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7/23/2023, 4:52:20 AM

   「もしもタイムマシーンがあったら」



「ねぇ今から遊び行こうよ〜」
「いや!行かねーから!しつこい!」
大学の校門の前でいかにも陽キャな連中が一人の女に男二人でナンパらしきものを繰り広げている。
「元気だな陽キャ連中は」
横目で見ながら通り過ぎる。連中の声がヒートアップしてくるのが聞こえる。
「はぁ〜損な性格だな…」
1度深呼吸をし校門の方へ戻る。気持ち小走り
「あっ悪い待たせたな、こいつ俺の連れなんで、ほら行くぞ!」
手を取ってその場からすぐに遠ざかる。後ろからは陽キャ共の舌打ちやらなんやら聞こえてくるが無視して歩き続ける。
男共が見えなくなった所まで来た時
「ねぇ」
俺は手を握ている事を思い出し慌てて離した。
「あ〜なんかしつこく言い寄られてるみたいやったから…俺の勘違いやったらすまん…んじゃこれで」
俺は彼女の顔も見ず歩きだそうとした。
「ねぇ待てって」
なんか後ろで言ってるがこれ以上は関わらないほうがいいな、語気ちょっと強いし「余計なことすんな」とか言われそうだし。もう会うこと無いだろうから離脱あるのみ。
俺は無視して歩く速度を早める。それと同時に駆け寄ってくる足音…ふぁ~とした香水の良い香りとともに俺の身体は静止した。
「えっ」
背中にぬくもりを感じ同時に柔らかなものも…これ後ろから抱きしめられてる⁉
「無視すんな!」
そう言って彼女は俺の背中に顔埋めている。
「えっと〜これはどういう状況なんですかね」
「分かんないの!抱きしめてんの」
「そういう事じゃなくて…」
「あんたもしかして私の事わかってない?」
「え〜っと…どちら様?」
「まじでむかつく!!やっと見つけたのに…」
彼女は抱きついてる手を離し俺の顔を覗き込んできた。
「これでも分かんないの?」
近い近い!思わずキスしそうになるわ!
白くて透き通るような肌、髪は艷やかな金色でストレート、肩までのセミロング、整った顔立ち、薄い唇、華奢な身体だが出てるとこは出てるいわゆるモデル体型…いやこんな陽キャな知り合いおらんぞ…と思ったが…1人いたわ…
「理沙?」
その瞬間今度は正面から抱きついてきた。
「遅いし!」
「もう離さないし!」
俺は忘れようとしてた高校時代の記憶を思い出していた。

3/28/2023, 6:55:07 PM

   「見つめられると」


「…緊張し過ぎて…吐きそう…」
「顔色悪すぎですよ先輩…」

衝撃の告白から2日後…
今彼女の家の玄関の前に立っている…
大事な一人娘が同棲したいと言い出し、それを条件付きながら許可した親御さん。どんな親だよおい!
百歩譲って以前から交流もあり顔も知ってる仲ならまだしも、会ったことないどんな人間かも分からんやつとの同棲に先に許可してその後会うって…思ってたのと違ってたらどうすんだよ…
はぁ~これハードル上がってるよね絶対…
俺のことは以前より親御さんに話してたらしく写真も見せてるから絶対大丈夫と彼女は言っているが…

「先輩!緊張するのは分かりますけど、普段通りの先輩で大丈夫ですよ!」
「普段通りって…俺普段コミュ力皆無なんだが…」
「私の知ってる私の大好きな先輩なら大丈夫ですって!」
「…そうは言ってもな…」
「ふふっ行きますよ先輩!」

「ただいまぁー」
「おかえりなさい、〇〇君はじめまして、どうぞ上がってください」
「はじめまして、〇〇と申します」

……………………………

アパートへの帰り道
「先輩今日はありがとうございました!」
「すげー緊張したわ!」
「でも言った通り全然大丈夫だったでしょ!二人共すごく先輩のこと気に入ってましたよ」
「そりゃ良かった、それに親御さんがお前のこと大事に思ってることが心から伝ったわ」
「ん?そんな会話しましたっけ?」

