〝ないもの〟が欲しくなる。それを手に入れようとする。頑張って、努力して、そうしなければいけないかのように。そんな呪縛にとりつかれていた。
ないものは、努力して身につけるものだ。そんな感じで、子供の頃からやってきたのかもしれない。頑張れば、いつかは身につくかもしれない。そんな幻想で、ずっとやってきたけれど、何かが違う。
ないものは、ない。ないものばかり見て、〝ある〟ものには、目を向けようとしない。それは自分にとって当たり前になっているものだから。
でも、その、あるものを伸ばしていくほうが、楽しい。もしかしたら目に見えるカタチで成長が見えるかもしれない。そんなことに、なかなか気づけなかった。
「ないものねだり」
口を開けば、嫌なこと言ってくる。小学生かというような態度なのに。勝手に視界にズカズカと入ってきて。そんなのは、苦手だ。
時々私のこと分かっているようなことを言ってくる。いざという時には、気の利いた態度をしたりして。油断ならない。
でもある時、いつもとは違う表情でいるのを見かけた。はっとした。瞳が奥深く見えた。
気がついたら、こちらから目で追うようになっていた。どこにいて、何をしているのかなんて気にしている。全然、好きじゃないのに。
「好きじゃないのに」
今日の機嫌はどうだろうか。日によって違うのだから。いや、その日の中で、時間によっても違う。
今日は、ご機嫌が良さそうだと思って、ほっとするなんて、どうかしている。頭では分かっている。そんな、どうかしている人のことを気にするのは、やめたほうがいい。
でも、時々雨の後の晴れ間のような、すがすがしい笑顔を見せてくる。人並みに優しいことを言ったりして。その感じに、またやられてしまう。
そんな人は、やめておいたほうがいいのに。〝ところにより雨〟みたいな曖昧さが、どうにも気になってしまう。
「ところにより雨」
好きな人とか、そんな人が特別な存在なのだと思っていた。生きていると、たくさんの人と出会う。ずっと付き合っていく人もいれば、その時だけで、もう会えなくなる人もいる。
世界中には、たくさんの人がいるというのに、そんな中で出会える人というのは、みんな特別な人のような気がする。
会った人すべてと、うまくいくことはないけれど、それもきっと何かの意味があるのではないかと思う。
「特別な存在」
誰かに好かれようと気をつかって、楽しくもないのに笑う。その人が、少しでも顔を曇らせていたら、言葉にトゲがあると思ったら、私は何か変なことを言ったかもと思う。
そうやって、すべて自分のせいかもと思うなんて。その人の顔色一つで今日の気分が変わるなんて。バカみたいだ。
「バカみたい」