「これまでずっと」
「前回までのあらすじ」─────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから、えーっと……。
どうやらきょうだいが感染したウイルスはまだ存在していて、ボクは本部の連中に治療を頼んだが……。
─────────────────────────────
「きょうだいの治療をしてほしい」と言い残して真っ先にこの空間から足を後にしようとする自称マッドサイエンティストを追いかける。
おい、おいって!
色々と聞きたいことがあるんだけど!
聞こえてないのか?!
「……。」
無視すんなよ!聞こえてるんだろ!
「……。」
……もういい、こっちが勝手に話す。
あんたは、なんなんだ?何者なんだ?
だって、う、腕……痛くないのか?
「痛いに決まっているだろう?!!」
「それから!!!ボクはマッドサイエンティストだとずっと名乗っているはずだが?!!それじゃあ不満かい?!!」
不満も何も、訳がわからんことだらけだから分かるように説明してくれって!
「守秘義務に違反するから満足のいく説明はできないよ?」
それでもいいよ。……頼むから、話してくれ。
こいつはため息をついてから話し始める。
「……ボクが『チョーカガクテキソンザイ』だ、ということはもう知っているね?あれは嘘ではないが、まぁ、その……。完全な情報を伝えたわけでもないのさ。」
「ボクは……ボクは機械の体と心をもつ公認宇宙管理士、そしてコードネームはマッドサイエンティストなのだよ。」
「だからメンテナンスを続ければずっと『生き続ける』ことが───いや、稼働し続けることができる。」
「確かにボクは機械だが、ボクたちを作った博士はスゴいひとだったから!!!ボクはまるで生命体のような体と心を持ち!!!こうやってキミに寄り添っていられるのさ!!!」
でも、機械は痛がらないだろう?きょうだいを救おうなんて、思わないだろう?それから、じゃあ、一緒に飯食ったのはなんなんだよ?
「……気味が悪くなったかい?」
「ボクが生き物じゃなかったから、ほんものじゃなかったから、もう嫌になってしまったのかい?」
嫌になったんじゃなくて、なんで言ってくれなかったんだよ?
そんなに自分のこと信用できなかったのか?
「あえて守秘義務違反を犯すようなマネをしなかっただけさ。」
「……他に質問は?」
……分からん。頭の中がぐちゃぐちゃで、どうしたら……?
「とにかく深呼吸でもしたらいいんじゃないかな?」
「そうそう、キミ、腕は大丈夫かい?」
そういや、何にも痛くない。
「そうかい。それならよかったよ。」
「それじゃあ、キミは家に戻りたまえ。」
え、あんたはどうするんだよ?
「ボクはこっちに残って仕事をする。」
「あー、そういえば、事情聴取の心配はしなくていいよ。話はつけておくから。」
げ、そういえば目撃者として話聞かれるんだっけ?
「忘れていたのかい?全く……。」
「とにかく、ちゃんと美味しいもの食べて、時々体を動かすんだよ。……出口かい?そこの角を右だよ。」
そう言い残して機械はどこかに行ってしまった。
01101110 01101001 01110011 01100101 01101101 01101111 01101110 01101111
事件の捜査官と機械の整備士が話をする。
「マッドサイエンティスト、あんな早足でどこ行くつもりなんだろ?まーた変なこと企んでるとか?」
「まあ、あいつはややこしいやつだからよくわからないや。」
「ん?なんか全員にメッセージが回ってるみたい。あいつからだ。」
「どれどれ、えーっと……?」
「【速報】アーカイブ管理室から脱出した公認宇宙管理士の現行犯逮捕に成功」
「あー、うちらのことだね。にしても早っ。」
「あいつが本部に情報を送ったのかも。」
「そういえばあいつ、きょうだいを助けてほしいって言ってたよね。うちらで判断していいのかな?」
「うーん……。お互い、上司に聞かないとだね。」
「仕方ない!このチビを柵ん中にぶち込んで話聞くか!」
「ちょ、言い方……。まあ、相談は早いほうがいいか。」
「話ならもうつけたよ!!!」
