ノーネーム

Open App
4/18/2024, 2:43:26 PM


この季節を愛でるには
僕はこの色を知らな過ぎるみたい
綺麗だ、と思う心はあっても
触れるにはもう遅すぎたかもしれない

淡い色が柔らかく
差す光は影さえも綺麗に映して
どこにも居場所は無いようで
ほんの少し寂しくもあった

歩く人々に風は優しく纏う
散る花、咲く花、
終わりとはじまりが混ざる季節に

僕は目を閉じるんだ
一瞬で無色の世界が出来上がって
ひとつ、深呼吸をした

透明にもなれない、鮮やかにもなれない
無色を纏う僕に
この季節は眩しすぎたから

4/15/2024, 2:53:48 PM


昔から口下手な僕には
本音を言える相手も居なかった

本当はね、愛されたい、
認められたい、嫌われたくない、
誰かの肩に寄りかかってみたい、

誰も助けてはくれない
そんな風に仕向けたのは自分自身のくせに

愛想笑いは得意だった
誰にでも良い面するからさ
よく言われてたよ

何考えてるかわかんない奴だ、って

届かぬ想いと諦めて
僕にとっては届けたい相手が居るだけで
どんなに羨ましい事か

4/12/2024, 3:49:04 PM


空が遠かろうが、近かろうが
ただたまに見上げるだけだった

地に足をつけて歩く、
そっちの方が大事だと教わったから

足元を見れば今にも咲きそうな花
蟻の群れ、青々と伸びはじめた雑草
春の匂いがする

そして、汚れきった靴
足底だって擦り切れてしまっていて

靴を見れば、その人の人間性がわかる
どっかで聞いた言葉をふと思い出した

それなら僕はそういう事なんだろうか
そう思いながらゴミ箱に捨てた
その靴が僕自身に思えた

どうせならその靴を
遠い空へと投げ飛ばして
一緒に僕も飛んでいけたら
靴を履く理由もなくなるのに

3/15/2024, 3:07:58 PM


あふれて、こぼれて、流れた星が
いつかの僕の夢みたいだった

受け止める器もなく
ただ落ちていくのを
眺める事しか出来なかった

ありふれた夢だったんだよ
ヒーローになりたいとか
お金持ちになりたいだとか
大層なものから
くだらない事まで

それがいくつもいくつもあったんだ

今のこの僕に後悔は無いけれど
やっぱり少しだけ
寂しい、と思う
星が溢れる夜は息が詰まりそうで

この気持ちは受け止めなければと思った
忘れたくないんだ

あの時、並べて眺めたいくつもの夢は
僕にしか作れない光だったから

2/15/2024, 1:22:31 PM



子供の頃書いた
あの時の手紙の内容は一つも覚えてない

10年後の自分にお手紙を書きましょう、
やけに張り切る甲高い先生の声だけ
ちょっとだけ覚えてる

丁度二十歳になる頃家に届きます、と
でも僕はその前にそこから逃げ出した

もう一生僕には届かない手紙だ

まだ社会の事を知らないくせに
早く大人になりたかったあの頃

弱虫で、良い子ぶって、天邪鬼
一人で生きてる気になって
あんな大人にはならないと
心の中では見下して

でもきっと
僕はちゃんと僕の幸せを願ってた
そんな手紙だった気がして

10年後の僕から届いた手紙に
幸せを願っただろうその拙い字に
応える事はもう出来ないけど

僕が死ぬ時、答え合わせでもしよう
僕という一人の人間が
幸せだったか、不幸だったかを

Next