お題《いつまでも捨てられないもの》
すっかり色褪せてしまった文字。
何度も何度も見返した。
たとえ遠く離れていても僕らは、ずっとずっと一緒だ。
季節の花々を栞にして同封したり。
そこそこの名産品を。薔薇と蜂蜜のお酒、シロップ漬けにした果実、香草焼き、月魚の燻製――月の魔力が一番強い夜にだけ、それらを食しながら手紙を読む。
何千何万と交わした言の葉。
今日も弟子が手紙と紙包みを持って、愚痴るのを笑顔で聞く。
「紙なんか貯めて、一体どうするんです? 読んだら不要でしょうに」
「ただの紙切れが、僕にとっては一番の宝物なんだよ」
8/17/2022, 12:22:02 PM