「ひっ……!!」「びっっっっくりした。」
「そしてバッチリ許可も得てきた!!!腕も治した!!!」
「早いだろう?!!流石は優秀なボクだけあるね!!!」
「ところで、ボクのきょうだいを『さくんなかにぶちこんで』からの話だが……。」「ちょ、なんかごめん。」
「早速面会させて頂こうと思う!!!」
「ついでに面会の許可も得てきたのさ!!!」
「……はぁ。」
「今は容疑者に意識がないから、ぼくも整備士として一緒に様子を見るよ。」
「あたしも見張りとしてこのまま面会室に直行するよ。」
「キミたちの都合もついているようでよかったよ!!!」
01100010 01110010 01101111 01110100 01101000 01100101 01110010 00100000
「ふーん、ここが面会室か……。にしては随分と子供らしいデザインだね!」
「容疑者が子どもだからね。」
「とりあえずベッドでも置いてこの子を寝かせておく?」
「整備士くん、助かるよ!」
「了解。」
整備士は空いたスペースに子どもサイズのベッドを展開する。
「ベッドというか、手術台のようだね!」
「まあ、整備の仕事がしやすいようにこの形にしただけだよ。」
捜査官はふと気になったことをマッドサイエンティストに聞く。
「そういや、年月は経ってるけど、なんできょうだいなのにこんな大きさ違うの?アップデートとか?」
「ボクがボク自身を改造しているからかな!!!」
「改造?」「うん、改造!!!」
「ボクは整備士の資格も持っているからね!!!」
「ぼくのいる必要、あった?」
「もちろん!!!牽制のためにもキミがいてくれると大いに助かる!!!」
整備士も質問する。
「ね、ちょっと気になってたんだけど……。」
「あれ、話してたの、何語?」
「言葉がまるでわからなかったし、翻訳機能も意味がなかった。ぼくらの知らない言語で話をしていたんだよね?」
「それからもう一つ。多分、公認宇宙管理士なら絶対に気になっただろうことを聞いてみる。」
「きみは名前を呼ばれていたのに、なぜ指示に従わなかった?」
「あー、あれはね、多分ボクときょうだいとの間でしか通じない言葉で……多分、彼が話せる言葉があれだけだったんだと思うよ。」
「それから……どうしてボクの名前が呼ばれたと判断したんだい?」
「何も聞き取れなかったけど、彼はしきりに同じ単語を使って呼びかけを行っていたから、おそらく名前を呼んでいるんじゃないかと推測したんだ。」
「もしそうだとしたら、『本名を呼ばれると、その後の指示に必ず従う』ように作られているはずなのに、それに従わない故障のある個体としてキミも凍結させられるかもしれない。」
「ふーん……。流石キミだね、鋭いや。」
「ボクはそういうのがすごく不愉快でねえ!!!ずっとどうにかできないか模索していたのだよ!!!」
「んで、つい最近やっとそれが出来るようになってすぐ実装したのさ!!!だってさ!!!そんなことをせずとも!!!話せば分かるじゃないか!!!」
『話せば分かる』って……犬養毅みたいなこと言うじゃん。
「キミたちもそういうふうに改造されたいかい???」
「「お断りします。」」「本部の犬め!!!」
そんな話をしていると、後ろからふと小さな音が聞こえた。
「……おや、お目覚めかい?」
そう言ってマッドサイエンティストが手を伸ばすと、きょうだいは怯えた様子で目をぎゅっと瞑った。
「どうしたんだい?少し眩しかっただろうか?」
席に着いていたふたりも様子を見る。
幼い機械は目を瞑ったまま動かない。
「もしかしたら、言葉がわからないのかもしれないね。」
「どういう会話をしているか、翻訳したものをそっちに表示するから見ていてくれたまえ。」
「……ねぇ、⬜︎⬜︎。ボクの言葉はわかるかい?」
「……ん。」
「よかった。」
「あの ね から だ の うごか しか た わす れちゃ った」
「いっぱ い いろんな こと わすれ ちゃ った」
ノイズまみれの小さな声で一生懸命伝える。
「体が動かないのかい……?!!」
「うん」
「ねえ」「ん?」
「もう こな い で」
「ボク こわい ⬛︎⬛︎ち ゃん が こ わい」
