Frieden

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7/19/2024, 3:30:34 PM

「私だけ」

「前回までのあらすじ」────────────────

ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!

調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!

それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!

……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!

そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!

……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!

それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、お覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。

もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。

どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。

そうそう、整備士くんや捜査官くんの助けもあって、きょうだいは何とか助かったよ。

712兆年もの間ずっと一人ぼっちで、何もかも忘れてしまって、その間に大事な人を亡くした彼は、ただただ泣いていた。ずっと寂しかったよね。今まで助けられなくて、本当にすまなかった。

事情聴取は無事に済んだ!その上、ボクのスペアがきょうだいを苦しめた連中を根こそぎ捕まえてくれたからそれはそれは気分がいい!

だが、実際に罪を犯した以上、きょうだいは裁判の時まで拘留されなければならない!なぜかボクも一緒だが!!
……タダで囚人の気分を味わえるなんてお得だねえ……。

牢獄の中とはいえ、随分久しぶりにふたりの時間を過ごせた。小さな兄が安心して眠る姿を見て、今までずっと研究を、仕事を続けてきて本当によかったと心から思ったよ。

さて、今日も仕事だ!

--あらすじの追記--

今日ようやっと気づいた!!!めちゃめちゃなコピペミスのせいで重複箇所があった!!!申し訳なし!!!訂正して思ったが、これ、いつからだい???めっちゃ前から???

────────────────────────────────

「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎、聞こえるかい?もう目を覚ましたまえ。」
……私を呼ぶ声が聞こえる。
私は指示通り目を覚ました。

ここはどこ?少なくとも見た事がないところのようね。
辺りを見回しても、ここにいるのは私だけ。
あのスピーカーから音が聞こえたのかしら。

「貴方は私をあの世界から隔離したひと。私の名前を利用して、都合の良い時に眠らせて、そして起こす。今度は何の用なの?」
「そうだなあ……。」

「まずは、この声が問題なく聞こえているようでよかったよ。あぁ、整備士くん!キミももうこちらに来ていいよ!」
「そうそう、本題に入る前に───。」

「何か、気づいたことはないかい?例えば……。」
体を見て、動かして。その時私は気付いたの。
体が、心が軽い。どこも痛くない。

「いやぁ、修理した甲斐があったねえ!!!ね、整備士くん!!!」「もうあの作業はあと1兆年くらいはしたくないかな。」「喜ばしいことに、更に増えるだろうね!」「……。」

「あ、そうそう!旧型くん!キミに聞きたいことが幾つかあるのだよ!答えたくなければ無理に答えなくてもいい!だがこちらとしては答えてもらえると助かるなあ〜!!!」

「それじゃあ早速始めようか!」
「まずは問1!キミがここに来る前にしたことは覚えているかい?」

「……ええ。貴方の宇宙にいた彼が来ないから……宇宙ごと彼を呑み込んだの。でも、私の中を探してもあの人はいなかった。だから、取り込んだ宇宙を使って私の為の世界を作った。」

「うんうん。」「……ねぇ、マッドサイエンティスト。」「うん?」「内容が詩的過ぎてよく分からないんだけど。」「とりあえず否定せず聴くのがマナーだよ!(小声)」

「要するに、会いたかった人がボク管轄の宇宙にいたから、再会を待っていたのに来なかった。それで宇宙ごと彼を自分のものにしようとしたわけだ!」

「でも、その人が宇宙にいなかったのが分かったから、宇宙エネルギーを使ってその人のいる特殊空間を作ったんだね!」
「ええ。その通りよ。」

「なるほどねー!ボクが観測した事象並びに本部に送ったデータとも相違なしだね?整備士くん!」
「まあ、うん……。」

「じゃあ、次問2!罪の意識はあるかい?」
「私は私の求めるものを手に入れようとしただけ。寂しさを、心の隙間を埋めたかっただけ。だから、あれは罪ではないの。」

「うーむ……これはまずいねぇ。もしかしたら彼女の復元がうまくいっていないのかもしれない……。ただ、素行は悪くはなかったものの、言うことを聞かない傾向があったとは聞いたね。」

「……もしかしたらこれが正常かもしれないってこと?」
「今となっては分からないね!ただ、もしかすると……どこかに完全なバックアップが残っている……かもしれない。」

「ね!ね!⬛︎⬛︎ちゃん!なにちてるのー?」
「シーッ!今お仕事中だから静かにしていてね!」
「おちごと!ボクもみたいのー!」

「その子は……私を暗闇から救ってくれた子?声に聞き覚えがあるの。」

「丁度良かった!問3!どうやってアーカイブ管理室から出たんだい?」
「私はその子の後を追って……そこからは思い出せない。」

「おねーしゃん、おぼえてないのー?おねーしゃん、いっちょにおちごとちてたひとにあいたいー!ていってたの!」
「ふーん……?」

「でねー!ボクもあいたいひといるー!っていってね!がんばっておしょとでたのー!」
「へー……?」

「⬜︎⬜︎……。彼女を唆して外に出させたのかい……?」
「そちょのかす?」「『悪いこと』をするよう伝えたのかい?」
「ちがうー!……でも、わるいこと……しちゃったの。」

