それはもうひたひたと聞こえてきていた。朝晩のきんと冷えた空気。もう気軽な格好ではいられない。厚めの上着を着て首元をしっかりと包む。
あんなに美しく紅く色付いていた木は、半分以上の葉が地面に落ち、枝が見えている。一面に落ちた葉をザクザク踏み締めながら歩いた。それもしだいに粉々になり、土へと還っていく。
木が枝を見せ、骨格があらわになると、より風が冷たく感じられてくる。風をさえぎるものはない。短い秋が終わりを告げている。
秋のはじめにはまだあった、虫などの生き物の気配もあまりしなくなってきた。地面もひっそりと静まり返って、冬を迎える準備が整っている。
「冬の足音」
12/4/2025, 8:47:09 AM