sairo

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12/8/2025, 9:17:02 AM

その屋敷の灯りは絶えないのだという。
電気が通っている様子はない。玄関先の提灯の灯りや、障子越しに見える灯りはゆらゆらと影を揺らめかしてしる。
不思議なことに、灯りが揺らめく屋敷の中で、人の気配はなかった。
人の話し声も、物音もない。時折微かに、蝋燭の芯が燃える音がするだけだった。

12/7/2025, 9:07:45 AM

きらきらと、煌めく街並みを見下ろしながら、手にした缶コーヒーに口をつける。

「苦っ……」

缶に視線を向ければ、無糖の文字。あまり深く考えずに買ってしまったことを少しばかり後悔する。
今日は朝からついていない気がする。朝食の少し焦げたパン。目の前で赤に切り替わる信号。缶コーヒー。
そして、待ちぼうけ。
小さく溜息を吐く。街の明かりが煌びやかであるのと対照的に、気分は重く沈んでいる。
連絡はない。自分から連絡してみるべきかとも思うが、何となくそれも億劫だった。

「まぁ、イルミネーションは綺麗だしな」

自分に言い聞かせるように呟いて、街の明かりを見下ろした。

12/6/2025, 8:55:49 AM

「あれ……?」

ポストに入っていた白い封筒を取り出し、首を傾げた。
切手を貼っておらず、直接投函されたことが分かる封筒。裏を見ても何も書いてはいない。
ただ自分の名前だけが書いてある封筒に、どうするべきかを悩む。
見ない振りをするべきだろうか。けれど中に入っているものが気になった。
光にかざせば、便箋が入っているのが見える。厚さからして一枚だけだろう。何が書かれているのか、誰が書いたのかが、気になってしかたがなかった。
そっと封を破り、中の便箋を取り出す。
震える指で、便箋を開いた。

12/4/2025, 10:11:06 PM

さく、さく、さくり。
音を立てて霜柱を踏みつけ遊ぶ弟を見ながら、そっと手に息を吹きかけた。
冷たい木枯らしが吹き抜け、体を震わせる。少し前までの暖かさなど欠片も抱かない風と遠い陽に、眉を下げ空を見上げた。
さく。さくり。
小さな足音。落ち葉の道を歩いた時のような、けれども少し違う音に季節が過ぎていることを感じる。
秋は過ぎてしまった。今、ここに在るのは冬なのだと、風や大地が教えてくれていた。

12/4/2025, 8:42:39 AM

手のひらに収まるほど小さな箱。
箱の中に収まる小さな貝殻に、恐る恐る指先を触れさせた。

「なんで……これ……」

忘れることのできない、過ぎた過去が脳裏を過ぎる。
青の海。青の空。白い砂浜で二人、時を忘れて遊んだ幸せな思い出。
宗が苦しくなって、箱を抱きしめ俯いた。

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