もしも未来が見えるなら、見た時から、未来は変わってしまう気がする。未来が今の積み重ねだとしたら、目の前の今をなんとかしていくしかないのだろう。
もし、未来の世界に、自分の力ではどうにもできないことがあったとしたら、どうするだろうか。色々と悩んでしまうだろう。やっぱり未来は分からないほうが、いいのかもしれない。
「もしも未来が見えるなら」
目の前にいる彼女は、いつものように笑って話している。声のトーンは高く、よどみなく言葉が出てくる。その話を、半ば圧倒されるかのように聞く。
たまに質問されることもある。それに少し答えると、またその倍以上に長いおしゃべりが続く。まるで、セリフのように。
短いスカートをはいた足元を所在なさげにゆらしながら、時々長い髪の毛を何度も手でとかす。その抜けた髪を時々、ぽいと下に落とす。そんな彼女をぼんやりと見つめ続ける。
彼女といると、世界はとても色鮮やかに見える。でも、本当は何となく気付いている。こちらに向けられる笑顔は、何かほかの目的のためかもしれない。でも、色のない世界には、もう戻りたくないのだ。
「無色の世界」
桜が満開になって何日か経ったころ、雨が降った。風にも吹かれて、花びらが激しく舞回っている。咲き始めの時は、多少雨が降っても耐えていたけれど、今回はさすがに散ってしまいそうだ。
木の下や、塀の壁にまで、ピンクの花びらがたくさん散らばっている。傘にかかる雨音を聞きながら、しばらく木を見ていた。枝が大きく揺れて、雨風は花を根こそぎ落とすかのように、降り掛かる。
次の日は、快晴だった。雲一つない青空の中、桜の木を見ると、見事に新緑に覆われていた。落ちた花びらは、茶色になって地面を覆っている。緑の葉が主役になって、一気に季節がすすんだ。
「桜散る」
その人は、年を重ねてもずっと夢を見続けている。やりたいことはたくさんあって、時間が足りないくらいだという。新しいことにも挑戦してみたり、好奇心が旺盛だ。
好きなことは、ずっと探求し続けている。まだ深めることはたくさんあって、終わるなんてことはない。体に不具合が出ても、それはそれで、それなりにやっているという。今までも色々と思うことはあった。でも、やっぱり好きだから、なんだそうだ。
いつまでも夢は見続けられる。きっと最後まで、夢を追い続けていくのだろう。それは、とても素敵に見える。
「夢見る心」
あの頃は、なんとなく、想いは自然と通じるものだと思っていた。そんなことはなくて、言葉や行動にしないとなかなか伝わらないことが、後になって分かった。
それを表現することが、とてつもなく照れくさくて恥ずかしくて、ごまかしていた。いつのまにか、想いはどんどん空中に膨れ上がるだけで、ちゃんと届いてなかった。
想いは、膨らんでは消えて、気づいたら、その相手もいなくなっていた。ちゃんと言葉にして、恐れずにもっと動いてみたらよかった。それも、今だから分かるけれど、当時の自分にはそれが精一杯だった。
「届かぬ想い」