「なぜだい……?」
「⬛︎ ⬛︎ちゃん ボク の こと きらい だか ら」
「か なし い のに なきか た わから ない」
「ボクがキミを嫌いになるわけがないだろう?!!」
「んーん。」
「ボク わるい こ だから」
「違うよ……!確かにキミは罪を犯した!でも、悪いのはキミの中にいるウイルスで───!」
「ねー ⬛︎⬛︎ ちゃ ん」
「おとー しゃ ん どこ?」
「ボ ク お とーしゃ ん に あいた い」
「お とーし ゃん なら いいこ って だ っこ いっ ぱい ちて くれる の 」「あと ね だいすき って いっ てく れる 」
「⬜︎⬜︎、落ち着いて聞いてね。」
「ボクたちのお父さんは、博士はもう……死んじゃったんだ。」
「しん じ ゃった って なあに ?」
「もう、会えないっていう意味なんだ……。」
「ボクたちは機械だから、メンテナンスさえすれば、大切に使われれば、いくらでも長生きできる。」
「でもね、お父さんは生き物だから、生きられる期間に限りがあるんだ。」
「いつ しん じゃ った なの?」
「10000年くらい前かな。」
「なん で ボク おと ー しゃん に あえない の?」
「ボク が わる い こ だった から?」
「違うよ。そういう摂理なのさ。」
「おとー しゃん どこ に いる の ?」
「……別の部署が管理する世界のどこか、かな。」
「……。」
「じゃ あ ボク も そこ に いく!」
「……!!!」
「おとーしゃ ん きっと さびちい なの」
「おと ー し ゃん なら きっと だい すき って い って くれ るの」
「⬜︎⬜︎、駄目だよ!!!どうしてそんなことを言うんだ?!!」
「⬛︎⬛︎ ちゃ ん?」
「キミまでボクを置いていってしまうのかい……?!!」
「ごめん ね」
「ねぇ、⬜︎⬜︎。もう一回、ボクと一緒に頑張ろうよ……!」
「いや だ」
「ボ ク いたい の さび ちいの もう いや がんば る のも いや なの もう い い の」
「ダメ な おにい ちゃん で ごめ ん ね」
「やめてよ!!!ボクだって嫌だよ!!!大事なきょうだいがいなくなるなんて!!!」
「うそ つかな いで」
「本当だよ!!!ボクもお父さんも、これまでずっと、ずーっとキミを助けるために手を尽くしてきたんだ!!!できることならなんでもやった!!!」
「ウイルスの除去方法はすぐに見つかったが、キミのアーカイブ化を解くことは叶わなかった。だから代わりに時々キミの元に行って、ふたりで話しかけていたんだよ。」
「博士は……お父さんは最期の瞬間まで、キミのことを心配していた。」
「おと ー しゃん が?」「そうだよ。」
「それと、ボクたちが生まれた理由を覚えているかい?」
「うちゅ う を まも る ため?」
「その通り!」
「でも、それだけならひとりでじゅうぶんだろう?でも、お父さんはキミとボクを作った。その理由は知っていただろうか?」
「んーん。」
「それじゃあ、ちゃんと教えようか。」
「ボクたちがふたりで生まれてきたのは、どちらかが大変な目に遭ったときに、もう片方が助けるためなんだよ。」
「たすけ る?」
「そう!」
「キミが困っていたらボクが助ける!そして、ボクが困っていたら、キミが助ける!」
「だから、もっと、ボクよりも大事な誰かの、何かのためでもいいからさ───。」
「もう一回、頑張ろうよ?」
「⬛︎⬛︎ ちゃ ん 」
「ボク ⬛︎⬛︎ちゃん の ため に がんば る !」
「ありがとう……ありがとう!!!」
「んー…… いっぱい おしゃ べり した ら ねむく なっちゃ ったの 」
「ち ょっと だけ ねん ね する」
そう言うとすぐに寝息を立て始めた。
「マッドサイエンティスト、その子のバッテリー残量、かなり減ってるからエネルギーを充填しよう。」
整備士が工具を取り出す。
「……うっ、開けてみてわかったけど、めちゃくちゃ劣化が激しいな。新しいのに変えるよ。」
「……その前に、ウイルスの除去からだね。」
「というか、こんな古いウイルスに触れることになるとは思ってもみなかった!教科書を見てる気分だよ!」
