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1/22/2023, 9:15:25 PM

結婚の約束までしてたのにここで終わるなんて嫌だよ

彼はいつも優しかった
彼は最後まで優しかった

私がもっと早く車に気づいていれば
私がまだ渡らなければ
私が早く渡っていれば
こんなことしなくて済んだのに

「危ない!!」
そんな言葉を聞いたのは一瞬で
私を守るように抱きしめる小さな衝撃と
大きなクラクションがなって感じる大きな衝撃
私は思わず目をつぶった。

目をつぶっている間には
コンクリートに強く当たる衝撃があって
目を開くとそこには
私の背中に手を回している彼
そして一瞬にして赤く染った彼がいた。
「な...なん...なんで、、、」

「良かった俺守れたんだね」
そう言って力無く笑う彼

分からなかったここまでして私を守る理由
私はきっと動けなかった。
彼の立場だったとしてもきっと私は守れなかった。

「俺最愛の人を亡くすのは嫌だから守れてよかった。
好きだよ。愛してる。俺かっこいいでしょ。」

そう言って私を抱きしめていた腕の力が抜けた。

「うん。わ...私も好き,愛してる。」
私は大粒の涙で彼を濡らしていた。

口が少し動いた。
「泣きすぎ」


遠くでいや近くで

「早く救急車!!」
慌ててる声

「何があったの?」
この集まりがなんなのが知りたい声

「大丈夫ですか?」
心配する声

「え?事故?」
状況を知りたい声

「ヤバ」
他人事だからと言って声を出す人

「誰か電話してる?」
連携を取ろうとしてる人

「轢かれたの?」
周りの人たちとなにがあったのかを言うひとたち

ぼんやりとだけ聞こえる救急車の音

何があったのか理解の追いつかない私の頭
ただただ涙を流し続ける私
私わかるよ。
この場面で力が抜けるのはさ,死んじゃうじゃん。
「ねぇ,なんで?なんでなの?」

「...」

「ねぇ,答えてよ。なんで助けたの?」

「...」

何を言っても答えない彼

ぼーっと気づけば私は病室にいた。

私も少しは怪我をしていたみたい。
でも骨折程度だって。

彼のことを聞いた。
病院に着いた頃には息を引き取ったって...。
私は彼の両親に電話をした。
かける前から涙は止まらなかった。

彼が亡くなったこと
きっと警察の人が伝えたと思うけど
私の声で伝えたくて

「ごめんなさい。
私のせいで彼が亡くなってしまいました。」

あなたのせいよ。とか
あなたがいなければ。とか
そんな言葉が来ると思っていたのに

「大丈夫?
私もあなたもまだ信じられないでしょ。
帰ってきなさい。待ってるから」

私は両親を高校生で亡くして
彼の両親が私をホントの家族のように接してくれて
優しくて温かくて

彼をなくしてしまった今
私を優しくする理由なんてなくて
今何をするにも涙が流れる私には
過去を変えられる力なんてなくて
タイムマシーンがあったらなんて
おかしなことを考えてしまう。

過去を変えられたら
どれだけ良かったか


今この瞬間を大事に大切にしてください。





─────『タイムマシーン』

1/22/2023, 12:08:28 AM

今日は彼とのデートなので気合を入れてメイクをする。
もちろん同棲してすっぴんを見られているから
メイクしても意味ないかもしれないけど
彼には少しでもドキドキして欲しいから
いつもより少しだけ時間がかかっていた。

彼はなんの文句も言わずに待っててくれた。
「おまたせ」
その声で彼は顔を上げる。

「めっちゃ可愛い。綺麗だね。
今日のデートは俺にエスコートさせて」

いつも彼はストレートに言ってくれるから
私もドキドキしちゃう。
考えてみればいつも彼にエスコートされてる気がすると
思いながら頷いた。
頷いたのを確認して
彼は水族館に着いた。

「ここ覚えてる?」

「うん,覚えてるよ。」

私は彼がここを覚えてくれたことに驚いた。
ここは彼が私に告白してくれた日に行った
水族館だった。

「もう5年経つんだね」

「うん,なんか言葉にすると長いように感じるけど
感覚としては短いようにも感じる」

「うん,そうだね。5年経った感じしないね。」

そう言いながら
彼と水槽の中でゆっくり泳ぐお魚を見てまわった。
小さいカラフルなお魚や
大きくて早く泳ぐお魚
ぷかぷか波に身を任せるクラゲを見て
とても癒された。