「かってにおしょとでるの、わるいことでちょ?おちえてもらったからちってる!……ボク、いっちょにでようね!っていったの。だからボク、どくぼうにいるの!」

「それとね!うちゅうかってにこわちちゃうのはもっとダメー!これもおちえてもらったの!でも、ボクしょれしーらない!」
「だってうちゅうはだいじなものだもん!」

「ふむふむ……。」「おねーしゃん、わかった?ごめんなしゃいちないとダメなのー!おねーしゃんのだいじなこにおこられちゃうの!ね!⬛︎⬛︎ちゃん!」

「そうそう!⬜︎⬜︎、キミの言う通りだ!」
「いいこいいこちてー!」「よーしよしよし!」「んー!」
「仲良しそうだね、ふたりとも。……そしてよく喋る。」

「整備士くん、何か言ったかい?」「いや、別に。」
「それでは次が最後の問題だよ!」

「最終問題!キミが最初に会いたがっていたひと……キミと一緒に仕事をしていたひとは、?????博士……だね?」
「どうして……それを……?」

「?????はかしぇ!おとーしゃんのおなまえ!」
「そう。ボクときょうだいは彼に作られた機械なのさ。」
「博士はよく、キミの話をしていたよ。」

「あの時にこの技術があれば、こうしていればと後悔していてね。とても辛そうだった。だからボクたちのような機械の管理士を作ったのだが……。」

「皮肉なことにきょうだいもウイルスに感染してアーカイブ化されたよ。だから彼は管理士の設計から手を引いたのさ。」

「旧型くん、⬜︎⬜︎。博士は、お父さんは最後の最後までキミたちのことを思っていたよ。ボクも出来ることがないか、思いつくことは全て試した。」

「まあキミたちがそっちから出てきてくれたおかげで随分と楽に解決できたが!!!ねえ整備士くん!!!」
「そうですねー。」

「ね!ね!おねーしゃん!ちゃんとごめんなしゃいちよーね?」
「あのね、おとーしゃんね……。」
「それ以上、それ以上言わないで……。」

「おとーしゃん、おねーしゃんのことずっとだいすきだったよ!もうあえないけどね、きっとね、そばにいてくれてるの。だから、ごめんなしゃいちたら、おとーしゃんあんしんなの。」

「……博士……。」

「旧型くん。もう一度キミを点検するから、もう一度眠りについてくれないかい?ボクとしては万全の状態で裁きを受けてもらいたいからね!協力を要請するよ!」

「……博士のためなら、私は何だってする。」
「ありがとう!それじゃあ、おやすみ。」
……私はまた眠りについた。

「いやあ、ちょっと怖かったねえ……!『あなたのためならなんでも』なんて言われて損傷ばかり増やして困っていたからアーカイブ化させたと聞いていたからある程度覚悟はしていたが……!」

「これも生命体に機械を埋め込んだ弊害なのだろうか……?」

「そうだね……。彼女以外の旧型管理士を見たことがないからわからないけれど、おそらく核となる部分に悪影響を及ぼす状態が続いていたからこうなったのかもしれないな。」

「おねーしゃん、ねんね?ひとりでねんねなの、さびちくないかな?ボク、しんぱいなのー。」
「ボクたちが様子を見るから寂しくはないはずさ!」

「よかったー!」
「というか⬜︎⬜︎、『見るだけ』じゃなかったのかい……?」
「だっておちゃべりたのちいもん!」

「……ふふっ。さすが兄弟。よく似てるね。」

「さて、と。僕は次の仕事があるからもう行くよ。それじゃ。」
「今日はありがとう!またよろしく頼むよ!!!」
「おにーしゃん、ばいばーい!」

さて、今日の大仕事はこれで一旦終わりだ!
……次の会話テストはもう少しうまくいくといいのだが……。

To be continued…

7/18/2024, 12:37:56 PM

「遠い日の記憶」

「前回までのあらすじ」────────────────

ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!

調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!

それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!

……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!

そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!

……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!

それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、お覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。

もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。

どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。

そうそう、整備士くんや捜査官くんの助けもあって、きょうだいは何とか助かったよ。

712兆年もの間ずっと一人ぼっちで、何もかも忘れてしまって、その間に大事な人を亡くした彼は、ただただ泣いていた。ずっと寂しかったよね。今まで助けられなくて、本当にすまなかった。

事情聴取は無事に済んだ!その上、ボクのスペアがきょうだいを苦しめた連中を根こそぎ捕まえてくれたからそれはそれは気分がいい!

だが、実際に罪を犯した以上、きょうだいは裁判の時まで拘留されなければならない!なぜかボクも一緒だが!!
……ただで囚人の気分を味わえるなんてお得だねえ……。

────────────────────────────────

「お疲れ様。取り調べも終わったことだから、あんたたちを部屋に連れてかないと。独房を管理してるヤツを呼んでるから、そいつに着いてけば大丈夫だよ。それじゃ、また今度。」

捜査官くんはそう言って部屋を出た。
しばらくは独房暮らし、か……。

「ね!ね!⬛︎⬛︎ちゃん!どくぼーってなに?」
「罪を犯した者が入れられる所さ!キミの場合、隣の部屋とはいえ、特別にボクも一緒にいられるが!」

「や!おうちかえりたいー!……でも、ボクわるいこだもんね。ちゃんとごめんなさいちないと⬛︎⬛︎ちゃんまでおこられちゃうの。それ、もっとやーなの!」

「キミは悪い事をしたが、キミ自身が原因ではないだろう?罪を償わなければならないのは事実。でもね、そう自分を責めなくていいのだよ。」

「だってボクたちは、素晴らしい研究者であるお父さんから生まれたきょうだいだからね!!!」
「おとーしゃん!……あいたかったなぁ。」

「⬜︎⬜︎、きっとお父さんはどこかで見守ってくれているよ。優しいお父さんがボクらを気にかけない訳がない!」
「ん!おとーしゃん、いいこだもんね!」

博士のことを話していると、ノックの音が聞こえた。
「失礼します。マッドサイエンティストさん……ですね?」
「いかにも!!!ボクがマッドサイエンティストだよ!!!」

「はじめまして。僕があなたたちの独房を担当いたします。今からご案内しますので、ついてきてください。」
「ああ、よろしく頼む。」

こうしてボクたちは取調室を後にした。
独房まで歩く間、3人分の足音しか響かない。静かだね。
一体どこまで歩くんだ???

