今日あったことを振り返りながら帰るのが私の日課。
今日は災難だったとため息を漏らした。
今日は珍しく朝は寝坊して
最低限のメイクヘアセットをして家を飛び出した。
会社へ遅刻してしまう電話を掛けよう。
そう思ってカバンの中を探す。
「最悪」
誰にも聞こえないように呟いて家に引き返した。
朝も木枯らしが吹きつけてきた。
コートの襟を立てて家路を急いだ。
仕事ではミスをしてしまって怒られた。
同僚には笑われたけど
そのあとは特にないかな。
それとも多くて覚えてないのかも?
今日も私は冷たく風吹く道を早足で帰る。
家帰ったら沢山癒しをもらおうかな
─────『木枯らし』
スポットライトにあたる彼女を見ると
心臓が忙しい。
目が合うと必ずニコって微笑んで
みんなに心拍音が聞こえるんじゃないかってくらい
忙しく流れる僕の血液。
彼女は美しい。
顔もスタイルも性格も全部。
でも彼女は放課後の帰り道僕に言ったんだ。
「可愛いとか美人とか
みんなは言うけど上辺だけ見てるから良く見えるだけ」
僕は思わず口を結んだ。
確かに裏側なんて見てなくて
上辺だけを見ていたから。
「...じゃあホントの君を僕に見せてよ」
「ホントの私はあなたの理想を崩すの」
少し俯いて小さく震えた声で話す彼女の顔は
落ちかけている太陽が隠していた。
僕はここでも“美しい”そう思ってしまう。
「いいよ。僕の理想を壊して。
ホントの君を見せてくれるなら。
上辺しか知らない僕は君の話を聞いても
きっとどんな君も美しいって思うから」
僕はそう言って彼女を見た。
彼女は僕に顔を見せないように
マフラーに顔を埋めていた。
顔を見せないのは照れた顔を隠すためでしょ?
そんな彼女が可愛らしい。
きっと何をしても美しいあなたを
僕はずっと見ていたい
─────『美しい』
この世界は何をしてもしていなくても
必ず評価されてしまう
例えば荷物を変わって持ってあげたり
声をかけてあげたり
相手に
「ありがとう」
そう言って貰えると嬉しくなって
自分の行動が正しかったんだ
そう思えて気分が上がる。
しかし何故だろう。
いいことをしていても
突然悪い噂がたってしまうことがある
根も葉もない噂が自分を苦しめる
周りの人もいい噂なんて聞こうとしないし
悪い噂だけが信じられて広まって行く
このとき
そんな噂信じないよ
なんて言ってくれる人が自分を支えてくれる人が
現れるといいなぁ
この世界は何をするにも評価されて
時々首を絞められるような
感覚になってしまうことがある。
そんな時そっとで良いから
あなたの言葉で私を止めて。
─────『この世界は』
常に自分の気持ちでは
いつ死んでもいいそう思っているのに
常に自分の体は生きようとしている
どうしてだろう
今でも脳裏に焼き付いてる
家が火に包まれている信じられない光景
俺だけが外出して
俺だけが助かった事実
警察からの事情聴取
どうしてこうなったの
「お前が火をつけたんだろ」
「つけてない」
そう言っても警察はしんじてくれない
どうしてやってないことを証明するのは難しいのだろう
1度ここに来てしまえば世間からは
いいような目では見られない
どうして人間って嫌な目で見るんだろう
同じ人間なのに
どうして...。
─────『どうして』
目を開けるとそこには
白いヒラヒラしたワンピースを着た私と
視界一面に広がるお花畑があった。
木々がゆれる音,お花の香りが心地よかった。
この先の景色が気になって歩くことにした。
美しい蝶が飛んでいたり鳥の声が聞こえたり
そこには平和,平穏な世界という
言葉が似合う場所だった。
突然肩に何かが当たった気がして声を上げた。
「わっ」
「驚かせちゃった?ごめんね」
振り向くと白い服を着ている
...男?...女?...人がいた。
声は男の人にしては高いように聞こえて
女の人にしては低いハスキーに聞こえる。
なんで何かわからないけど私には顔が見えなくて
「何じっと見てるの?ほら行くよ!」
そう言って私の手を引くこの人は
私に歩幅を合わしてくれているような気がした。
「あなたは男?女?」
思い切って聞いてみた。
「そんなこと聞いてどうなるの?
秘密が多い方が惹かれるでしょ。」
そう言った声色は
なんだか楽しんでいるように感じとれた。
「そっか,そうだね」
「...13番ここの問題答えて」
ヤッバ寝てた。
良かった〜13番じゃなくて。
夢で見たあの人が
どんな顔しているのか
どんな人なのか
私は気になって授業どころじゃなかった。
私はさっきの夢をずっと見ていたい。
もう私は名前も顔も知らないあの人に
惹かれてるかもしれない。
─────『夢を見てたい』