#39 狭い部屋
そこが狭いと感じるか、広いと感じるかは、
人それぞれだと思うけども。
たまに見かける、ガレージ内の壁にたくさん道具やら材料やらがある、工房みたいなの。
あれに憧れがある。
まあ、私なんかじゃ片付け掃除がめんどくなって大惨事を起こすのが目に見えているし、
そもそも家にガレージないし、なんなら免許取ったことないし。
でも職人の部屋みたいのに憧れる。
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この部屋には、いったい何人が入れるだろう。
ひとり、ふたり、それから、それから。
いや、ひとりは合鍵を持ったまま出て行ってしまったんだった。
今は、ひとりと、ちいさいのがふたり。
その人たちは我が物顔で居座っているけど、全く嫌ではない。部屋の中は居心地がいい。
部屋を出ると、庭がある。
でも、外側との境に柵がないから、どこまでが庭で外側かは、よく分からない。
庭やその外側には、結構人がいる。そこはそこで結構楽しく過ごせる。
でもやっぱり、庭に立ってるのか外側にいるのかは、よく分からない。
わかるのは、部屋の中にいるのかいないのかだけ。
他の人に鍵を渡そうとしても、うまくいかない。
とても、とても小さな部屋。
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心の距離。
友達って、どうなったら友達なんでしょう?
いくら同じ時間を過ごしても心通ったように感じられないのです。
相手の心の内が分からないのは友達も知人も同じだし、境も分からない。分からないから、みんな同じように大事にすることにしています。
親との適切な心の距離はどれほどでしょう?
人それぞれなんでしょうが。でも私はそれだと知人友人と同じレベルなんですが、いいんですかね。
それ以上の関係、心を預け合うことができる相手というと途端に少なくて。けど、それで充分だと感じている節もあって、なんかもう表面を取り繕ってるだけみたいで余計に救えないなと思っています。
#38 失恋
失恋…失恋か。あれだよね。
お題を見て出てくる言葉がこれでは経験の方もタカが知れてるというものである。それでも考えるけど。
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考えるに、
失恋の辛い気持ちというのは、
きっと、その恋心が死ぬことを悟ったからではなかろうか。
死期を知るといえば、エリザベス・キューブラー=ロスによる否認・怒り・取引・抑うつ・受容の5段階からなる死の受容プロセスというものがある。
私自身の数少ない中で似たような経験を語るなら。
とあるコミュニティ内で、
ある程度は気持ちが通じていると思っていた相手から、もうどうでもいい、抜けると宣言されたとき。
トラブル続きで平穏から程遠い状況だったせいか、
悲しいのに引き留める気力も湧かなくて頷くことしか出来なかった。なんかもう無理だな、と思った。
それでいて、
後になって戻ってこないかと相手の姿を探したり、
相手に怒りを覚えたり、自分を責めては悲しみに暮れたり。
落ち着いて考えられるようになるまで1年ほどかかった。
まあ、こじつけている部分もあるだろうが似た部分もあると思う。
生まれた命はいつか死ぬ。
それが恋でも同じであるならば。
ひとつの恋は、ひとりの人生と同じだけのドラマとエネルギーがある、かもしれない。
よく物語の題材に選ばれるのも納得だ。
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うーん、あんまり上手くないな。
#37 正直
①正しくて、うそや偽りのないこと。
また、そのさま。
③見せかけやごまかしではないさま。
率直なさま。本当のところ。
(goo辞書より抜粋)
ちなみに②の説明は、
おもりを糸で垂らし柱などの傾きを調べる道具や、
桶屋の職人などが使う大きな鉋(かんな)でした。
これはこれで面白いけど、今回は除外します。
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こうしてみると、
正直、とは中々難しい言葉だ。
判定が黒か白かの二択しかないのが特に。
