たまき

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6/9/2023, 4:15:20 PM

#44 朝日の温もり


昼の気温は夏らしくなってきても、
更ければ肌寒さすら感じられる夜。


月の仄かな冷たい光に、
その針が照らされぬよう時計をそっと伏せて。
私たちは眠りを忘れて過ごした。


そうして迎えた朝日と、
毛布のような彼の温もりは、

新しい一日の始まりを教えてくれて。

ぐっと伸びをすれば、
体内時計が朝だ朝だと騒ぎ出すようだった。


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作り話みたいなプラトニックな夜明け。

6/8/2023, 4:45:11 PM

#43 岐路


1 道が分かれる所。分かれ道。
2 将来が決まるような重大な場面。

3 本筋ではなく、わきにそれた道。


人生は選択の連続であり、
選ばなかった道も含めて岐路そのものである。

そして、その中で私は「書く習慣」に、幾らかの時間を割いている。つまり、お題を見たときに自分をネタにするか、連想したものを題材にするか岐路に立たされるのである。

前話「世界の終わりに君と」は後者であった。
世界の終わり=滅亡の図式を回避しようと思い付いたのが、古代にあった地球の形は平面であるという考え方だ。
これを、前話の舞台である地上に雨がない世界に適用したわけである。

私の想像では、ひとつの大陸が浮島のように海に浮いていることになっている。
ついでに大陸から伸びた根のようなものが水分と塩分を吸い上げて地上に供給しているんだ…と、この世界を最初に考えたときからの問題を解決した。

ただ、ネットで調べると近年動画を見て「地球は平面かもしれない…」と考える人がいるとあったので完全な平面はやめておくことにした。雨が1ヶ所でしか降らない設定なのに今更ではあるが。

さて今後は、どんな分かれ道に出会えるだろうか。


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どう書こうが、要は裏話。

6/8/2023, 9:36:48 AM

#42 世界の終わりに君と


「本日晴天、風向きは…と」

航海日誌に書き込みながら、ボクは船長に目を向けた。彼は風に合わせて帆の調整をしている。

「なんだ?言っておくが今日は進むぞ」

「分かってるよ。もうすぐだもんね」

ボクと彼は船で旅をしている。旅といっても、行き先は陸じゃない。

「ああ。この航海でたどり着いてやる。世界の終わりに」

ただ、そこに辿り着けたのは彼の何代も前だから、航海のノウハウも廃れてしまっている。
ボクがこの船に乗ってから数年、手探りながら航海を続けてきた。

ボクと船長が出会ったのは、それよりもっと前-

---

ボクは、船大工の家に生まれた。
でも仕事はあまりない。

というのも、ボクの住む国がある大陸では平和な歴史が続いている。海もはじまりの雨があるだけで、どうもこの世界に他の大陸はないらしいことが伝わっている。

だから、船といえば漁業船か観光船がほとんど。貨物船もなくはないけど、何か物足りない。
そんな日常が続いていた。だけど。

「船を頼みたい」

そう言って入ってきたのは、ボクよりは年上、くらいの若い男だった。

「へえ、どんな船をご希望で?」

「長い航海に耐えられる、小さい船を」

この時点で変なヤツだと分かった。だって漁も観光も長くは海に出ない。貨物船は大きいのが普通。

「お客さん、そりゃあ…」

「他の店では全て断られた。ここが最後なんだ」

さもありなん。だけどこの言葉を聞いて困惑していた父さんの顔つきが変わった。きっとボクも。

「まずは詳し「やってもいいけど、代わりにボクを乗せてよね」

そのときの二人の顔ときたら!