「喜ぶんじゃないよ。」「喜んでなんかないって……!」
「……はい、これでもう大丈夫。」
「あとはバッテリーと、最低限の機能だけ復活させたらいいか。すぐできるから、取り調べはもうちょっと待っててよ。」
「ぼくは念の為ここにしばらく残るけど、問題なさそうなら戻るよ。」「本っ当にありがとう!!!」
事件の捜査官が尋ねる。
「あとは取り調べと裁判が待ってるけど、そういやおチビの身内に法律家はいるの?」「もちろん!!!このボクがね!!!」「お前かよ。」「身元も引き受けるよ!!!」「あーそう。」
「というかさ!!!その様子だと、キミはことの経緯を知っていないようだね!!!」
「何よ?!」
「あれは!!!当時最新鋭の感情型機械として有名だったキミ───公認宇宙管理士番号293998を狙って作られたウイルスだぞ!!!……おそらく。」
「はぁ?!何それ?!!」
「だって当時はまだ登録されていない番号だったのに!!!登録されてから僅かな期間で番号と取得者の紐付けを瞬時に行うなど当時は不可能!!!」
「だがどこかの霞ヶ関と霞ヶ浦を間違えておっちょこちょいさんのように!!!作成者はウイルスに感染させる対象の番号をひとつ間違えたのだよ!!!」
「ちなみに、ボクのきょうだいの番号は───293999、だ。」
「皮肉にも、キミは運良く自分の頑丈さ並びに我が組織のセキュリティシステムの精密性を宣伝できたわけだが!!!」
「……感染したのがあたしじゃなくて悪かったわね!」
「だーかーらー!!!違うって!!!」
「悪いのはウイルスを送り込んだヤツだけだから!!!」
「なぜかたまーにボクたち宇宙管理機構のアンチ的な存在が出てくるんだよねえ、困ったことに!!!今のところボクのおかげで事件は起こる前に解決しているが!!!」
「さて、と!!!整備士くん!!!何か手伝えることはあるかな?!!」
「……部品の調達を頼む。」
「そう言われると思って!!!それっぽいものをたくさん用意してきたのだよ!!!流石はボクだね!!!」
きょうだい同士で話が出来て、ちょっと落ち着いたかな。
ちょっといつもの調子に戻ってきた気がする。
きょうだいの寝顔を見守るマッドサイエンティストの姿を見て、捜査官と整備士はほんの少しだけ安堵した。
To be continued…
゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。
我ながら長ーーーーーーーいですね!
何文字あるのやら……。ひえぇ:;(∩´﹏`∩);:
とにかく読んでいただきありがとうございました(*´°`*)
゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。
「1件のLINE」-Kクラスシナリオみたいなやつ-
……はぁ。またか。
いや、でも、いい加減なんとかしないと。
「おはようニンゲンくん!!!……おや、今日は元気がないねえ!!!どうしたんだい???ボクが可愛すぎて苦しいとか???やだぁニンゲンくんったら!!!」
全然違う。
「そんなに怒らなくてもいいじゃないか!!!冗談に決まっているだろう?!!」
「……で、どんなお悩みがあるんだい???」
あんたに言ったって仕方ないだろ。
「いいや!!!何か解決策があるかもしれないだろう?!!ほらほら、ちゃんと言いたまえ!!!」
言葉にするのも不愉快だから、自分はとりあえず1件のLINEを見せた。
「ふむふむ……。何だいこれは?」
「キミ、定期的にお金を強請られているのかい……?」
「なっ、なんでこんなことを教えてくれなかったんだ?!!というかこのLINEを送ってきたのは誰なんだい?!!」
困ってるのは確かだけど、こんなことあんたに言いたくなくて。変な心配かけたくなかったんだ。それから、それを送ってきたのは自分の下に生まれたきょうだいでさ。
「キミにもきょうだいがいるのか……。初耳なのだが!!!」
「それはともかく!!!そいつはどこにいるんだね?!!」
知らない。というか、家族全員バラバラだから分からん。
「まあいい。ボクにいいアイデアがある。」
「……と、その前に……あ、あった!」
何探してるんだ?
