今一番欲しいもの
長い貧困生活の中で私は物欲を抑え込んでいた。貧困生活から幸運にも脱することができたが、欲を抑え込むことに慣れてしまったためか今一番欲しいものと問われると何も思い浮かばない。
強いてあげるならば、トマス・ピチョンの「重力の虹」という本だろうか。上・下巻で1万円はするので図書館で借りようか迷っている。
貧しかった時代のことを思うと、今はとても満たされている。
この先、また状況が変わり経済的に困窮したり、健康に支障をきたすようなことが起これば今の無欲な心境も変わってくるだろう。
周りの人が見たら私の人生は枯れていると思われるかもしれないが、仕事がほどよく順調で、健康で本が読める現在の状況が私にはとても幸せなのだ。
手を取り合って
現代日本で手を取り合って生きるというのは、とても難しい。
自分の身に経済的な困難が起きたときのことを思い出してみると「助けて」という一言が誰にも言えなかった。
他者に迷惑をかけることを恥だと考えていた。
私は運良く問題を解決することができたが、当時は自裁することを真剣に悩んでいた。
私は30代半ばで読書が習慣化し、様々な小説を読むようになった。
ドストエフスキーやユゴーの作品には、極貧の中、登場人物たちが互いを助け合いながら生きていく場面が多々ある。
彼らは生きるために懸命に誰かに助けを求める。そんな彼らの姿に感銘を受けた。
死を望むほどの困難にまた遭遇したときには、生きるために勇気を出して、助けを求めたい。
自殺者数がなかなか低下しない日本において、激動の時代の中を耐え抜いた文学は生きる道しるべになるのではないだろうか。
私の当たり前
私の当たり前は読書だ。
最低でも毎日4時間は読むようにしている。読書を始めたおかげで仕事でも頼りにされることが増えた。何より読書をしている時間はとても楽しい。
読書をするようになったきっかけは成毛眞さんの「本は10冊同時に読め!」を読んで強く触発されたからだ。こんなビジネスマンに少しでも近づきたいと憧れ、読書を始めた。
私は30代の半ばになってから読書習慣が身についた。
最初は専門書を読むには読解力がなく、小説から読み始めた。
毎日読書を始めてから2年が過ぎる頃には、難しい本も自由に読めるようになった。
偶然手に入れた1冊の本が私の生き方を変えた。
街の明かり
友人と喧嘩をした帰り道、街の明かりが私を温かく包んでくれたような気がした。
喧嘩の理由はすれ違いだ。
友人には中学の頃から好きな人がいた。私は友人の好きな人の連絡先を知っていたので、彼女の連絡先を教えて欲しいと頼まれた。
彼女に話し、友人に連絡先を教えて良いか許可を取ったところ、無理だと言われた。
連絡先を教えることを拒否されたのを友人にどう伝えれば良いか非常に困った。
正直に伝えればきっと友人は傷つく。私は友人に傷ついて欲しくなかった。
その気持ちが先行してしまい、「俺が教えたくないから連絡先を教えるのは無理だ」と嘘をついた。
今思えば、素直に話してショック受けた友人の隣にいて励ませば良かったのだ。
友だちの思い出
16歳のころ、友人たちと旅行に行った帰り道、3グループに分かれてヒッチハイクをした。
ヒッチハイクをやったところでうまくいかないだろうと思っていたが、存外成功した。
私たちのグループを含め2グループは優しい運転手の方が拾ってくれた。
だが、残りの1グループは、うまくいかずに目標の車の後ろを走っていたタクシーが止まってしまった。
今でも思い出しては心が温かくなるとても大切な記憶だ。