少し外が暗くなってきた頃
「あのさ,今日は店予約してあるから
そろそろ行かない?」

「えっ?予約したの?」

「うん。めっちゃ頑張った笑」

「ありがとう!」

もう予約した店に着く頃には外は暗くなっていた。

「えっ!?待ってここ!?」

「うん,ここ。」

私がこう驚くのは無理もないだって
一ヶ月前にテレビでやってた
2年先まで予約がうまってる店で紹介されていたから。

私は落ち着かないまま席に案内された。
「ねぇ,緊張しすぎ」
彼には笑われたがそれどころじゃなかった。

「ねぇ,服変じゃない?
マジでやばいんだけど。
ほんとにありがとう!」

どの料理も美味しくて幸せだった。

料理もこれで最後の頃
彼が急に落ち着きがないように見えた。
「ねぇ,大丈夫?」

「え?あぁ大丈夫」

「...あのさ5年付き合ってきて
お互いいいところも悪い所も見てきたと思うけど
俺はずっと君を好きだし愛し続けるよ。
だから結婚してください。」

「え?嬉しい。こちらこそよろしくお願いします。」

彼は潤んだ目で私を見てて
私はメイクを気にすることも忘れて泣いた。
彼といるから毎日幸せで溢れる日だったけど

今日はいつもと違う特別な夜

あなたに私の一生をあげるから
あなたも私に一生をちょうだい。

ずっとずっとあなたが好きよ





─────『特別な夜』

1/20/2023, 11:40:45 PM

これは夏の暑さで溶けそうな私を
友達が誘ってくれたあの日の出来事。

「やっぱり暑いね〜」

「暑すぎて死にそう」

「いや,だから海にまで来たんでしょ?」

「来ても尚暑いわ」

なんて言いながら

私たちを置いて友達と出かける彼を置いて

私達もプチ旅行をすることにして
景色がきれいな海に来ていた。

海の底まで見える海は私たちにとって新鮮で
みんなテンションが上がりまくっていた。
みんなで写真を撮ったり
浮き輪を使って浮かんだり
いつもとは違う
非日常を味わうことが出来て幸せだった。

私は彼からのネックレスをしたまま
海に入っていた。
海の波もネックレスも
太陽の光でキラキラと輝いていて綺麗だった。

少し強い波が来て私のネックレスは
海の底の岩と岩との間へ落ちていったのが見えた。

「ねぇ!私たち飲み物買いに行くけど行く?」

「行かない!」
飲み物よりも今はネックレスのことで
頭がいっぱいいっぱいだった。

「じゃあなんか適当に買ってくるね!」

「ありがとう!」

そう言って私はネックレスが落ちた所まで潜った。
しかし海の底は思っていたよりも
深くて息が続かなくて潜ることが難しかった。

「どうしよう...」
彼からのプレゼントを落とすなんて
きっと彼は許してくれるけど,悲しむだろうな。
そんなの申し訳なさ過ぎて私が許せない。

頭を働かせたがもう一度潜る。
ネックレスを取り戻すのにはその方法しか
思いつかなくて
また大きく息を吸って潜った。
またさっきのところから苦しくなってきたが
私は我慢してその先へ行こうとした。