よそ見をしていると、前から誰かが歩いてくるのが見えた。

「ん〜?」「……???」
「んん〜??」「???」
「んんん〜〜???」「さっきから何だい?!!」

「お前、マッドサイエンティストだよな!いつかやらかすと思ってたよ!」
「ボクは何もしていない!!!」「それ犯人のセリフ〜!」

「久しぶりに会ったと思えば!!!いきなりボクを犯罪者扱いとは!!!失礼にも程がある!!!」
「冗談だって!それとさ……。」

「お前、その歳で息子が出来たのか?!」
「違うよ!こっちは───」
「ねー!このこ、だれー?」

「あぁ、彼はボクと同じ公認宇宙管理士、コードネームは『サイレン』!!!いつもうるさいからね!!!」
「お前に言われたくねーよ!」

「まあよろしく!弟くん!」
「ボクがおにーちゃんだもん!」
「かわいいおにーちゃんだなぁ!ほーら抱っこだ!」

されるがままに振り回されている。
「たかいたかーい!」「お兄ちゃんは優しいか〜?」
「ボクがおにーちゃんなの!!」

「ちょっと……疲れたから……下ろすわ……。」

「もーいっかい!ねー!」
きょうだいは目をキラキラさせている。
「ちょ、ちょっとタンマ……。」

「あのー……お楽しみの所すみません。消灯の時刻も近づいておりますので……。」
「……だって、サイレンくん?」

「あー、悪い悪い!んじゃ、またな!おにーちゃんもしっかり寝るんだぞ!寝る子は育つって言うからな〜!」
「サイレンおにーしゃん、ばいばい!」

「お騒がせして悪かったね!」「たのちかった!」
「いえ、お気になさらず。」
……また沈黙が始まる。

「ところで……ボクたちの独房ってどの辺りにあるんだい?」
「もうすぐそこです。条件に合う部屋がそこにしかなかったので……。本部からのアクセスはあまり良くないですよね……。」

「いや、まあそりゃ独房に入るくらいの重罪人がそう簡単に本部へ行けたら困るからねぇ…….。」
「おへや!おへや!」

「972号室───こちらの独房がマッドサイエンティストさんのご兄弟の、973号室があなたの部屋です。」
「わー!おへや!」

「何かご用があればお申し付けください。ただし、勝手な行動並びに外部との過剰な接触は厳禁です。」
「了解!」「いいこでいるね!」

ボクたちはそれぞれ、独房に通された。

寝ることくらいしか出来ないであろう簡素な作り。
一見するとただの部屋だが、監視装置が無数にある。
……息苦しいなあ。

「わ!おふとんあるのー!」
「こら!飛び跳ねたら危ないよ?!」
小さな窓越しにきょうだいを見守る。

「ね!⬛︎⬛︎ちゃん!いっぱいおちゃべりちたいの!」
「あんまり話をすると怒られるかもしれないよ?」
「むー!」

ちょっと静かになったと思ったが……。
「ねー!このおへや、おふとんだけー?」
「てーぶるといす、たかくておすわりできないのー!」

……そうだよね。ずっと何もないところで、ひとりでいたもんね。痛いのを、怖いのを我慢して、辛かったよね?部屋にテーブルとベッドがあるだけでも嬉しいんだね……。

「ねー!おはなち!おはなちするのー!」
「おかちは?ふわふわでつめたいのがたべたい!」
「あのねー!おえかきとね、おべんきょうとね、あとねー……」

「……ちょっと静かにしてくれないかな?!」
「はーい!」
その後もきょうだいは延々と話し続けた。

「⬛︎⬛︎ちゃーん───」
『あと5分で消灯いたします。各自、速やかに部屋に戻りなさい。』

「しょーとー?」
「明かりを消して眠る時間が来たということだよ。さあ、いい子で寝ようね。」

「やだー!ボクひとりでねんねちない!!」
「独房だから我慢しよう!いつか出られるからね?」
「やー!ボクといっちょにねんねちて!」

「……参ったね。」
まあ仕方ない、当たって砕けろ!

