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結婚の約束までしてたのにここで終わるなんて嫌だよ

彼はいつも優しかった
彼は最後まで優しかった

私がもっと早く車に気づいていれば
私がまだ渡らなければ
私が早く渡っていれば
こんなことしなくて済んだのに

「危ない!!」
そんな言葉を聞いたのは一瞬で
私を守るように抱きしめる小さな衝撃と
大きなクラクションがなって感じる大きな衝撃
私は思わず目をつぶった。

目をつぶっている間には
コンクリートに強く当たる衝撃があって
目を開くとそこには
私の背中に手を回している彼
そして一瞬にして赤く染った彼がいた。
「な...なん...なんで、、、」

「良かった俺守れたんだね」
そう言って力無く笑う彼

分からなかったここまでして私を守る理由
私はきっと動けなかった。
彼の立場だったとしてもきっと私は守れなかった。

「俺最愛の人を亡くすのは嫌だから守れてよかった。
好きだよ。愛してる。俺かっこいいでしょ。」

そう言って私を抱きしめていた腕の力が抜けた。

「うん。わ...私も好き,愛してる。」
私は大粒の涙で彼を濡らしていた。

口が少し動いた。
「泣きすぎ」


遠くでいや近くで

「早く救急車!!」
慌ててる声

「何があったの?」
この集まりがなんなのが知りたい声

「大丈夫ですか?」
心配する声

「え?事故?」
状況を知りたい声

「ヤバ」
他人事だからと言って声を出す人

「誰か電話してる?」
連携を取ろうとしてる人

「轢かれたの?」
周りの人たちとなにがあったのかを言うひとたち

ぼんやりとだけ聞こえる救急車の音

何があったのか理解の追いつかない私の頭
ただただ涙を流し続ける私
私わかるよ。
この場面で力が抜けるのはさ,死んじゃうじゃん。
「ねぇ,なんで?なんでなの?」

「...」

「ねぇ,答えてよ。なんで助けたの?」

「...」

何を言っても答えない彼

ぼーっと気づけば私は病室にいた。

私も少しは怪我をしていたみたい。
でも骨折程度だって。

彼のことを聞いた。
病院に着いた頃には息を引き取ったって...。
私は彼の両親に電話をした。
かける前から涙は止まらなかった。

彼が亡くなったこと
きっと警察の人が伝えたと思うけど
私の声で伝えたくて

「ごめんなさい。
私のせいで彼が亡くなってしまいました。」

あなたのせいよ。とか
あなたがいなければ。とか
そんな言葉が来ると思っていたのに

「大丈夫?
私もあなたもまだ信じられないでしょ。
帰ってきなさい。待ってるから」

私は両親を高校生で亡くして
彼の両親が私をホントの家族のように接してくれて
優しくて温かくて

彼をなくしてしまった今
私を優しくする理由なんてなくて
今何をするにも涙が流れる私には
過去を変えられる力なんてなくて
タイムマシーンがあったらなんて
おかしなことを考えてしまう。

過去を変えられたら
どれだけ良かったか


今この瞬間を大事に大切にしてください。





─────『タイムマシーン』

1/22/2023, 9:15:25 PM