……………………………

今日のためにケーキを予約してあったそうだが取りに行くのを忘れていたということで彼女が取りに行くことになった。
…これ絶対わざとですよね…
いきなり親御さんとフィルター無しで会話って…

「〇〇君、今日は来てくれてありがとう。そして君にはいつか感謝を伝えなくてはと思っていたんだ。」

彼女は俺と出会うまでは家で学校の事など一切話さなかったらしい。1度だけ学校での事を聞いたことがあったそうだが、その時彼女はすごく不機嫌になり「やめて!」と叫んだそうだ。それ以来学校での事は聞かないようにしていたらしい。
それが俺と出会って以来変わったらしく俺との会話や出来事を楽しそうに話すようになり、それに伴い学校での出来事、友達との事を話すようになったと…
そして俺に告白して付き合うようになったときは泣きながら話してくれたこと…
大学受験の際は、娘の成績では難しい大学だったが〇〇君と同じ大学に行きたい一心で必死に勉強し合格した姿を見て娘の心の中で〇〇君の存在がいかに大事なものであるか分かったと…
「もし君が迷惑でなくて娘のこと思ってくれているのであれば私達としては君に傍にいて支えてやってほしい」

…………………………

「俺にはもったいないくらいだ…」
「ん?先輩何か言いました?」
「なんでもねえよ」
彼女は少し不満げに俺を見つめている。
そんな彼女を見ながら俺は静かに決意するのであった。



3/23/2023, 4:39:37 PM

    「特別な存在」


「だいたいこんなところか」

頭にタオルを巻き朝から部屋の掃除に追われている。
こんないかにもみたいな格好、いかにもなセリフを吐いている…それは何故か?

高校から付き合っている彼女と同棲が始まる日なのだ。

無事彼女は俺と同じ大学に合格し一人暮らしを始めるものと思っていたのだが…

彼女が大学に合格したとき大事な話があると告げられた。
受験前半年ほど彼女とほとんど会っていなかったこともあり「まさかな…」と一抹の不安を覚えながら待ち合わせ場所に向かった。
想いを伝えあった駅前の公園。

「先輩遅いです!」
「まだ5分前なんだけど」
「彼女より遅いとかありえないですよ!」
「…なにそのルール初めて聞いたんだけど」
「なんで先輩ちょっとニヤついてるんですか?キモいですよ!」
「うるせぇ」
「冗談ですよ先輩っ」
彼女の言葉にほっとして顔が無意識にほころんでいたらしい。
「で、大事な話って何なんだ?」
「えっと…ですね…あの…とりあえずあそこ座りましょ」
「あ、あぁそうだな」
二人で座ったベンチ、その場所はあの時の…
彼女は座った瞬間、俺に寄りかかり腕を絡めてきた。
お互い同じことを考えていたのだろう…しばらくお互い言葉を交わさずお互いの温もりを確かめ合っていた。

「先輩…私の夢覚えてますか?」
「…あぁ覚えてるぞ」
「それでですね…あのー…そのですね…」
「なんか言いにくそうだな…お前らしくないな」
「……」
「んーそれはお前の夢と関係あるのか?」
「……はい」
「…お前の夢叶えてやりたいし…俺もそうしたいと思ってるが今すぐは流石に無理だぞ…経済的なこととか、いろいろと」
「それは全然全然わかってます!それにちゃんとプロポーズもしてもらいたいですし!」
「お、おぅ」
「じゃなくてですね…あの…先輩と…同棲…したいです…」
「ふぇ!同棲?」
「はい!」
「いやいや…俺は嬉しいけど…親御さんが許さんだろ」
「それがですねー…もう許可はもらってます!」
「マジか!てかどこの馬の骨とも分からんやつとの同棲に許可するってどういうこと!」
「普通そうなんですけど…どこの馬の骨ってわけでもなくてですね…ただ1つ条件がありまして…」
「嫌な予感するわ…」
「…うちの両親と1度会って頂きたくてですね…」
「だよな…」
「ダメですか?…」
「…分かったよ」
「ほんとですか!ありがとうございます先輩!」
嬉しそうな彼女の顔を俺はどうしょうもなく愛おしく感じ強く抱きしめた。

