願い続けた終焉に、今更抗う愚か者
罵声にこそ背を押され、軽やかな跳躍を
そうして宙に体を投げ出したなら
因果の滓も届かぬ孤独な星へ
透き通るあなたを連れて、どうか消えないようにと
握り締めた手を、同じ強さで返す熱がある限り
恥じぬ強さと愛しさを
ただ一つ揺るがぬ証明の為、立ち上がれたのだろう
私は今、銀河の波間を漂う亡霊
軋む音色を口遊み、潰えぬ愛を想って揺蕩う魚
あなたを守る岩、あなたが守る花
誰もが黄金の粒子に溶けて旅立ってしまった
あなたもそう、遥か昔
ただ幸あれと願う、私だけを呪った微笑みで
残火の慟哭は今も焼き付いて
せめて私を憎んでくれたならどれほど良かったか
暗闇に身を浸しても尚、この身を焦がす天の瞳
ゆえに私は宙を行く
もはや惑わぬ愛の証明
それは呪いのようで、祈りのようで
永遠をも飲み込む覚悟で、私はあなたのみ望む
慈悲ではなく執着を
博愛ではなく偏愛を
船出の代償に、それ以外の全てを手放そう
光なき旅路は罰に非ず、即ち空劫のしじま
欠片からやがて大輪へ、私はあなたを取り戻す
いつか目覚めるあなたが失意の涙を流しても
宙より暗い海淵に沈んでも
分け合った熱の理由は色褪せないのだから
(どんなに離れていても)
雨上がりの泥濘が引き留める
それでも朧月を追い掛けて
まだ濡れた葉を踏み締める
訪う客を見定める無数の眼
稲妻のような枝に切り付けられても
望むなら差し出そう
赤々と輝く胸を開いて
まるで壊れた映像記憶
見放された物語
微睡む体は薄明を拒むけれど
空に戴く、皓々たる円に惹かれて止まず
朔の夜は切なくて
潭月では満たされず
太陰に胸の奥まで曝け出して
黒焦げになった私を見てほしい
気付けば裸足のまま
逸る心は冷えた体を置き去りに
滲むばかりの月華を摘み取って
私だけを見てほしかった
鈴の鳴る音が聞こえる
私を、私を、私を呼んでいる
枯れた小枝が転がっている
今日の話はここでおしまい
(「こっちに恋」「愛にきて」)
清浄を謳い囲われた透明の檻
目に見えずとも、そこはきっと血と涙で出来ていた
息苦しさに喘いでも
澄ました顔で舞い踊ろうとも
得られる答えは変わらないまま
気紛れに伸ばした手は、熱に爛れて、鳥虫に啄まれ
生まれた頃から太陽に嫌われていた
訳も分からぬ喪失を埋めたくて
塗り潰された誰かを満たしたくて
懲りずに私は水底を蹴る
神々が手遊びに作り上げた小さな世界
捏ねられ生まれ落ちた人形達は
誰に唆されるまでもなく、創造主の真似事を始める
即ち遊戯、盤上から滴り朽ちるまで
遥かな時が流れても、言葉は刃に、指先は弾丸に
飛び交う砲撃で絶えず穴だらけの街ならば
仮面を被らねば一歩も外には出られない
池の隅で泡に揺られ転がるばかり
走り書きの顔では、路傍の花にも立ち向かえない
かつて導いた戦乱の終わり
失った太陽を追い求めるように
私は目を伏せ、冷えた掌から悉くを解き放った
この鎖した心を照らすものなど二度と訪わない
これが、凍えて眠る私への
宿痾とも呼ぶべき白日を落とした罰なのだと
穿つように拒んだのに
叫ぶ心を閉じ込めたのに
何度も何度も、繰り返し傷付けてきたのに
黒い両手がこじ開けて、当然とばかりに応えるから
人々は朝日の到来に背けない
私だって、そう、強引に手を引く黄金の帷を
悪態の裏で胸を弾ませ
射抜く蒼穹はきっと、逆様な心すら見透かして
無垢に笑う
悟りながら清くあり、足掻きながら美しい
私はあなたを、あなたは私を一心に浴びる
あなたは告げる
桜色の唇、燦然と輝く白皙の肌から
幾度擦れ違い、倒れ伏そうとも
二人は定められるまでもなく再会するだろう
それは呪いのようで、契りのようで
いつか世界が滅びても、きっと二人は邂逅する
例え流星の命でも、燃えて示そう
最も古き記憶から、変わらず絶えず灯る光を
(巡り逢い)
音を立てて崩れた夢想の果てに
手を伸ばしても灰すら残らず
失くした愛を紡ぐ詩も、焼けた喉では唄えない
私の声をここに置いていく
遠ざかる足音ではなく、留まる旋律が慰めとなるように
こんなにも、こんなにも
燃え盛るような心を捨てて、私はまだ生きて行く
裏切りは鼻歌のように
小石を蹴飛ばす童のように
蜘蛛の子を散らす稲光
騒めく草原と蝉時雨
咽せ返るほどの境界にて
断ち切れない未練の重石を、私はまだ担いで歩く
振り返ってはならない
まだ、振り返ってはならない
こんなにも、燃え上がるように愛したけれど
共に行くことは出来ない
私はまだ生きて行かねばならないのだから
ここでお別れ
雨はまだ止まないけれど、洞を抜けて
爛れた告白に背を押され
本当にお別れ
空に滲む雲が見える
形を無くして燃え尽きるまで、ずっと愛していくから
私の声をここに置いていく
あなたを置いて、生きて行く
(どこへ行こう)
痛いほど弾ける炭酸によく似ていた
あなたは何もかも受け入れて
薄氷を砕いたその手で、春を呼んで抱き締める
あなたが何も背負わずいられる夢を
並んで草むらにて微睡む優しい幻を
やがて膝が笑っても、私がその背を支えましょう
水浸しになってしがみついたあの日
何気ない雑音を掻き消す、短い一言が永遠に思えた
手を振って交わす、おはよう
そして重なる名前が無冠であろうと
私はとうに誓ったのです
あなたのように受け止めて笑おうと
例え泥に汚れた足でも陽だまりの草原を歩もうと
一度踏み外したならば
刻まれた証は消せないだろうが
私がその背を支えましょう
病める日も、健やかなる日も
そして、死ごときで二人は分たれない
あなた好みの炭酸を飲み干し、星の旅路を拓く
私はとうに誓ったのです
あなたと目覚めたあの日から
天国だろうと地獄だろうと、あなたとならば永遠に
(big love!)