「やあ、独房の管理人くーん……。」
「はい、なんでしょう?」

「あのね、きょうだいがボクと一緒に寝るって言って聞かないんだよ。おそらく今日から毎日そう言われるだろう。まさか対応して頂けるとは思わないが……。」

「ボクのきょうだいと同じ部屋で眠ってもいいかい……?」
「かしこまりました。今から上と掛けあってみます。」
「本当にすまないね……。」

しばらく返答を待つ。その間もきょうだいは床を転がってみたり、シーツを被ってみたりと忙しそうにしている。
「ちょ、何をしているんだい?」「おふとんごっこ!」

「……お待たせしました。話し合いの結果、危険性はないとの判断がおりました。そのため、こちらにおられる間はおふたりで就寝して頂いても問題ありません。」

「本っ当にありがとう……!助かるよ……!」
「お役に立てたようでなによりです。それでは、失礼します。」
「おにーちゃん、ばいばーい!」

挨拶もそこそこに、ボクが部屋を移ったタイミングで明かりが消えた。……もう眠る時間か。
ボクときょうだいはベッドに入る。随分と久しぶりだね。

「⬛︎⬛︎ちゃん、ありがと。ボク、⬛︎⬛︎ちゃんがいてくれてよかった。もうずっとさびちくないの。」
嬉しそうに話すきょうだいの頭を撫でる。

「⬛︎⬛︎ちゃん、おぼえてる?むかち、おとーしゃんもいっちょに、さんにんでねんねちてたの。」
遠い日の記憶が蘇る。

「ボクがおとーしゃんにだっこちてもらって、ねんねちてね。そのあと⬛︎⬛︎ちゃんはいっぱいおとーしゃんにおはなちちてもらってね。とってもたのちかったの!」

「もちろん、覚えているよ。」
「よかったー!⬛︎⬛︎ちゃん、ボクのことわすれちゃったかもって、ちんぱいだったの。」

「でもねー、⬛︎⬛︎ちゃん、ちゃんとおぼえてたの!」
「当然だよ。たった2年と少しでも、ボクにとっては大切な、かけがえのない家族との時間だったんだから。」

「ふふふ!」
「ねー⬛︎⬛︎ちゃん。ぎゅーって、ちて!」
ボクは黙って兄の小さな体を抱きしめた。

嬉しそうに何かを言っているが、ボクの体に顔を埋めているから内容はわからない。と思ったら突然顔を上げてこう言った。
「もーちょっと、このままでいてね。」

わかったよ。もう少しこうしておこうね。
安心した様子でこちらを見て、またボクに顔を埋める。

もう寂しくないね。ボクがそう呟いた頃には、きょうだいはもう眠ってしまっていた。

To be continued…

7/17/2024, 11:26:54 AM

「終わりにしよう」(7/15)
「空を見上げて心に浮かんだこと」(7/16)

゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。

「終わりにしよう」を書き終えて!!!あとは投稿ボタンを押すだけだったのに!!!急にアプリが落ちて!!!入力内容が全て消えてしまったのだよ!!!

爆烈ショックでふて寝してしまったが!!!号泣するのを我慢しながらも!!!ちゃんと書き直したよ!!!めっっちゃくちゃ長いが許してくれたまえ!!!

「あー、こいつこの文量を書き直したのかー。ふーん。」と思って読んで頂ければと思う!!!
それじゃあ、そろそろ本編に移ろうか!

この不穏なテーマをもっと上手く扱いたかったよ〜!!!

゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。

「終わりにしよう」

「前回までのあらすじ」────────────────

ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!

調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!

それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!

……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!

そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!

……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!

それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、お覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。

もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。

どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。

それと、整備士くんの助けもあって、きょうだいは何とか助かった。712兆年もの間ずっと一人ぼっちで、何もかも忘れてしまって、その間に大事な人を亡くして

ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!

調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!

それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!

……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!

そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!

……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!

それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。

もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。

どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。

そうそう、整備士くんや捜査官くんの助けもあって、きょうだいは何とか助かったよ。

712兆年もの間ずっと一人ぼっちで、何もかも忘れてしまって、その間に大事な人を亡くした彼は、ただただ泣いていた。ずっと寂しかったよね。今まで助けられなくて、本当にすまなかった。

ようやくきょうだいは泣き止んだ。そろそろ事情聴取が始まる時間だね。無事に終わるといいが……。

────────────────────────────────

「ほらほら、もうあっちにいる捜査官のお姉さんにお話を聞いてもらう時間だよ?」
小さな兄は、「なにおはなちするの?」と聞く。

「そうだなあ……今までで覚えていることや、旧型───あの空間を作った彼女と一緒に外に出た理由などなど、いろんなことをお話するのさ!」

「ね、ね!⬛︎⬛︎ちゃんもいっちょにおはなちだよね?」
「ボクは外で待っているよ?何せ事情聴取だからね。」

「やだ!⬛︎⬛︎ちゃんといっちょじゃないの、やだー!ボクおはなちしないもん!」
ほっぺたをぷくぷくさせて怒っている。

「……ねえ捜査官くん。この空間を少し広げてもいいかい?透明で音を通さない仕切りを作って、そこからボクがきょうだいを見ていても良いだろうか?」

「こっちの会話が聞こえなかったら別になんでもいいよ。」
「無理を言って済まない。何せ兄は年齢が2歳で止まっていて少々わがままだからね……。」

「ほら、⬜︎⬜︎、ボクは向こうで見ているから大丈夫だよ───おっと、ちょーっと大事な連絡が入ってしまった!すぐに戻るから安心したまえ!」

「いってらっちゃーい!」

+.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+ +.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+