3/16/2023, 5:09:25 PM

    「怖がり」


「先輩!」
「なんだ?」
「先輩ってどこの大学志望ですか?」
「なんだ急に?」
「だって、一緒の大学行きたいじゃないですか」
「まぁそうだけど…」
「えっ先輩素直ですね!そんなに私と一緒にいたいんですか?」
「悪いかよ…」
「いや、悪くないですけど…素直すぎて怖いというか…
恥ずかしいというか…素直な先輩も可愛いというか…」
「なんだよそれ、てか一緒の大学は行きたいが、お前のやりたい事とかで大学決めたほうがいいぞ」
「それなら大丈夫です!私のやりたい事をするために一緒の大学行くんで!」
「俺の志望大学知らないのに、そんでお前のやりたい事って何なんだ?」
「それ聞いちゃいます?」
「自分で振っといて、言いたいんだろ?なんだよ?」
「先輩のお嫁さんです!」
「なっお前なぁ…」
「酷いです先輩!私のことは遊びなんですか?」
「いやそうじゃなくてだな、お前と以外考えたこともないしそうなりたいと思ってるけど…それ今言うか?」
「…」
「何照れてんだよ!」
「照れてないですよ!」
「あーそうかよ」

    
    「星が溢れる」


自分の気持ち
それは分かっているようで分からない。
些細なことで揺れ動くし、ましてや恋心となれば尚更だ。
彼女の気持ち、自分の気持ちを素直に受け入れた途端どう彼女と接していいか分からなくなっていた。

お互い同じことを考えていたのか同時に言葉が出た。
公園のベンチに座り彼女のために買っていたジュースを渡した。
彼女の気持ちを…
どうしてこんな俺を?確かめたかった…もう一度…
卑怯だな俺は…

そんな俺には勿体ないくらい彼女は真っ直ぐで素直に自分の気持ちを伝えて来た。
俺はそんな彼女を見ていることができなかった。自分が情けなくて恥ずかしくて…でも同時に嬉しかった…

「ごめん…」
「えっ…そう…ですか…」
彼女から涙が溢れ出す。
「すいません!私…帰りますね…」
立ち上がろうとした彼女の手を俺は慌てて引き止めた。
「あの先輩?離してください…」
「ごめん、いやそういうごめんじゃなくて…」
抑えていた感情が溢れ出した。涙が止まらなかった。
「お前のこと今まで遠ざけてたこと、お前の気持ち薄々知っていたのに…さっきも今も…また…ごめんな…」
「こんな俺でほんとにいいのか?…」
「先輩がいいんです!先輩じゃないと駄目なんです!」
彼女もまた、涙が溢れ出している。
「こんな俺を好きになってくれてありがとな…」
「俺もお前のこと大好きだ…」
「先輩…もう…遅いですよ…」
俺は立ち上がり彼女をおもいっきり抱きしめた。
「俺…相当めんどくさいぞ」
「知ってます」
「女の気持ち全然分からんし」
「それも知ってます」
「コミュ力もゼロだし」
「私が補うから大丈夫です」
「あと…」
「全部全部!先輩の全部が好きだから大丈夫です!」
「変わってるはお前…」
「先輩に言われたくないです…」

