sairo

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12/13/2025, 10:03:06 AM

スノードームの中で降る雪を見ながら、小さく溜息を吐いた。
窓の外を見る。青く晴れ渡る空のどこにも雪の気配はない。
逆さまにすれば、ドームの中で雪は繰り返し降り続ける。この家も逆さにすれば、雪は降ってくれるだろうか。そんなおかしなことを考えながら、スノードームを机に置いて、ベッドへと倒れ込んだ。
仰向けで見上げた窓の外。逆さまの空には、やはり雪の気配はなかった。

12/12/2025, 9:42:46 AM

白い月に照らされた道を、無心で駆け抜けていく。
ちらりと一瞥した空には、無数に煌めく星々。今にも落ちてきそうで、ふるりと体を震わせた。
朝はまだ来ない。この道を越えた先にあるのだろう。
足はまだ動く。息苦しさはあるが、我慢できない程ではない。いつまでもここに留まっているよりも、多少無理をしてでも先に進みたい。
きっと、一度でも立ち止まってしまったのなら、二度と走れない気がした。

12/11/2025, 8:23:55 AM

手を繋ぐ。
触れた場所から伝わる熱が染み込んで、互いの輪郭を曖昧にさせていく。
暖かく、愛おしい。泣きたくなるほどの優しい思いに触れて、口元が綻んでいく。

「あったかい」
「うん。とっても暖かい……このまま眠ってしまいそう」

くすくす笑い合う。離れないように、どちらからともなく繋いだ手に力を込めた。

「一緒にいようね」
「一緒だよ。ずっと一緒」

顔を寄せて囁き合う。
小指を絡めるように、ずっと一緒の約束を歌うように繰り返した。

12/10/2025, 3:57:38 AM

震える体を暖めるように、腕を伸ばした。小さな背を包み込む。とくとくと聞こえる鼓動に柔らかな熱を感じ、笑みが浮かぶ。
まるで踊っているようだ。とくとく、とくとくと規則正しいその音を聞きながら、楽しげにステップを踏む姿を思い浮かべる。ふふ、と思わず漏れた声に、腕の中の温もりが小さく身じろいだ。
腕を伝う手の冷たさに、肩が跳ねる。腕から手首を辿り、そのまま手を繋がれた。

「冷たい」

囁きが、空気に溶けていく。手を包まれ、軽く擦られる。

「冷たいね」
「そっちこそ、冷たいよ」

冷たいけれど、暖かい。凍える指先が触れ合えば、そこから熱がじわりと広がっていく。
愛しいその熱に目を細め、ほぅと吐息を溢した。

「帰ろうか」
「もう少し、遊ぼうよ」

くすくすと、笑う声。甘えるその響きに、仕方がないと同じように微笑んだ。

12/9/2025, 1:23:47 AM

ふっと吐息を溢せば、途端にそれは白い氷の結晶となって地に降り注ぐ。

「綺麗だね……」

惚けたような声に、肩が跳ねた。じわじわと熱が顔に集まって、堪らず彼に背を向ける。
恥ずかしい。今まで当たり前だと思っていた行為を褒められるなど、初めてだ。どう反応すればいいのか分からなくて、落ち着かない。

「ごめん。嫌だった?」

咄嗟に首を振る。
嫌ではない。それを伝えなければと思うのに、震える唇からは何も言葉が出てこない。
ほぅ、と溜息が溢れる。

「あ……」

いつもならばすぐに凍ってしまうだろう息は、けれども凍らずに空気を白く染めて消えていった。

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