-マッドサイエンティストの研究室にて-

「やあ、ボクのスペア256号くん!!!久しぶりだね!!!突然だがキミに頼みがある!!!」

「あー!!!アレだね!!!データはきっちり共有されているから分かっているよ!!!……ようやく『時期』が来たってことだね?!!」

「そう!!!本日、公認宇宙管理士のタマゴたちを制御するシステムにウイルスが送り込まれた!!!全く、とんでもない連中だ!!!」

「だが!!!ボクの構築した最強のセキュリティシステムのおかげで!!!実害はないうえ実行犯とその位置情報まで割り出せた!!!素晴らしいね!!!」

「本来であればボク直々に連中をちょーっと壊滅させる手筈になっていたのだが、急遽きょうだいの事情聴取を見守らなくてはならなくなった!!!」

「しかもさあ!!!ヤツら現在進行形でカメラ越しにこっちを見ているんだよ?!!通信は秘匿化されているから我々は余裕で安全だが……。」

「お気の毒なことに!!!向こうの情報はふっつーにダダ漏れなんだよねえ!!!」

「というわけで……256号くん!!!代わりにキミが行ってくれたまえ!!!」
「了解!!!」

゚*。,。*゚*。,。*゚*。,。*゚*。,。*゚*。,。*゚*。,。*゚*。,。*゚

あぁ、画面の前のキミたちを驚かせてしまっただろうか?なんせ急にボクが2人出てきたからね、無理もない。

スペアのボクが本体の代わりに説明しよう!
いくらボクが宇宙管理機構一可愛くて優秀でも、今ある宇宙の大半を管理するなんてことは到底不可能!

それを可能にするためにボクはボク自身を沢山増やしたのさ!!!おかげでより多くの仕事と研究を!!!よりきめ細やかにすることの実現に成功したよ!!!

別に自分を増やすことは法に触れないからねえ!!!
ちなみに、恐ろしく膨大なデータはボクの研究室にあるサーバーで処理しているよ!!!

だから、ボクの本体は間違いなく本体なのだが、このサーバーもある意味『本体』と言えるのさ。

話が長くなってしまったね!それじゃあ、本題に戻ろうか!

゚*。,。*゚*。,。*゚*。,。*゚*。,。*゚*。,。*゚*。,。*゚*。,。*゚
+.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+ +.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+