陽ももすっかり落ち少し肌寒い公園で
お互い温もりを確かめ合うよう強く抱きしめあった。
頭上には幾千の星が輝いていた…
その一つ一つが幾千の想いであるかのように…



    「安らかな瞳」


「俺も…お前が好きだよ…」

無意識に出た言葉だった。
慌てて寝たふりをする…
あいつの泣いている声が微かに聞こえてくる…

誰ももう近づけないと決めたのに…
あいつは…そんなことお構いなしに近づいて来る。
でもあいつはあいつで、不安でいっぱいで怖かったのだと今なら分かる。
近づくことで傷付く自分。
遠ざけることで傷付く相手。
結局俺がやっていたことは自分勝手で、自分も相手も誰も何も得るもののないことだったんだ…

抱きついてきたあいつを俺は、素直に受け入れることができた。
俺はこいつのこと…

どれくらい抱き合っていただろう
暫くして落ち着いた彼女の瞳は、とても優しく安らかなものだった。

3/13/2023, 2:14:34 PM

    「ずっと隣で」


図書室に着いた俺は今日の昼休みでのあいつの顔を思い出していた。
あんな顔、するんだなぁ…
当たり前と言えば当たり前で俺の知らないあいつのほうがむしろ多いだろう。
多分他人には見せたくない自分であっただろう。
人は距離が近づけば近づくほど醜い本性を相手に見せてしまう。それを受け入れること、もしくは諦めることもあるだろう、そうやって永い年月を過ごすことができるのが夫婦というものなのだろう。
ただ、学生の自分達にとってそれはハードルが高く故に、
カップルであればすぐに別れるだろうし、友達と思っていたものが距離をおかれはみ出されてしまうこともある。
俺が一度だけした告白…俺は彼女のことをもっと知りたかったし、もっと近づきたかった…自分の欲望を彼女にさらけ出したのだ。
「友達以上には見れない」
彼女は俺の欲望に嫌悪したのだ…これ以上あなたのことを知りたくないし、近づきたくないと…
俺はそれ以来、人との距離を一定に保つことを決めた。
近づかなければ勘違いすることもないし自分の欲望をさらけ出すこともない。
上辺だけの友達、人間関係、大多数の人が忌嫌うかもしれないがそれが一番みなやっていることであり普通なことである。
ただ唯一違うのは、俺はそれを俺に関わる全ての人に対し行うと決めたことだ。
だから俺は歩き出すことを止めた…

そんな俺にいつしかおかしな後輩がまとわりつくようになった。
あいつはひとつ下の学年だが学校ではそれなりに人気がある。いつも明るく元気で人当たりもよくおまけに可愛いと評判だ。俺のクラスの連中も告白がどうとかなんとか話してるのを聞いたことがある。
最初のうちはそんなやつからちょっかいを出され挙げ句に俺の隠れ家まで発見されおもしろおかしくからかっているだけなのかと思っていた。
そして一方的に近づいて来るあいつに嫌悪すら感じた。
あいつと会う回数が増え、会話することが増え、俺に好意を持っていることはなんとなく感じた。
ただ不思議だったのは、あいつは屋上で会うとき普段とは違い会話をするわけでなく俺にちょっかい出すわけでもなく、隣に座りいつも寝ているふりをしていることだった。
あいつもこの空間を心地良いと感じているんだろうか…

そんな日々を過ごすうち俺はいつしかあいつとの空間が距離がとても心地よく感じるようになっていた。

「ヤダ!」
その声を、その顔を見た瞬間俺は全てが壊れてしまう気がした。
壊したくない!これ以上あいつに距離を近づけさせてはいけない。なんとかしないと…

時計を見るとすでに部活が終わる時間となっていた。
考えは全くまとまらずどうすればいいのか分からない。

「ガラガラ」
戸が開く音が聞こえた瞬間とっさに寝たふりをしてしまった。
甘い花のような香り…あいつが隣に座ったのが分かる。
完全に起きるタイミング逃した…

「先輩…好きです…」

言われてしまった…言わせてしまった…

隣に座るあいつの思いに俺の心は揺れ動き始めた。



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