『愛があれば何でもできる?』
そんなのまやかしでしょ。愛だけじゃなんにも出来ない。愛はとびきり可愛くて綺麗で繊細なトッピングでデコレーションなの。
だから、土台が無くちゃ、飾り付ける元が無くちゃ。どんな愛があったって輝けない。
もし、崩れない土台があるなら愛は周りも巻き込んで呑み込んで、美しい世界を描けると思うの。それはそれは広大で永遠と見紛うほどの。
私は、嫋やかでいて揺るぎない土台を築いて貴方の世界ごと、ふふ、なーんて夢物語かな。
くるくると表情も声色も身体も回しながら、煌めいては影が射す君の移ろいごと全てが、きっと僕の世界なのだろう。境界は虚ろになって君の世界の中で溶けてしまったから。
色は波長の違いだとかそんな原理どうでも良い。
ただ綺麗に、貴方を中心にして色づいた世界を享受して。グラデーションも細かな彩度と明度の違いも、広がりも隔たりも全部、目からとめどなく流れ込んで脳に染み込んで。洪水を起こすほどの色彩の暴力を一身に受けている。
溺れそうなほど苦しいのに同時に満たされてしまっているからこそ、ずっと逃れられずにいるのかもね。
『カラフル』
『誰よりも』綺麗で清らかで美しく在りたい。
無謀で愚かで、可哀想なくらい殊勝な志。
そんな世界で彼女は、理不尽な嫌がらせを受けても、大切なモノを踏み躙られても。ただ只管に正しく在り続けた。自分の思い描いた美徳を追い求めて。
誰かに認められて幸せになるのと彼女が跡形も無いほど潰れてしまうの、どっちが先だと思う?
答えはね、私が今この話をしているっていう事実そのものだよ。だから大丈夫。安心してね。
希望なんて光なんて初めから無い方が。暗闇に目が慣れてしまった方が。ずっと楽だろうに。
頭で分かっていたって出来ないの。全てを捨てようとしても纏わりついて離れない。壊そうとしても泣き出してしまう。私が弱いから。
だから、そんな愚かな私は差し込んだ微かな光にも縋ってしまう。全てを変えてくれるんじゃないかって、私を助けてくれるんじゃないかって。根拠の無い過大な望みを抱いて、明日への光にしてしまう。
結果傷ついてばかりだけど、それでも、縋っている間はまだ生きてられるんだって信じてる。
『明日への光』
ある日私は落っこちた。多分迷路のど真ん中に。作者は性格の悪いこの私、だから出口があるかすら怪しい。
「理不尽だなぁ」
何がって、誰のせいかって、勿論自分なんだけど。とことん私に厳しくて当たり強くて手酷いのはなんでよ。いい加減許してくれれば良いのに。
はぁ、と大きくため息をついて。ひとまず周りを見回す。辺りを取り囲む壁の高さは大人の男性三人分くらい。辛うじてある道の先にも壁ばかりで。しかも灰色の壁に白い床、空は絵の具を混ぜたような黒色。そんな空間に浮いた妙な明るさにも気が狂いそうだ。
「ま、取り敢えず進んでみるしか無いよね」
壁の隙間を縫っていくと、床の見えない棘が裸足に刺さって痛い。かと思えば雲みたいなふんわりと沈む床もあって体力が削られていく。おまけに進む事に意味があるかもわからないのだから嫌になる。
そんな事を繰り返していると視界がぼやけて滲んで、赤が視界に広がっていく。綺麗な赤じゃなくて黒く濁った赤。痛みを感じてた足元からと視界の端から。あぁどうしよう。どんどん痛くなるし、広がっていくのを止めようとしたって徒労に終わる。寧ろ拍車をかけてしまう。
目に入る全てが赤に染め上げられて、
「助けて」
なんて言葉を空に放って目を閉じた。
ピロンッ
…?通知の音、
ハッと起きて携帯を手に取る。
「どうしたの?」
『心の迷路』