゆく風花(いのち)だけ。



せめて。


せめて夢の中だけでは…………。





青年の瞳から零れ落ちる雫が、血溜まりに消えていった。



そして、少女の歌は止んだ。



8/12/2022, 10:58:56 AM