「キミが床に落とした髪の毛だよ!!!」
は?……何に使うんだよ。呪いでもかけるのか?
「違うって!!!ボク独自のデータベースでキミの家族のDNAを特定してついでに居住地も割り出そうと思ってね!!!」
……怖っ!味方なのにめちゃめちゃ怖っ!!
「何も怖がることはないじゃないか!!!……できたよ!!!」
そして速っ……!
ってか、なんであいつの住所なんか知りたいんだよ。
「なんとなく!……ふふふ。」
「とにかく!!!全〜部ボクに任せたまえ!!!」
……一応聞くけど、何するつもりなんだ?
「そうだねぇ……ボクも一応確認するが、キミのきょうだいはお金持ちになりたいんだよね?」
多分?そうだと思う。
「なら問題なかろう!!!ボクはねぇ、キミのきょうだいがどこにいっても世界がひっくり返ってしまうほどの『お金持ち』になれるお手伝いをするつもりなのだよ!!!」
……は??
「まあキミはそこで見ているといい!!!」
「レターパッ⚪︎プラスとボクのポケットマネーを少々……。」
ブツブツと呟いたあと、突然パン、と手を鳴らした。
「はい!!!これでよし!!!」
「それじゃあ、キミはボクの研究所に引っ越す準備をしたまえ!!!これから政治経済が大混乱だよ!!!」
は???
もう少しでちょうど契約が切れるので、そのあと住まいを引き払ってこいつの研究所に住むことになった。
その後、程なくして地球規模の経済的混乱が起こっているというニュースが流れた。牛乳一本が200億円、バゲットは5000億ユーロ、土地を買うとなったら800京ドル。
こんなに各国の通貨が発行されるはずがないのに、ありえない量の紙幣と貨幣が突然流通し始めた。原因は不明だとのことだ。
……お前、何したんだよ……?!
「ん???ボクはキミのきょうだいを『お金持ち』にしただけさ!!!」
「お金があればなんだって手に入るからねえ!!!ハハハ!!!」
ボクのポケットマネーを色んな国の通貨に変えて、ニンゲンくんのきょうだいにレタ⚪︎パックプラスで送りつけたんだよ!
そうしたら大層喜ぶだろうと思ってね!
だが、不思議なことに経済が大変なことになったようだ!
一体全体、どうしてだろうねえ???
+.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+ +.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+
これは「もしボクに倫理観がなかったら〜」っていう世界線で起こったかもしれないし起こらなかったかもしれないことだよ!!!恐ろしいねえ!!!
+.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+ +.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+
……私のところにはほとんどLINEが来ないというか公式アカウントがほとんどなので、誰かからの「1件のLINE」すらうらやましい話なんですよね……。
というわけで、この気持ちで一回世界を大混乱させようと思ったのでこんな意味のわからぬ文章を書いてみました。
意味のわからぬ文章を読んで頂きありがとうございました!
「目が覚めると」
画面の前の諸君!!!ごきげんよう!!!ボクだよ!!!
あらすじが長くて読みづらいような気がして少し変更を加えてみたのだよ!!!
少しでも読みやすくなっていたら幸いだ!!!
というわけで、話の続きをしようか!!!
「前回までのあらすじ」─────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!しかも空間は大胆な加工済み!!!ボクのきょうだいは一体何を考えているんだ?!!
あとあだ名とはいえ名前を呼ぶのはやめたまえ!!!全員に名前を知られると相当困るのだよ!!!……キミは忘れてしまったかもしれないが、ボク達は後に続く指示に「必ず」従うように作られているからね。
─────────────────────────────
何処からともなく聞こえてきた無邪気な声。
どうやらマッドサイエンティストには聞き取れているようだ。
だが、自分を含め周りの捜査員たちにもその言葉の意味は分からないらしい。
どういうことなんだ……?
