小音葉

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雨上がりの泥濘が引き留める
それでも朧月を追い掛けて
まだ濡れた葉を踏み締める
訪う客を見定める無数の眼
稲妻のような枝に切り付けられても
望むなら差し出そう
赤々と輝く胸を開いて

まるで壊れた映像記憶
見放された物語

微睡む体は薄明を拒むけれど
空に戴く、皓々たる円に惹かれて止まず
朔の夜は切なくて
潭月では満たされず
太陰に胸の奥まで曝け出して
黒焦げになった私を見てほしい

気付けば裸足のまま
逸る心は冷えた体を置き去りに
滲むばかりの月華を摘み取って
私だけを見てほしかった
鈴の鳴る音が聞こえる
私を、私を、私を呼んでいる

枯れた小枝が転がっている
今日の話はここでおしまい

(「こっちに恋」「愛にきて」)

4/25/2025, 11:57:45 AM