#35 天気の話なんてどうだっていいんだ。僕が話したいことは、
「はぁ?どうだっていい?」
雰囲気も声音も変えた彼女に遮られた僕は、失敗したことを悟った。
第8134宇宙を創世したばかりの新しい神、それが彼女。
創世の試練中に起きたアクシデントがきっかけで試練を乗り越えたという彼女は、見守りにとても力を入れている。中でも『チキュウ』という星が美しくて気に入っていると。
「この豊かな移り変わりが出るようにするために、どれだけ試行錯誤したか!自軸の傾きに自転の速さに…っ」
宇宙の巡りを良くするための調整は限りなくゼロに近いが決してゼロにならないとか、そんなレベルで行う。
アクシデントから創世が始まった彼女にとっては、その調整は難航を極めただろう。
今もヘンセイフウやジリョクなど、僕が作った宇宙にはないものを一生懸命に話している。
君がどれだけ頑張ってきたか、
僕は知っていたはずなのに。
…いや、知っているからこそかもしれない。
「恒星からの距離と衛星の大きさ、それに伴う重力の変化、風の渡りや水の巡りも合わさって、一瞬として同じ姿を見せない。そんな地球ですら、広がり続ける宇宙の中では本当にちっぽけで、でも他の星々の輝きに負けない美しさを持ってる」
怒っていたはずの彼女は、いつの間にか瞳を輝かせて楽しそうに話しはじめている。
それに、それに、と彼女の持つ宇宙のように話が広がっていく。チキュウに限らず、彼女の心を震わせる星は、語り尽くせないほどにあるらしい。
もう、テンキでも何でも好きなだけ話せばいい。
だから僕に、その輝く瞳を向けていておくれ。
口にできなかった想いは、もう少し胸の中にしまっておくことにした。
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土台は#8から持ってきました。
5/31/2023, 11:50:33 PM