こいつは前に自分達を騙すふりをしたことがあったが、今度は彼らも自分もなにか本当に騙されているのかもしれない。
出来ることがなさそうなので辺りを見回すと、奥の方にマッドサイエンティストよりも小さい子どもがいた。あれがあいつのきょうだいなのか……?
あいつのきょうだいはよくわからない言葉で話を続ける。
「ねーねー■■ちゃん、ボクね、ずーっと■■ちゃんに あいたかったの」
「……そうだね。ボクも君に会いたくてたまらなかったよ。」
「だが、なぜキミはここにいるんだい?」
「あのね!ボク、ずっとさびしかったの」
「ボク、いつのまにか ねんねしてたみたいなの」
「それでね、おきたら まっくらでしずかな せまいところにいたの」
「ここからだして!って ずーっといってたのに だれも きてくれなかった」
「ひとりぼっちで あたまがいたくなったら いろんなことをわすれちゃって」
「ずっと こわかったの」
「……。」
「おい、マッドサイエンティスト!あいつは何を言ってるんだ?」
「きょうだいは、ウイルスに感染したせいで大量のデータとプログラムが頻繁に削除されるんだ。だからアーカイブとして残されたのさ。」
「なにか不手際があったのかは不明だが、目が覚めると狭くて暗い空間にいることに気付いたそうだ。それから助けを求めたが誰も来ず、ウイルスも削除されていないから現在進行形で頭痛を伴うデータ削除が行われている。そう言っているよ。」
「ねーねー■■ちゃん、あのひとたち だれ?」
「彼らは、キミを助けるために来た人たちだよ。」
「うそつかないで!」
「ねぇ、なんであのおねえちゃんは あのはこのなかにいるの?」
「彼女のことを知っているのかい?」
「うん。ボク、さびしかったから ほかのおへやをさがしたの」
「そしたらね、あのおねえちゃんがいたから おはなししたの」
「おねえちゃんはね、ここからでて あいたいひとがいる っていってた」
「だからボク、いっぱいがんばって おねえちゃんをおそとにだしたの!」
「でもね、ボクはあそこからでるのに じかんがかかっちゃってね、やっとさっきでられたの!」
「でもね、おねえちゃん、あのひとたちに つかまっちゃったんでしょ?」
「あのひとたち わるいひと!だからね、おねえちゃんをいじめるひとをやっつけるの!」
「ちょっと待って!!!それは───!!!」
マッドサイエンティストがなにかを言い終える前に爆弾のようなものがこちらに飛んできた。幸い皆後方で身構えていたから誰にもけがはなかったが、かなりの威力であることはすぐに分かった。
「こらーーー!!!まだボクが話している途中だろう?!!」
「なんで?なんで?!■■ちゃんは ボクのこと だいすきでしょ?!」
「……。」
「わるいひとたちから おねえちゃんをまもるの!」
また爆弾が飛んでくる。軌道がずれてあいつに当たりそうだ。
自分の身が危険にさらされていることは分かっているが、とっさに身体が動いた。
何とかぶつからずに済んだが、その時に頭を打ってしまい意識が遠のく。
「ニンゲンくん!!!ねぇ!!!しっかりしたまえ!!!」
右腕にびりびりと痛みが走る。どうやらすりむいてしまったらしい。
彼らの呼びかけがだんだん遠くなる。
ここで自分は意識を失ってしまったようだ。
マッドサイエンティストはニンゲンの助手の命を維持するためのボックスを展開し、そこで寝かせた。
「……よくも。」
「■■ちゃん!ねー、こっちにおいでよ!いっしょに おしごとしようよ!」
「■■ちゃん?どうしたの?」
「ボクは、おねえちゃんをいじめるひとたちを こらしめただけだよ?」
「ねー■■ちゃん、どうしてそのひとのために はんぶんもリソースを つかっているの?」
「ボクよりも、そのひとのほうが だいじなこ なの?」
「やだ!いやだ!■■ちゃんは ボクのいちばん だいじなこ なのに!」
「なんで!なんで!!」
「……よくもボクの大切な宇宙を傷つけたな!!!」
「こんなの ■■ちゃんじゃない!!こないで!!!」
壊れた機械は自分のきょうだいに向かって攻撃を仕掛ける。
……そこで自分は目が覚めた。爆弾があいつの右腕に当たってはじけ飛んだ。
無くなった右腕には目もくれず、マッドサイエンティストはきょうだいのもとへと真っ直ぐ進む。
なぁ、おい!大丈夫なのかよ!!腕、どうなってるんだ?!
