小音葉

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4/5/2025, 12:23:36 PM

おやすなさい
閉じる世界に祝福を
万感交到る青い歳月に決別を
別れを告げる唇、眠る貴方と鳴らす最後のノイズ
それだけで良い
膨れた願いに潰れるより早く、舞台へ発つから

二度は無いと思っていた
わざと落とした心を拾ってくれた
貴方に背を向けて、私は飛翔してみせる
まるで断頭台、醜い一羽を晒す光線
それでも、誰より気高く美しく
だって、私は貴方に愛されたから
それ以上は必要ない

鳥になれずとも、蕾のままの想いを乗せて
魚になれずとも、涙の河を遡り
光風霽月の一矢となろう
一人きりのパソドブレで、貴方から旅立つ

さようなら
この言葉を以て、夜明けに散る夢見草

(好きだよ)

4/4/2025, 10:59:28 AM

身体中を這う呪い
望まれる傀儡に、底無しの闇を孕む人形に
ささめく鱗翅は耳障り
冷えた灯火が震えて叫ぶ
音も無く吐き出す渇望
花曇、迷えど消えぬ影一つ
故に、ただ生きたいと

水面に揺らぐ陽光と、空を舞い散る淡い春
縁側に並んで座り、他愛の無い話で転げて笑った
暮れなずむ木漏れ日の記憶
ひとひらの少女が消えてしまわないように

掴んだ指先から溢れて燃え上がる
あなたが選んだ剣の形
天秤を叩き壊した手でただ一人、私の手を取る
焼き払う夢の後先に
小さな苗が出づるでしょう
無垢なる徒名草
例え私に明日がなくとも
曙に見た薄紅の吹雪を、あなたと共に

(桜)

4/3/2025, 12:15:28 PM

二人きり、赤い宇宙を漂う
星屑を瞳に宿した君は美しく
天の川を渡る時は瞬く間に過ぎて
一千年の旅は恐ろしいけれど
約束をよすがにまた会える
そんな夢を見ていたんだ

針山に横たわる僕は
今日も喉に刺さる棘に呻いて
鈍く垂れる醜悪さに飽いた素振り
這いずる蒼白な手は蜘蛛のよう
知らず踏み潰す靴裏を睨んでみては
俯くカンテラになりすます
声は枯れても泉へ歩まず
この首を括っていたのは僕自身だった

夢じゃないよ、と
声がする
流れる塵となって浮上する
僕が、君が

満ちる
迸る、心臓が

極光を捲れば夜明けが駆け込んで
君の見つけた光を拡散して
真昼の宇宙は万華鏡のように
二人の踊る銀河を照らした

速度を増して落ちていく
白い体に火をつけて、金烏玉兎にも勝る凄絶を
世界に焼き付く爆発を
僕らの開闢を刻むとしよう
もう戻れない、戻らない
覚悟は良いかな

(君と)

4/2/2025, 11:36:13 AM

太陽の雫、地に落ちた光芒
幻想より美しい真実があると知った黎明の頃
あなたと過ごした蒼穹の日々
あまりに短かった燦然たる嘉月は
昇る泡より夢のようで
弾けないように、消えないように抱き締めるけれど
焦がれた心が灰になって
もう、届かない
あなたを追い返した掌が、氷のように冷たくなって
まだ伝えていないのに
砕けてしまう
薄れてしまう
幼い頃に見た蜃気楼のように
存在しなかった、なんて、それこそ空事なのに

私が、あなたへの想いが、雪解けと共に崩れて消えて
麓へ流れ着いたのなら、やがて花が咲くだろうか

誰もが忘れた聖なる地にて
枯れた一枝を掬い上げて
どうか今度は連れて行って
重力の檻を超えた先であなたと踊りたい
満月も恥じらう連理の枝となり未到の星まで

まだ暗い寝台で目を覚ましたら
馴染みの絶望が頬を撫で、淡い月へ手を伸ばすよ

(空に向かって)

4/1/2025, 10:36:08 AM

それはまるで瞳を奪う無形の糸
凪の日の鏡面、あるいは鉄の樹海の窓辺から
誰でもないあなたを見つけた
両手に収まる無限の宙
時も空間も越えてどこまでも私を運ぶ方舟
どうにか生まれて息をして
あなたとの出会いを待ち侘びていた
運命と呼ぶ他ないでしょう

初めて空を飛んだ感涙も
地面に叩き付けた憤慨も
泡沫と翳る郷愁も
いつか圧殺した夢幻と狂想さえも
あなたはきっと与えてくれる
知らず私は溶け切って、泳いで渡る無人の庭
ただ一つの安寧、変え難い孤独
息吹く滸とイムソニア
今宵はどうか、手を繋いで
その真っ直ぐな背を撫でるまで離さないでいてね

新しい世界、あるいは失われた世界へ至る鍵
あなたのことを知りたくて
隅々まで繰り返し、摘んで返して降り積もる
雪のように、冷たく優しく包んでほしい
紙の塔に今日も恋する

(はじめまして)

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