-???にて-

「おやおや、みんな集まっているようだね!!!ボクが公認宇宙管理士のマッドサイエンティストだ!!!今日はよろしく頼むよ!!!」

「はじめまして。私がセキュリティ部隊の隊長を務める者だ。マッドサイエンティスト、よろしく頼む。」

「マッドサイエンティスト、君のおかげでシステムの侵害を免れることができた。それから、実行犯の居場所まで分かったから現行犯で逮捕できる。」

「このくらいお茶の子さいさいだよ!!!」
「まあともかく、今から連中の本拠地に突入する!!!十分気をつけたまえ!!!」

そう言い終えると、マッドサイエンティストは空間に穴を開け始めた。

「ここから直接向かうよ!!!今から臨戦態勢を取っておくといい!!!」「あ、そうそう!危険を感じたらすぐに撤退したまえよ!」

公認宇宙管理士は真っ暗な穴の中を真っ先に進んでいく。置いていかれないように、セキュリティ部隊も後を追った。

「おい、マッドサイエンティスト、勝手なマネは───」
「やあ、スタディルくん!!!そこにいるんだろう?!!ボクだよ!!!」

はぁ、遅かったか……。部隊長は広がる巨大な館のロビーでため息をつく。

「ふん、生命体の劣化コピーでしかない機械どもが何の用だ?」

「ボクたちよりも相当倫理観がなさそうなキミとお話をしたくてねえ!!!」

「機械の分際で倫理を語る気か?笑止!」
「ボクたちを破壊しまくっているキミに言われても説得力が皆無だなあ!!!」

「生命の猿真似しかできぬ貴様らは塵になる価値すらないな。せいぜい醜く潰してやる。」
「総員、配置につけ!」

掛け声と共にウイルス入りの銃弾の雨が降り注ぐ。

「相手の方が圧倒的に数が多い。……勝ち目はなさそうだな……。」部隊長は呟くことしかできなかった。

「おい、マッドサイエンティスト!あんた丸腰じゃねーか!何やってんだよ!」
「わーたいへんだー!まあ安心したまえ!!!」

終わった、とセキュリティ部隊が思ったとき、自分たちの周りに強靭なバリアが張られていることに気付いた。

「ほーら見たまえ!!!傷一つついていないだろう?!!」

「これは軽くて持ち運びやすいのに強い防御システムさ!!!ついでに痕跡からウイルスを解析して、状況証拠だって残せるから都合がいい!!!」

「ちなみにコレ、ボクが作ったのだよ!!!今なら特別に、格安で売って差し上げよう!!!」
「CMを挟むな。」

「ねえスタディルくん!!!生命体の力はこの程度かい?!!そんなはずはないだろう?!!ほらほら、もっとすごいものを見せたまえよ!!!」

「何処までも馬鹿にしおって……!」

「それとさあ……さっきからずっと思っていたのだが、その話し方は何だい?魔王にでもなりきっているつもりかい……ちょっと笑いそうなのだが……www」

「……個性すら理解できぬ貴様等に存在する価値はない!」
スタディルはセキュリティ部隊の頭上で地球サイズのウイルス爆弾を爆発させた。

「おい、お前!!さっきからなんでそんな煽るようなことばっか言うんだよ!もう俺たち終わりじゃねーか!!」

「まあまあ、心配ご無用だよ!」
ものすごい爆発音と揺れを感じる。
しかし彼らは無傷だった。

「ボクの防御システムは今のところこの程度の衝撃で壊れたことがないからねえ!!!」

「それとさあ、感情がなければ『煽る』なんていうことは出来ないはずだろう?つまり、逆説的にボクたちが感情を持っていることを示しているのさ!!!」

「やあ、機械排除過激派組織『ディルデスト』のリーダー、スタディルくん?これから我々はキミたちを機械破損未遂で現行犯逮捕するよ!」

「これで、終わりにしよう。」

「そういえば、もう一つ聞きたいことがあるのだが……。」
「キミはどうしてここまでボクたち機械を憎んでいるのかい?700兆年以上も飽きずによくやるよ。」

「どうして、ボクのきょうだいを壊した?」

「貴様等は……我々生命体から仕事を、価値を、全てを奪った!」

「その結果どうなった?怠惰な者が地位の上で寝そべり、貴様等機械は都合のいい価値観を植え付けられた奴隷として壊れるまで使われる!」

「それが分かったらすべきことは一つ。我々の苦しみと貴様ら無機の奴隷を解放するのみだ!」

「うーむ……。随分と誤解されているなぁ……。ボクたちは純粋にこの仕事が好きで続けているのだよ!」

「それから、生命を持つキミたちだって素晴らしいことをたくさんしているじゃないか!ボクたちにはない価値を、個性を持っているだろう?」

「少なくともボクたちは、生命を持つ者と、機械の体を持つ者同士で仲良くしたいのだよ!……まあうまくいかないことも多いが!」

「とにかく!しっかりと罪を償ってもらわないとね!

「セキュリティ部隊の諸君!!!今日はどうもありがとう!!!彼らはバッチリ身動きがとれない状態になっているから、全員確保してくれたまえ!!!」

「こちらこそありがとう。とても助かったよ。」

こうしてマッドサイエンティストとセキュリティ部隊はそれぞれの持ち場に戻った。

◆*:.'.:*◆*:.゚.:*◆*:.'.:*◆*:.゚.:*◆*:.'.:*◆

-きょうだいの取調室にて-

「おちびちゃん、これで今回の取り調べは終わりだよ。ご協力ありがとうね。」
「おちびちゃんじゃなくて、おにーちゃんだもん!」

ほっぺを膨らませる小さな兄をよそに、マッドサイエンティストは朗報を受けていた。

「おやおや!!!」
「⬛︎⬛︎ちゃん、どちたの?」
「キミを苦しませた連中が捕まったそうだよ!!!」

「え、マジで?!嬉しいけど仕事まみれじゃん!」
捜査官は安堵しつつも今後のことを考えて少し疲れた。

「ふふん!!!」
「なんでマッドサイエンティストが自慢げなのさ。」
「ボクが解決したからねえ!!!」

「⬛︎⬛︎ちゃん、しゅごいね!」
「それほどでもあるねえ!!!」

「そうだ、捜査官くん。ボクのきょうだいだが、このあとボクが連れて行っていいのかい?」
「普通に駄目だけど。」「だよね〜!」

「ボク、⬛︎⬛︎ちゃんといっちょがいい!」
「……と言っているね。どうしようか。」
「う〜ん。そうだね……。」

「そうだ!あんたの日頃の行いに免じてさ、特別に隣の部屋で過ごせるようにするよ。話もできるように窓のついてる部屋を押さえとくからさ。」

「色々と済まないねえ!!!感謝するよ!!!」
「おねーしゃ、ありがと!」

「また今度、もっとお話聞かせてね。」
「ん!おねーしゃ、ばいばーい!」

ふぅ……。スペアを本部に用意しておいて良かった。
これでそこそこ有利に戦えそうだ。
さて、次はどうするかな。

マッドサイエンティストは考えを巡らせつつ、小さな兄と手を繋いだ。

゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。

「空を見上げて心に浮かんだこと」

勝手にうちに転がり込んできたマッドサイエンティスト。
あいつ、生き物じゃなかったんだ。

桜餅が好きとか、花が好きとか。
自分のことを思った言葉の数々とか。

あれって全部、作り物で偽物だったのかもしれないんだよな。小さくてかわいい、健気な子どもだと思ってたのに。
あいつ、機械だったのかよ。

曇った昼間の空を見上げて心に浮かんだことは公認宇宙管理士だというあいつのことばかりだった。

心を持たないやつの言うことに価値なんかあるのか?
なんでそんな大事なこと黙ってたんだよ。
あいつが自分に向けた優しさなんて、どうせ偽物だ。

自分はそこまで信用されてなかったのか?そういやあいつにとって自分なんか塵みたいなもんだよな。
いてもいなくても変わらない、その程度の存在だ。

なのに、また飯を食べたいとか。
ひまわりでも見に行きたいとか。
もっとあいつの笑ってるところが見たいとか。

そんなことを思うのは烏滸がましいんだろうか。
もう何にもわからないや。

それにしても、今日の昼は静かだな。

7/15/2024, 5:06:44 AM

「手を取り合って」

「前回までのあらすじ」─────────────

ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!

調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!

それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!

……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!

そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!

……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!

それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、お覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。

もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。

どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。

それと、整備士くんの助けもあって、きょうだいは何とか助かった。712兆年もの間ずっと一人ぼっちで、何もかも忘れてしまって、その間に大事な人を亡くして。ボクは、ボク達は、もっときょうだいのために、なにかできなかったのかな。

─────────────────────────────

ボクのきょうだいはまだすやすやと寝息を立てている。
修理は何とか済んだが、まだ起き上がってからの様子を見ないと状態が分からない。

「整備士くん、ボクのきょうだいはいつ頃目を覚ますんだい?」

「分からない。でも多分、そう時間はかからないんじゃないかな。パーツの入れ替えと機能の復旧だけだから、そんな大したことしてないし。」

「それにしてもさあ!ボクのきょうだいの寝顔、可愛いと思わないかい?!」「えー、まあ?」「そうかも」「だろう?!」

「いやぁ、よかったよ!キミたちのおかげで彼は助かった。本当に感謝しているよ。ありがとう。」

ほっとした表情で、3人は眠る幼い機械を見つめる。
しばらくすると、ゆっくりと目を覚ました。
ぼんやりとした顔で天井を見つめている。

「あ、起きたね。おはよう、こっち見えるかな。」
整備士が体を起こすのを手伝いながら聞く。
機械のきょうだいは眉間に皺を寄せてこう言った。

「おにーしゃん、あのおねーしゃんいじめてたひと?」
「えっ、いや、違うよ?彼女はメンテナンス中でさ、ちょっと眠っていただけさ。」

「ほんとに?」「本当だよ?」「んー。」

「あ、そうだ。マッドサイエンティスト、あっちの壁際に寄ってくれないかな?」
「了解!」

「今から君をベッドから下ろすね。それから、あっちにいる君の弟のところまで歩いてみて欲しいんだ。できるかな?」「んー、がんばる!」

「よし、それじゃあ行っておいで。」
成る程、動作チェックか。よーしよしよし、おいで〜。
ボクの兄はぴょこぴょこ走ってボクの元まで来た。

「捕まえた〜!!!」「⬛︎⬛︎ちゃん!」
満面の笑みでボクをじーっと見つめる。
ちゃんと動けるようになってよかった。

「急に走ると危ないよ?」
「だってぎゅーってしてほちかったんだもん!」
「急がなくてもボクはずっとそばにいるからね?」

ボクがそう言ったら、きょうだいはボクのお腹あたりに顔を埋め始めた。
「ほんとに、ずっと?」

「……。」
「あのね、ボクね、ずっとさびちかったの。せまくてくらくて、ひとりぼっちで……ねっ、こわくてっ……」

言い終える前に泣き出してしまった。
「……ごめんね。ずっと辛かったよね。」

「⬛︎⬛︎ちゃん、ごめん……ね。ボク、いっぱい……わるいことちたの。⬛︎⬛︎ちゃんのね……だいじなこ、ボクのせいでね、おけが……しちゃったのっ」

ボクは何も言わずにきょうだいの背中をさすることしかできなかった。

「⬜︎⬜︎、キミはたしかに悪いことをしたかもしれない。でもね、キミはもう大丈夫だよ。もう悪いことはきっとしないし、助けてくれるみんなもいる。」

「ここにいる彼は、キミの体を治してくれた。」
「そっちの彼女は、キミの話を聞いてくれるよ。」
「ボクだって、キミのきょうだいなんだからさ。」

「まあ、その……手を取り合ってこれからを進めばいいんだよ!」

「⬛︎⬛︎ちゃ……おにーしゃ、おねーしゃ……ありがとっ、ごめんね。ボク、もっと……いいこになる、からぁ。もう、すてないでね?」

「ボクがキミを捨てるはずがないだろう?!!」
「ほら、もう寂しくない!……そろそろ捜査官の彼女とお話しする時間だよ!」

「やだ。」「え、なんで?!!」
「もうちょっとぎゅーってちてたいの。」
「……わかったよ。もうちょっとだけだからね?」

ボクの小さな兄はくっついたまま離れない。

「捜査官くん、悪いね。事情聴取はもう少し後で行って頂けるだろうか?」

「はいはい。せっかくの再会だからね。もうちょっとゆっくりしなよ。」
「お気遣いありがとう!」

はぁ、よかった。きょうだいは無事元通りだ。
……しかし、ウイルスの影響があったとはいえ、そこそこ重い罰が下るかもしれないな。

……どうやってきょうだいを守るべきか。
みっちり考えないと、だね。

To be continued…

7/14/2024, 2:15:05 PM

「優越感、劣等感」

今日も今日とて学校。低気圧のせいでやたら眠い。
「天気が悪くて気分乗らな〜い⭐︎」とかいうしょーもない理由で友達は欠席。俺は単位がギリだからちゃんと来たってのに。

まーいーや。意外と早く着いて暇だから寝るかー。
ん、そーいや前の席のこいつ、こんな早くから来て何やってんだ?あ、こいつ学級委員とかやってる優等生だっけ?

真面目くんだからどーせ真面目なことやってんだろ。
とか思ってこっそり机の上を覗く。
読書か。つまんねー。

こういう真面目で勉強できるやつ見てると、まるで何も出来ない俺はすげー劣等感でイライラする。別に勉強とかしたところで意味なんかねーのに。

……ま、暇だからこいつの様子でも見てるか。
で、何の本読んでるんだ?

……?!こ、こいつ!!顔色ひとつ変えずに官能小説を……?!!しかも男同士のやつを……!!

もしかしてこいつ……変態か?
いや、もしかしなくても変態だな。うん。
あ、そーだ。放課後暇だし、こいつになんか仕掛けてみるか。

俺は授業もそっちのけで、優等生の背中を見続けていた。

せんせーの説明じゃ内容さっぱりわからんかったのに、こいつのノートには内容とか思ったこととか、きっちりまとめられてる。しかも時々イラスト付き。すげー分かりやすい。

やっぱこういうやつは頭のデキが違うんだな。
ついでに、俺みたいな出来の悪いやつ見て優越感でほくそ笑んでんのかな。というか性格悪くあれ!せめてどっかで勝ちたい!