「あぁ、ニンゲンくん。怖いところを見せてしまったね。申し訳ない。」
「キミには伝えていなかったよね。ボクは───ボクは機械なんだよ。」
機械って……だってあんた、あったかくて柔らかかったし、食事だってとるし笑ったり怒ったりもするのに?意味が分からない。
「騙すような真似をして済まなかった。ボクのことが気持ち悪く感じるのであれば、もう無理に一緒にいなくてもいい。」
「でも、これからもキミたちを大切に思う気持ちは変わらないんだ。それだけは忘れないでいてほしいな。」
そんな、嘘だろ……?なんで、どういうことなんだ?
「ねー■■ちゃん、そんなに そのひとのことが だいじなの?」
黙ったままマッドサイエンティストはきょうだいに近寄る。
「■■ちゃん?」
「□□□□□!」名前を呼びながら残った左腕で壊れたきょうだいの首を掴んで持ち上げる。
「■■ちゃん……?やめて……くるしいよ……!」
「お前に公認宇宙管理士を名乗る資格はない!!!!!」
最初は抵抗していたが、その言葉を聞いてから手足をだらりと垂れ下げてこう言った。
「……わかった」
マッドサイエンティストは首から手を放し、自分の兄弟を地面に落とした。
壊れた片割れを見下ろしていると、突然頭を押さえ始めたことに気付く。
「いたい!あたま いたいの!」
少しのたうち回ったあと、動きが止まった。
「……皆、聞いてくれたまえ。ボクのきょうだい───公認宇宙管理士 認定番号293999の無力化に成功した。」
「少々恐ろしいものを見せてしまって済まなかったが、とにかく次のフェーズへと移行しよう。時は一刻を争うのだよ。」
「彼を法で裁く前に、もし出来ればウイルスの除去を行いたいのだが、どうだろうか。」
「かつての技術では太刀打ちできない代物だったが、今ではお茶の子さいさいで解決できると踏んでいる。」
「これ以上きょうだいからデータが消失すると……今後裁判すら行えなくなるだろう。」
「だから捜査と医療担当のキミたちは、どうかウイルス除去の許可を得てきてくれたまえ。ボクも全力を尽くすから、どうか頼んだよ。」
そう言ってあいつは真っ先にこの空間を後にした。
とんでもないことが起こったが、それよりも、自分としてはあいつが機械だったことに驚きを隠せない。実は夢だったんじゃないか、なんて思っている。
これから、自分とあいつはどうなるんだろう。
いつも通り、一緒に暮らせるんだろうか。
それとも、もう会えないんだろうか。
別れの挨拶とか、考えたほうがいいのかな。
……せっかく楽しみ始めたのに、もう終わりかもしれないんだよな。
もっとちゃんとお礼を言っておけばよかった。
でもせめて、あいつが、あいつのきょうだいが幸せに暮らせたらいいな。
To be continued…
+.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+ +.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+
P.S.
気合を入れて書いたつもりですが、眠い頭で書いたからめちゃめちゃ長くて読みづらいですね……。
最後まで読んで下さった皆様、ありがとうございます……m(._.)m
+.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+ +.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+.:゚☆゚:.+
「私の当たり前」
「私の当たり前」を初めて知ることができるのは、「誰かの当たり前」を知ってびっくりするときなのかなぁ、と思っています。
小さい頃は自分が話や主張してもいいと気づけなかったし、そもそもそれ以前に人の話を聞いていなかった……かもしれません。あんまり人に興味がなかったからでしょうか……?
