Frieden

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「優越感、劣等感」

今日も今日とて学校。低気圧のせいでやたら眠い。
「天気が悪くて気分乗らな〜い⭐︎」とかいうしょーもない理由で友達は欠席。俺は単位がギリだからちゃんと来たってのに。

まーいーや。意外と早く着いて暇だから寝るかー。
ん、そーいや前の席のこいつ、こんな早くから来て何やってんだ?あ、こいつ学級委員とかやってる優等生だっけ?

真面目くんだからどーせ真面目なことやってんだろ。
とか思ってこっそり机の上を覗く。
読書か。つまんねー。

こういう真面目で勉強できるやつ見てると、まるで何も出来ない俺はすげー劣等感でイライラする。別に勉強とかしたところで意味なんかねーのに。

……ま、暇だからこいつの様子でも見てるか。
で、何の本読んでるんだ?

……?!こ、こいつ!!顔色ひとつ変えずに官能小説を……?!!しかも男同士のやつを……!!

もしかしてこいつ……変態か?
いや、もしかしなくても変態だな。うん。
あ、そーだ。放課後暇だし、こいつになんか仕掛けてみるか。

俺は授業もそっちのけで、優等生の背中を見続けていた。

せんせーの説明じゃ内容さっぱりわからんかったのに、こいつのノートには内容とか思ったこととか、きっちりまとめられてる。しかも時々イラスト付き。すげー分かりやすい。

やっぱこういうやつは頭のデキが違うんだな。
ついでに、俺みたいな出来の悪いやつ見て優越感でほくそ笑んでんのかな。というか性格悪くあれ!せめてどっかで勝ちたい!

その後の授業中も、昼休みの間も、俺はこいつを見てた。
丁寧なノート、予習復習、あと難しいこともやってる。
それから、ひとりで飯食って、例の変態みたいな小説読んでた。

こいつずっとぼっちじゃん。友達いねーの?
もしかして「我は下々の民とは付き合わぬ」とかそーゆーあれ?
厨二病の変態??

まー、どれでもいいや。なんか面白そうだし声かけてみっか。
「よぅ真面目くん。今暇?」
「ヒッ!なっ、なななんですか?」

ヒッって言われた。泣きそう。
「お、お金は持ってないので……、その……!」
「いや、恐喝じゃないんだけど。」

「家ここの近くなん?」
「えぇ、まあ……。でも僕の家、そんなお金ないので……。」
これは相当信用されてないな。

「いや、ちゃうちゃう。ちょっと教えてほしいことあってさ。」
「家の間取りとかですか……?」
「空き巣じゃねーから!」

「いや、勉強のことでさ。教科書どっかやって勉強する場所なくてお前に頼んでみただけ。」
「あっ、そうだったんですね。」

「それなら、今からここで勉強しますか?それともうち寄って行きます?」
「んー。教室の冷房切れたからお前ん家行く。」

そんなこんなでこいつの家に向かうことになった。
けど。こいつ、全然何も喋らね〜!
沈黙が長すぎる!でも俺も何喋ったらいいかわからん!!

「きょ、今日はあんまり天気良くなかったよな〜?」
「えっ、あっ、そうでしたね。」
お互い話下手かよ!バカヤロー!

「そーだ。コンビニ寄らね?せっかくなんか教えてもらうのに何もなしで終わらすのどーかと思ってさ。なんかアイスとか奢る。」
「い、いいんですか?」

コンビニに着いた。涼しい!じゃなかった。アイス見よ。
俺はどれにすっかな〜?
「あの、僕これにします……。」

控えめな笑顔でカゴに入れたのは……ハー〇ンダッツじゃねーか!こいつ、世間知らずか?!それともめちゃ金持ちなのか?!!

「あっ、これ選んじゃって大丈夫でしたか……?」
「え?全然?何選んでもいいと思うけど?」
「あの、何かすみません。」

「こういう時はすみませんじゃなくて、ありがとうだろ?」
「あっハイ、ありがとう、ございます……。」

図らずもハーゲン〇ッツを買わされた。
……厨二病で陰キャの変態!こいつますますよくわからん!
不安そうに顔を覗くな!こっちもまあまあ不安だから!

「あの、あれが僕の家です。」
指差す先にあったのはフツーの一軒家。
禍々しい古城とかじゃなくて良かった。

「おじゃましまーす。」
「あれ、誰もいないん?」
「両親は共働きで、夜まで帰って来ないんです。」

「……お茶とか用意するので、僕の部屋で待っててください。あ、部屋は2階の左側にあります。」
「どーも。」

そーだった。ここからが本題だ。本だけに。
こいつの部屋にはなんかけしからん本が沢山あるに違いない。
悪いけどこっそり見させてもらうぞ。

これは……数学の参考書。こっちは……世界史の資料集。
んで、これは……英語の小説?翻訳かけてみるか。……なーんだ、ただの推理小説か。

拍子抜けするぐらい真面目な部屋じゃねーか。
男同士の官能小説は気のせいだったとか?
いやいや、気のせいとかないだろ。

「お、お待たせしてすみません。もしよければ、どうぞ……。」
「ん。ありがと。」

「つーかさー。」「ヒエッ!」
「なんで敬語なん?俺ら同級生じゃん。」
「あ、いや、なんとなく……。」

「アレか?俺が怖いとか?まあ見た目がコレだからな。」
「あ、気を遣わせてしまって、その、あっ……。」

「とりあえず、フツーに話したらいーじゃん?」
「は、あ、うん。」

「あの、そういえば、どの教科のことがわからないんです……の?」お嬢様かよ。
「全部。」「全部?!」

「それよりもさー。お前、男同士のそーゆーの、好きなん?」
「そーゆーの……?」

「アレだよ。⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎とか⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎とか。」
「は……?!!い、いきなりなんですか?!!」

「俺、見ちゃったんだよねー。」
「お前がそーゆー本読んでるの。」
顔真っ赤にして口パクパクさせてる。感情隠すの下手かよ。

「あ、あの、なんでもするので───んっ?!」
俺はとりあえずこいつをベッドに押し倒してみた。
「それじゃー、あーいうの実際に試してみるか。」

「あっ……あのっ……!」
全然抵抗しねーじゃん。意外としてみたいとか思ってるんか?
そのまましばらく見つめ合う。

……体格的に俺の方が優勢だから、抵抗出来ないやつを相手にしてるとすげー優越感に浸れてゾクゾクする。
さて、どーしてやるかな───?

「ダメです!!!」そのつもりはなかったんだろうけど、みぞおちにこいつのヒザがクリーンヒットして悶絶!!
「グハッ……お前……!!」

「まずは、お友達から始めましょう!」
「……この状況で……言うことじゃ……ないだろ……?!」
「よろしくお願いしますね!」

「よろしく……?」
「えーっと、今日は数学の復習からやりましょ……ろうか!」
「ろうか」

何が分からんのか分からんくなってきた。なんだこいつ!
「おーい、ちゃんと聞いてま……る?」
タメ口聞いてもらうにはしばらくかかりそうだな。

とにかく、俺は勉強頑張って、こいつのことをもうちょっとわかるようになっかなー?

7/14/2024, 2:15:05 PM