#124 イブの夜
イブって、夜って意味も含まれてなかった?
捻くれた思考が先に走る。
ソリ引くトナカイ、
髭もっさりなサンタ、
ロマンチックなデート。
理想的なイブ。
しかし現実は。
今年はパートナーが出張で居らず、
子供も風邪を引いて油モノを受け付けず。
ケーキもチキンも無しとなった。
しかしサンタは来る。
大人の事情を汲んではならぬのだ。
飾り立てた数日だけ明かりをピカピカつけていただけで若干忘れられているツリーの周りを改めてきれいにし、サンタが来るといいねと意識づけしてから子供を寝かしつける。
起きてくるなよ、入ってくるなよと念じながら、
クリスマスツリーの下にサンタはプレゼントを設置。
たまに夜中に起きてしまう為、ドッキドキである。
ツリーの葉に若干隠れるように親からのプレゼントとして小物を差し込み、翌日を楽しみに就寝した。
結果として、
子供はプレゼントを喜んだが、
その際に小物が落下してしまい、
仕込みは中途半端に終わった。
だが、驚きつつ笑う顔。
君たちこそ、私たちのサンタクロースだよ。
存分に遊んでくれ。
#123 寂しさ
寂しさを抱えて夜を過ごす。
ひとりは、寂しい。
でもね、ひとりで居たいの。
あなたと過ごした夜は楽しかった。
ずっと続けばいいなと思っていたけど、
そうはいかないのが人間というもので。
私の楽園は、あっという間に壊れた。
なんで、どうして。
取り戻せないと分かっていたけど、
考えずにはいられなかった。辛かった。
時間が経って、
激情に苛まれることが減って。
代わりに、あの頃が懐かしくて、
寂しいと思うようになった。
そう。
私、寂しさに浸っているの。
あなたがいないなら、ひとりでいい。
寂しくていい。
寂しさが、今の私にとって宝物だから。
#122 眠れないほど
寒い。とにかく寒い。
冷たい布団を冷えた足で温めようとしても無駄な努力というものだ。
湯たんぽを用意するべきだと分かっていたが、一回入った布団を開け放つのも嫌で悪あがきをしている。
雪国ほどではないが、
それなりに寒さが厳しい地方に住んで2回目の冬。
初めての一人暮らしの中、
これまで様々な洗礼を受けた。
引越し初日、水道の契約を忘れて蛇口から水が出ず。
初めての冬では風呂に入ろうとしたら屋外の給湯器が誤作動を起こしてお湯が出ず。
ガタガタ震える取説と懐中電灯を頼りに直した。
2回目の冬の今朝は、顔を洗おうとしたら水道が凍って水が出なかった。
ちなみに水道は近所の人からお湯をもらって掛けたら直った。
…全て水のトラブルだが。
それに比べれば布団に入っていられるだけマシだと自分に言い聞かせながら、
ブルブル体を震わせて熱産生を行おうと試みている。
ある程度温まらなければ眠気なんて来ない。
冬の夜は、長い。
#121 夢と現実
胡蝶の夢。
夢の中で蝶になって、それこそ夢中になって飛んでいたが、目が覚めたら人間だった。
さて、人間の自分が蝶の夢を見ていたのか、実は蝶が本体で、人間の夢を見ていたのか。
どっちが正しいかは知らん。
人間と蝶の形が違うことを区別という。
言い出しっぺは荘子。
あ、そうそうとでも言った風に最後に書かれた区別という言葉が、なんとも心を惑わせる。
この話の意味するところは、ネットで検索してもページによって微妙に違っていて、
夢か現実かはっきりしない様子や人生や人の世の儚さを例えた言葉とされていたり、
その区別にとらわれず本質を見る考えを言うものであったり。
どっちが正しいのかを考えるより、それぞれの前にある道を生きればいいとも。
原文を読むには頭が足りず、解釈をそのまま鵜呑みにするには素直さが足りず。
ただ、この話は荘子の斉物論の最後の方に書かれているそうなので。ここだけ読んだのでは分からない深い意味があるんだろう。
目に見える言葉が全てで
その奥にある意味は
疑い始めればキリの無い夢か
言葉は仮面で
その奥にあるものを見なければ
現実を生きられないのか
どちらが本当か、なんて。
荘子を孔子と何度も書きそうになる、
私の小手先の言葉では表しようがない。
#120 さよならは言わないで
冬はその寒さやイベント柄、人恋しさが募る季節。
だからかな?人付き合いを連想させるようなお題が多い気がします。
---
いくらか年数が経った地球。
気候や地殻の変動により、
地球上の生物は生存を脅かされていた。
人間は、地球と運命を共にすることを良しとせず、
政府は全人類による地球型惑星への移住を謳い、その研究に心血を注いでいる。
AIによる宇宙航海はもちろん、特にコールドスリープ技術は目覚ましい進歩を遂げていた。
しかし、人が集まれば欲望がぶつかり、やがて争いが生まれる。
コールドスリープ開発の第一人者でありながら、醜い争いに辟易し、宇宙船に積み込むよりも地球で眠りにつくことを選んだ科学者がいた。
「なんで!」
「…ごめん」
「そんな、この為にずっと頑張ってきたんでしょ?私だって小夜だから、小夜なら…」
「言わないで。もう、疲れちゃった。あなた以外の人も一緒に缶詰めにされるなんて想像するだけで吐きそうよ」
軽い口調ながら本心を語っていることは、顔を見るだけで分かる。
耐えがたい別れの言葉。
衝撃の大きさに、まともな言葉が出ない。
「それなら、私も…」
「ううん、これでいいの」
「でも」
「それに、先に目覚めた方が迎えに行けるでしょう?」
「ん…うん。そう、だね。…わかった」
先の見えない未来に小さすぎる希望。
引き裂かれんばかりに痛む心。
でも、さよならは言わないで済む。
そのことだけが救いだった。
---
「さよならできる」を狙って、最初はスパルタ教育みたいのを想像していたんですけど、
前回のお題で連想していたハビタブルゾーンに引っ張られました。
じゃない方も、一緒に眠って片方だけ目覚めるパターンよりは、と考えたかもしれません。
幾多に光る星々を眺めて。
想う人が、自分と同じように想ってくれていると信じられるなら。
それは、きっと幸せなことに違いない。
こんな話になったのは、
サン=テグジュペリの星の王子さまのせいかもしれないなぁと本を読み終わって気づきました。