「だが、性別で測るべきではないが女の子だろう?いろいろと大丈夫なのか?」

「悪いが、お客さん。コイツは俺に似て言い出したら聞かねえんだ。腕はいい。長い航海なら整備する人間が必要だろう。乗っけてやってくれ」

「…わかった」

「やった!…で、どこ行くの?」

「世界の終わりだ」

その後ボクたちは、この世界がひとつの大陸と海でできた平面の世界であること、海の沖に降るはじまりの雨よりも、もっとずっと沖には世界の終わりがあることを知った。
さらに、船長の家に代々伝わる書物には、本来は終わりなどない球体であるはずだから、世界の終わりについて調査を進めてほしい、と書かれているとのことだった。

「行くよ、世界の終わりでも、どこにでも」

だってこんなに興奮することがあるなんて!


ここは地に雨無き平なる世界。
海と呼ばれる広き水の、その沖にて天より降り注ぐ唯一は、全てを潤すはじまりの雨である。
さらなる沖には世界の終わりを見たり。


雨に愛を、月に願いを、
世界の終わりに祝福を。

(#29,30と同じ世界)

6/7/2023, 12:01:03 AM

#41 最悪


本当に最悪か、まだそうではないのか。
終わってみなけりゃ分からない。


-こんなに悪いことがあった今日こそ
誰かが迎えに来てくれる-

友達がそんな状態だから行ってみたけど

「あなたじゃない。迎えに来てくれるのは、
もっと違う、もっと凄い人じゃなきゃ」

と言われて断られる。

その後、場に相応しい人-ここでは生き別れの母親だった-が現れて、
主人公は、良かったねと祝福するのである。

とあるアニメの一場面。


空気、つまり人の微細な表情の変化が読めない、
ついでに行間も読めない私は思う。

主人公は、どんな気持ちだっただろう。
友達ってなんだろう。


最悪の状態かどうかは、
その日の最高気温みたいに測れるものではないし、
そもそも気温の感じ方にしたって人それぞれだ。

ただ、そうでないときとの落差が激しいほど、
強く感じるんだと思う。


そうか、私じゃ駄目かあ。
でも、それなら。

変な気を使わないでいいから、
もっと早く言って欲しかったなぁ。

6/5/2023, 5:37:52 PM

#40 誰にも言えない秘密


まあ言えたら秘密じゃないもんね。
そんな捻くれたことを考えながら、
思い浮かんだのは、「おうさまの耳はロバの耳」

ある日。町の床屋が「最近床屋が減ってきてて変だなあ」とボヤきつつ、帽子被りっぱなしで有名な王様の散髪に行ったら、なんと耳がロバだった。という話。

秘密を持つ苦しさを、誰もいない場所に掘った穴へ叫ぶことで発散させていた床屋。
最終的に「バレてるんじゃあ仕方ない」と開き直って帽子を脱いだ王様。

威厳を保つために、自分で髪を切る努力をするより人を◯す方が楽だと考えている王様がこわい。
でも時代を考えると、その威厳こそが王様業には大事だったのでしょう。


誰にも言えない理由は何でしょう?
王様は羞恥心、床屋は職務上の守秘義務。
あとは犯罪、道徳、風潮、こんなところですかね。

私にも言えない秘密がありました。それが重苦しくて、心が潰されそうになったり、こっそり人に漏らしたりもありましたが、
今は「あえて話すでもないことだから言わない」ぐらいになりました。
内容は、ネットからでも個人特定できる時代ですから、決して言いませんけど。

「しない」は自分の自由意思によるものですが、
「できない」はそれに関係のない強制です。

誰にも『言えない』秘密を持ち続けることは、
帽子をひとつ被り続けているのと同じ。
王様のように心に歪みが生じる可能性があるので、ご注意を。

守りたい人がいるなら、
その人に秘密を持たせてはいけません。
床屋のように命の危機に晒してしまうかもしれませんよ。


---

余談ですが、
ウィキでは、ロバ耳の理由は神々が楽器について言い合ってるところに自分の意見を言って怒らせたせい、となっています。
自分を認めてほしくて人を試していたのかも?いやでもねーって話ですけど。

自分が改心すれば下々に受け入れられる(と思っている)ところは、走れメロスと似ているなぁと思いました。

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