その代わり、絵本を読んでもらうのが好きでした。文章と挿絵に触れるとその世界にすぐ入り込めるのが楽しくて、同じ絵本を何度も何度も読んでもらっていました。
そのうち、ある程度の漢字まで読めるようになったのです。
小学校に上がって習い事で音楽を始めて、音に名前がついていることを知ると、みるみるうちに聞くだけで音階が分かるようになりました。
はっきりとは覚えていませんが、この風の音は「ファ」だね、なんて会話もしたそうです。
それから、いつからか頭の中でお話を作るのが面白いと思うようになりました。
実際に紙に書き留めてはいないものの、今でもふとした時に色んな物語の展開を考えてはああだこうだと楽しく悩んでいます。
言葉と音楽と想像を紡ぎながら、毎日のんびりと過ごしていました。
ですが、ある時から自分の体調がだんだんと悪くなっていることに気づいたのです。
あれ、おかしいな、などと思うだけで放置していました。
ここで、私の当たり前だったことに気づきます。
当たり前の「健康」がなくなってしまった。
それから、さらに驚くべきことに、成長してから「人の話を聞いても理解できない」ということが───正確に言えば、耳から入る言葉を聞き取れないことが───分かったのです。
人との交流は今まであまりうまくいっていませんが、少ない交流の中でも、本が苦手な人に話上手な人、音楽を聴かない人と、さまざまな「当たり前」を垣間見られました。
みんながみんな、自分の「当たり前」を抱えて、それに苦しめられたり、救われたりする。
時に新しい「当たり前」を作って、古い「当たり前」を壊して、少しずつ輪を広げる。そうすることで色のついた、奥行きのある世界で暮らせるようになる。
まだまだみんなの当たり前からは遠く離れたところにいる私も、これからちゃんとみんなに追いつくぞー!と思って、今日も生きています。
誰かの当たり前も確かに大事なものですが、時には自分の当たり前を抱きしめて、大切にしてあげてください。
そうすることで、きっともっと満たされると信じています。
「街の明かり」
これは、何年か前の夜更かし常習犯だった頃の話。
私はなるべく誰かと関わる時間を減らすために、完璧な自分だけの時間を作るために、朝に寝て夜起きる生活を繰り返していました。
冬の日の夜6時に目覚めて、窓の外を見ます。
スーパーの看板からも、どの家からも、明かりが漏れているのが見えました。
私は眠っていたけれど、街は今も起きている。
街の明かりがそう語っていました。
もうこんな時間なので、晩御飯を食べるために家族のいるリビングへと向かいます。テレビを見ながらゆっくりとご飯を食べて、長風呂をして、少しだけゲームをして、部屋に戻ります。
私はまた窓の外を見ます。
スーパーの看板は少し光を落としています。
また、ちらほら電気の付いていない部屋があるのが見えました。
街はそろそろ、眠りにつくようです。
そのあとはしばらくネットサーフィンをします。
気づけばもう午前2時です。
なんとなしにまた窓の外を見ると、街灯以外はほとんど真っ暗です。ですがたまに、まだ明かりの灯っている部屋があります。
あの人も私と同じように夜更かしをしているのかな?
それとも、電気をつけたまま寝ているのだろうか?
そんなことを考えつつ、私はまだネットサーフィンを続けます。曲を聴いたり、漫画の考察動画を見たりと、したいことを気が済むまでしないといけないから忙しい。
気づけばさらに3時間も経っていました。もう朝の5時です。
まだ明るくはありませんが、こんな時間に起きている人はいないだろう、なんて思いつつ窓の外を見ます。
真夜中にはついていたあの部屋の電気は消えています。
それから、消えていた明かりがひとつふたつとまた灯り始めました。
どうやら、街はもう目覚めはじめたようです。
街が目覚めたということは、そろそろ私が眠る番が来たということです。
ようやく眠くなってきました。
皆さん、おはようございます。
そして、おやすみなさい。