家まで帰る電車とは、反対方向の電車に乗った。ひたすら終点まで行くと、海にたどり着いた。遠いと思っていた海は意外と近くにあった。
夜の海は、冷たい風が容赦なく吹き付ける。凍てつくような寒さだ。もっと美しいものを想像していたけれど、海は暗く沈んでいた。よく見ると浜辺の灯りが反射して、手前のところの波がちらちら光っていた。遠くに島の灯りが見えている。
今日は家に帰りたくなかった。そうかといって、ずっと遠くに行ってしまう勇気もない。ちょっとした現実逃避だった。時々風に乗って、潮の香りがふわっとする。この匂いと波の音だけでも非日常だった。
空を見上げると星がきらめいている。こんな寒い日は、空気が澄んで一層きれいだ。こんなにはっきり見えるものなのか。空と海がつながる闇を、ずっと飽きずにながめていた。
「凍てつく星空」
12/2/2025, 7:17:01 AM