見せかけのない=正しいこと、になるのかどうか。
もちろん偽装はダメなんだけど。産地とかね。
これが人の心のことになると難易度が跳ね上がる。
自分に正直に生きる
正直者が馬鹿を見る
どちらもよく言われる言葉だが、『正直』に対する印象は反対になっている。もう難しい。
ただ、
私としては正直さよりも理性を大事にしたい。
正しさや正義は、人それぞれが持つ物だが、
理性は、
①道理によって物事を判断する心の動き。論理的、概念的に思考する能力。
②善悪・真偽などを正当に判断し、道徳や義務の意識を自分に与える能力。
(goo辞書より抜粋)
と、自分で考えることを重視した言葉だから。
正直品質
理性品質
こんな風に並べてみると、
理性って、何かに慮ってる感じがするんだよね。
まあ、
私自身が正直な人間かというと、
欲望に正直な建前8割の人間だし。
私自身が理性的な人間になれているかというと、
未熟者としか言いようがないんだけど。
『正直さ』は、それで人を傷つけたり傷つけられたりしてきたので、正直ちょっと好きになれない。
#36 梅雨
「梅雨は、一つの季節としても数えられるんだ」
「そうなの?春夏秋冬、梅雨?ってこと?」
疑問符だらけの私の返答に、呆れもせず話を続ける彼。
「梅雨は春でもなく夏でもない感じがするだろ?」
「確かに」
「梅雨は東アジアで見られる雨季で、しかしその雨量や降り方は地域によって異なる」
「つまり…ひとくちに梅雨と言っても、同じイメージを抱いているとは限らない、ってこと?」
「まあ、そういうことだ」
「ふぅん…」
窓に目を向けた。
折しも今日は梅雨を思わせるような雨。
ただ、今そう感じるのは自分だけかもしれない。
ぼんやりと感傷に浸っていると、ん、んっと下手くそな咳払いのような音が聞こえてきた。
「確かに、君と僕は出身地が離れている。梅雨のイメージも当然違うだろう。だが、一緒になってもう長い。これからもここに住むだろう。それなら、きっと梅雨のイメージも一致していくようになる。そう思わないか?」
視線を戻すと、決まり悪そうな彼と目が合った。
彼との、これからの年月を思う。
「…じゃあ、紫陽花見たい、青いの」
「よし。それなら、あの大きい傘を出すか」
そろそろ近くの紫陽花が咲き並んでいるはずだ、と彼が立ち上がった。
ちらりと窓の外に目を向けた。
心なしか先ほどより明るくなっている気がした。
#35 天気の話なんてどうだっていいんだ。僕が話したいことは、
「はぁ?どうだっていい?」
雰囲気も声音も変えた彼女に遮られた僕は、失敗したことを悟った。
第8134宇宙を創世したばかりの新しい神、それが彼女。
創世の試練中に起きたアクシデントがきっかけで試練を乗り越えたという彼女は、見守りにとても力を入れている。中でも『チキュウ』という星が美しくて気に入っていると。
「この豊かな移り変わりが出るようにするために、どれだけ試行錯誤したか!自軸の傾きに自転の速さに…っ」
宇宙の巡りを良くするための調整は限りなくゼロに近いが決してゼロにならないとか、そんなレベルで行う。
アクシデントから創世が始まった彼女にとっては、その調整は難航を極めただろう。
今もヘンセイフウやジリョクなど、僕が作った宇宙にはないものを一生懸命に話している。
君がどれだけ頑張ってきたか、
僕は知っていたはずなのに。
…いや、知っているからこそかもしれない。
「恒星からの距離と衛星の大きさ、それに伴う重力の変化、風の渡りや水の巡りも合わさって、一瞬として同じ姿を見せない。そんな地球ですら、広がり続ける宇宙の中では本当にちっぽけで、でも他の星々の輝きに負けない美しさを持ってる」
怒っていたはずの彼女は、いつの間にか瞳を輝かせて楽しそうに話しはじめている。
それに、それに、と彼女の持つ宇宙のように話が広がっていく。チキュウに限らず、彼女の心を震わせる星は、語り尽くせないほどにあるらしい。
もう、テンキでも何でも好きなだけ話せばいい。
だから僕に、その輝く瞳を向けていておくれ。
口にできなかった想いは、もう少し胸の中にしまっておくことにした。
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土台は#8から持ってきました。