すると見た事のある顔が居た。
そう私の彼だった。
なんで?そう思いながら
私は彼と1回上がることにした。
水面に上がって彼と話した。

「なんでいるの?」

「そっちこそなんで居るの?」

「プチ旅行してた。」

「俺達もだけどスゴすぎ。
じゃあなんで潜ってたの?」

「えーっと...ホントにごめんなんだけど。
あなたから貰ったネックレスをつけてたんだけど
落としちゃってだから拾おうとしてた。」

「あ〜そうなんだ。OK。
俺が取ってくるからそこにいて」

そう言って彼はまた潜って行った。
少し待っていると彼は
私のネックレスを持って上がってきた。

「はい。もう落とすなよ。」
そう言って渡してくれる彼は優しい顔をしていた。

「あとここで会ったことは
秘密ってことでじゃあ家で会おうね。」
そう言って彼は戻って行った。


タイミングよく
「飲み物買ってきたよ!」
「休憩しよ!」
大きな声でそう声をかけてくれる
友達の方に向かって走り出した。

海に誘ってくれる友達も
ピンチを助けてくれる彼もいてくれる
私は幸せ者だと思う。
私も友達も彼も大切にしていきたい
そう思った1日だった。





─────『海の底』

1/19/2023, 8:35:52 PM

「先輩まだ卒業しないでください」

「無理だよ」

何回言っただろうか?
この会話がいつの間にかテンプレになっていた。

卒業しないでくださいなんてことを言うのは後輩の彼。
彼は何故か私のことを好いてくれている物好きの子。

お昼になると必ず私の教室にお弁当を持って来る。
私は彼と食べることが普通になった。
彼に聞いた。
「なんで私に懐いてるの?」

「犬みたいに言わないでください!!慕ってるんです!
慕ってる理由は,先輩のこと好きだからです!」

「そっか」

「え?返事ないんですか?」

「まだしないよ」

「ちょっとなんでですか」
タイミング良くチャイムがなった。
「じゃあ午後も頑張ってください!!」

「うん。ありがとう。君も頑張って」

「はい!!頑張ります!!」



卒業式当日
「先輩。卒業おめでとうございます。
これからどこ行くんですか?」

瞬きをしたらこぼれそうなほど潤んだ目をした彼が
私に向かって走ってきた。

「秘密」
そう言いながら私は彼の涙をハンカチで拭った。

「何でなんですか?」
両目から大粒の涙をこぼす彼を見て

「大丈夫だから」
なんて彼の質問の答えにもならない言葉を最後に
彼の元に去った。

本当はずっと君のそばにいたくて。

本当は君のこと好きで好きで。

本当は君に毎日会いたくて。

でもそんなこと出来なくて。

気持ちがゆらがないように

彼のLINEをブロックした。




1年後
桜が少しづつさきはじめた季節に

私は校門の前で彼を待った。

「えっ,先輩?」

1年前と変わらないあの声が聞こえた。

顔を上げると以前よりも背が伸びて垢抜けた彼がいた。

「卒業おめでとう。1年って長いね。

君に会いたくて迎えに来たよ。」

そう言って手を広げると彼は私に飛びついてきた。

「先輩好きです...!」

泣いている彼が私に言った。

「うん,私も好きだよ」

「ホント?」

「うん。今日君に会いたくて来たんだよ?」

「嬉しいけどLINEブロックしなくてもいいじゃん。」

「ちょっと拗ねた?」

「うん」
なんて1年前と変わらない会話をして

お互い笑いながら
“卒業式”の看板を挟んで写真を撮ってもらった。

いつもはさ,君が私を迎えに来てくれてたから

今度は私が迎えに行こって思って

君に会いにたくても

会わないように我慢してきたんだよ。

一緒に入れるのって幸せだね





─────『君に会いたくて』

1/18/2023, 8:50:24 PM

「あの子っていっつも喋らないよね?」

「どうしてなんだろうね。」

「ひとりが好きなんじゃない?」

みんなが言う“あの子”は
私のことを言ってることくらいすぐ分かった。

私ぐらいしか一人でいる人はいないからだ。

私はひとりが好きなんじゃない。

ただ人と話したいけど話せないだけなんだ。

私はいつも日記を持ち歩いてた。

今も持ち歩いているのだけど。

私は,小学生の高学年になった頃から日記を書き始めた。

その頃から友達が離れていった。

最初の頃こそとても悲しくなった。

家で泣いたりもした。

今はそれももう慣れた。

そう思っているのに...。

私は一緒に話せる友達を求めてしまう。

ドンッ体に少しの衝撃があった。

振り返ると一番カッコイイと言われていた人がいた。

「ごめん。大丈夫だった?」

「...こちらこそ...ごめんなさい。」

心配の言葉をかけてくれた彼には申し訳ないが
私はその場から急いで消えたくて急いで家に帰った。

夜寝る前に書く日記が
習慣になったのはいつ頃なのか

「あれ?日記がない?!やばいやばいどうしよう。」

カバンを見ると日記がない。
あぁ急いで帰ってきたから忘れたんだ最悪。
誰も見られないといいなぁ
そう思いながらベッドで目を閉じた。

私はいつもより早い電車に乗って

人一倍早く教室に向かった。...はずなのに

私の席には彼がいた。

「あっ...あの。」

「あぁごめん。おはよ。」

「おはよう...ございます。」

「これって君のだよね?」

そこには昨日探してもなかった日記だった。
「私の...です」

「そっかごめんね。
俺がぶつかったから忘れてったんだよね?
俺が昨日預かってたんだ」

私は日記の中身を見たのかが気になったが

聞く勇気がなかった。

「これもごめんなんだけど少し中身みちゃった。

これからは俺と話そうよ。

ダメかな?朝のこの時間だけでもいいから。」

日記が見られたことが恥ずかしくすぎて
顔を真っ赤にして大きく頷いた。

「それともう日記は書かないでよ。

今日あったこと思ったこととかは俺が聞くからさ。

休み時間も俺と話そう。」

その彼の言葉から

私は何年も続いた日記を書く習慣に

終止符を打つ事にした。

閉ざされた日記それは私の生きた証

でももうこの日記を開くことは無いかな

だって彼がいるから





─────『閉ざされた日記』

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