瞼の裏に焼き付いた、近くて遠い綺麗な記憶達。
優しく笑う貴方の顔も、一緒に嘆いた天気予報も、手を引かれて走った道も。全てが鮮明で、色鮮やかで。手繰り寄せては思い出せるのに。
はぁ、と息をつくとより一層くぐもった音が跳ね返ってくる。
目を開けると、冷たさに同化しきってしまいそうなほどの無機質な空間しか広がっていない。すぐ側には輝く思い出が転がっている、はずなのに。今、私が確かに存在している場所はただのモノクロの世界。
もう一生。それこそ永遠に、届くことは無いのに。手を伸ばし続けて、すり減っては誤魔化して、縋って縋りついて。無意味な延命をし続けている。
自覚していたって認められないのだから。
『届かないのに』
6/18/2025, 5:13:53 AM