その後の授業中も、昼休みの間も、俺はこいつを見てた。
丁寧なノート、予習復習、あと難しいこともやってる。
それから、ひとりで飯食って、例の変態みたいな小説読んでた。

こいつずっとぼっちじゃん。友達いねーの?
もしかして「我は下々の民とは付き合わぬ」とかそーゆーあれ?
厨二病の変態??

まー、どれでもいいや。なんか面白そうだし声かけてみっか。
「よぅ真面目くん。今暇?」
「ヒッ!なっ、なななんですか?」

ヒッって言われた。泣きそう。
「お、お金は持ってないので……、その……!」
「いや、恐喝じゃないんだけど。」

「家ここの近くなん?」
「えぇ、まあ……。でも僕の家、そんなお金ないので……。」
これは相当信用されてないな。

「いや、ちゃうちゃう。ちょっと教えてほしいことあってさ。」
「家の間取りとかですか……?」
「空き巣じゃねーから!」

「いや、勉強のことでさ。教科書どっかやって勉強する場所なくてお前に頼んでみただけ。」
「あっ、そうだったんですね。」

「それなら、今からここで勉強しますか?それともうち寄って行きます?」
「んー。教室の冷房切れたからお前ん家行く。」

そんなこんなでこいつの家に向かうことになった。
けど。こいつ、全然何も喋らね〜!
沈黙が長すぎる!でも俺も何喋ったらいいかわからん!!

「きょ、今日はあんまり天気良くなかったよな〜?」
「えっ、あっ、そうでしたね。」
お互い話下手かよ!バカヤロー!

「そーだ。コンビニ寄らね?せっかくなんか教えてもらうのに何もなしで終わらすのどーかと思ってさ。なんかアイスとか奢る。」
「い、いいんですか?」

コンビニに着いた。涼しい!じゃなかった。アイス見よ。
俺はどれにすっかな〜?
「あの、僕これにします……。」

控えめな笑顔でカゴに入れたのは……ハー〇ンダッツじゃねーか!こいつ、世間知らずか?!それともめちゃ金持ちなのか?!!

「あっ、これ選んじゃって大丈夫でしたか……?」
「え?全然?何選んでもいいと思うけど?」
「あの、何かすみません。」

「こういう時はすみませんじゃなくて、ありがとうだろ?」
「あっハイ、ありがとう、ございます……。」

図らずもハーゲン〇ッツを買わされた。
……厨二病で陰キャの変態!こいつますますよくわからん!
不安そうに顔を覗くな!こっちもまあまあ不安だから!

「あの、あれが僕の家です。」
指差す先にあったのはフツーの一軒家。
禍々しい古城とかじゃなくて良かった。

「おじゃましまーす。」
「あれ、誰もいないん?」
「両親は共働きで、夜まで帰って来ないんです。」

「……お茶とか用意するので、僕の部屋で待っててください。あ、部屋は2階の左側にあります。」
「どーも。」

そーだった。ここからが本題だ。本だけに。
こいつの部屋にはなんかけしからん本が沢山あるに違いない。
悪いけどこっそり見させてもらうぞ。

これは……数学の参考書。こっちは……世界史の資料集。
んで、これは……英語の小説?翻訳かけてみるか。……なーんだ、ただの推理小説か。

拍子抜けするぐらい真面目な部屋じゃねーか。
男同士の官能小説は気のせいだったとか?
いやいや、気のせいとかないだろ。

「お、お待たせしてすみません。もしよければ、どうぞ……。」
「ん。ありがと。」

「つーかさー。」「ヒエッ!」
「なんで敬語なん?俺ら同級生じゃん。」
「あ、いや、なんとなく……。」

「アレか?俺が怖いとか?まあ見た目がコレだからな。」
「あ、気を遣わせてしまって、その、あっ……。」

「とりあえず、フツーに話したらいーじゃん?」
「は、あ、うん。」

「あの、そういえば、どの教科のことがわからないんです……の?」お嬢様かよ。
「全部。」「全部?!」

「それよりもさー。お前、男同士のそーゆーの、好きなん?」
「そーゆーの……?」

「アレだよ。⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎とか⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎とか。」
「は……?!!い、いきなりなんですか?!!」

「俺、見ちゃったんだよねー。」
「お前がそーゆー本読んでるの。」
顔真っ赤にして口パクパクさせてる。感情隠すの下手かよ。

「あ、あの、なんでもするので───んっ?!」
俺はとりあえずこいつをベッドに押し倒してみた。
「それじゃー、あーいうの実際に試してみるか。」

「あっ……あのっ……!」
全然抵抗しねーじゃん。意外としてみたいとか思ってるんか?
そのまましばらく見つめ合う。

……体格的に俺の方が優勢だから、抵抗出来ないやつを相手にしてるとすげー優越感に浸れてゾクゾクする。
さて、どーしてやるかな───?

「ダメです!!!」そのつもりはなかったんだろうけど、みぞおちにこいつのヒザがクリーンヒットして悶絶!!
「グハッ……お前……!!」

「まずは、お友達から始めましょう!」
「……この状況で……言うことじゃ……ないだろ……?!」
「よろしくお願いしますね!」

「よろしく……?」
「えーっと、今日は数学の復習からやりましょ……ろうか!」
「ろうか」

何が分からんのか分からんくなってきた。なんだこいつ!
「おーい、ちゃんと聞いてま……る?」
タメ口聞いてもらうにはしばらくかかりそうだな。

とにかく、俺は勉強頑張って、こいつのことをもうちょっとわかるようになっかなー?

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