猫背の犬

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5/11/2026, 1:07:29 PM

僕が口下手なせいで全然会話が弾まないから君が愛想をつかしてしまうのは当然のことで、後悔の混じった未練を女々しく並べてたってどうしようもなくて、そもそもこんなところで愛を叫んだって一方通行の雑音でしかない。

5/9/2026, 6:51:49 AM

一年前、一年後にはきっとなにか変わっていると思っていた。でも実際なにも変わってなくて、ひたすら平坦でしかない自分の日々になにを期待していたんだろうって思うと、情けなくて眼前の景色が涙で滲む。たぶんきっと一年後も息苦しい虚無の中にいるんだろうなあ。

4/25/2026, 2:33:38 PM

「流れ星に願いを」とキャストが言った。
よくわからんテーマパークに連れて来られて、よくわからんアトラクションもどきに導かれたことで流れ星に願いを言う羽目になった次第だ。
僕は死ぬほど空気が読めない。
僕自身が読めていると思っていた空気は全く別の次元のもので、「こういうときってさ、“普通は”、“大体は”、こうだよね、こうするよね」と思われている暗黙の了解に類するものとは程遠い的外れな物言いや行動をとってしまっているらしい。要するに場面に相応しい所作が著しくできない怪物なのだ。
最初は僕の奇行を天然と言い笑っていた友人も、いつしか鬱憤だけを孕むようになっていってき、よくわからん説き伏せ方で僕を懐柔し、矯正しようと試みるようになった。
「お前のために言ってんだよ、俺しか言うヤツ居ないぞ、俺が言わなくなったらお前は終わりだよ」という具合の叱責をされるゲロみたいな日々が重なっていくごとに、僕は空気が読めなくてもイエスマンになることはできるよなってことに気づいた。
「はい」しか言わないマシーンと化した僕は感情たるものが希薄なっていったけど、無理して空気を読まなくていい日々は格別に生きやすくなった。代償としては十分妥当だと思う。けど、並行に「はい」以外のことを口にすると眉を顰められ、忌み嫌われるという地獄を生み出してしまった。
「——流れ星に願いを」
もう一度、キャストが言った。
催促されているようだったというか実際そうだったんだと思う。こんなテーマパークですら空気を読まないといけないなんて世の中ってマジで窮屈だなって思うのと同時に、ああやっぱ僕は空気が読めないなって再自覚した。
そう、僕は空気が読めない。けど、イエスマンで居るのも辟易としてきたし、流れ星に誓ってこれからは正直に生きようかなって思う。
「みんなが僕よりも不幸になりますよに」
きん、と張り詰めた沈黙に鼓膜が避けそうになる。おかしいね、沈黙なのに鼓膜が張り裂けそうになるなんて。
キャストの呆然とした表情と、僕を囲うようにして並ぶ知らない人たちの「あいつヤバ」っていう視線と、友人の「信じられんねー、なんなんお前」っていう表情に、僕は違和感を覚えた。
どうして僕だけがおかしいみたいな世界に、僕は存在しているんだろう。
みんなが、ひどく苦しみますように。████ように。
それが願いです。
僕だけが生きづらいのなら、みんながどこか違う場所に行けばいい。僕以外のみんなが僕の居ないところに行けばいい。だって僕だけがどこかに行くのはおかしいよ、変だよ、納得できないよ。
世界の偉い誰かさん、平等を再三繰り返す誰かさん、平等なら僕のどうしようもないお願いだって他のみんなの願いと同じように、流れ星は叶えてくれるはずだよね?

4/18/2026, 12:52:05 PM

希望に似た暖色に誘われるようにしてここへやってきたんだけど、やっぱりそれは自分が見せていた幻想だったみたいで、気づけば無色の世界に佇んでいた。
僕という存在がこの世界に取り込まれ、無色つまり透明になったとき、あの人の記憶に残る僕も透明になって、その記憶自体がなかったことになってしまうのだろうか。
いや、そもそも思い出されることのない記憶であれば元より無色であるのと同じなんだけど。
僕はきっとあれだ、アホだ。アホに分類されるんだと思う。その理由は言うまでもなく、この期に及んでも自分自身が透明になる云々の心配より、あの人が僕を思い出すのかどうかとかそんな不毛を孕んでいるから。
ところでそこに隠れて僕の心情を盗み聞きしている君はどう思う? よければ君の見解を聞かせてほしいな。

1/21/2026, 1:02:05 PM

「僕はただ君とって特別な夜をあげたかっただけなんだ」
朝になったらいろいろ面倒なことになって、たぶんこいつと俺はもう一緒に居られなくなる。
俺もこいつもこの街に住んでいけなくなることはおろか、自分を証明する類のすべてをドブに沈めなくてはいけない。
「あーあ、これで来世でも一緒になれないの決定だな」
「なんで」
「こんな悪いことした奴らを引き合わせる神様なんて、絶対に居ないからだよ」
木造の家が炎に飲まれていく焦げ臭さと、徐々に近づいてくるサイレンの音はどのような形態で生まれ変わったとしても、既存の記憶として刻まれていることだろう。
「間違えた間違えた間違えた間違えた間違えた間違えた……僕は、僕はただ特別な……」
夕焼けの色に似た炎の光で照らされた絶望と悲愴に満ちた顔が見れたことが、確かに特別な夜だったのかもしれないと麻痺した脳が思い込む。
「お前は忘れていいよ、俺が忘れないから」
「——っ!」
錯乱した人間の頭をスコップでぶっ叩くって意外と興奮するなんて今日まで知らなかった。
偽造工作にしては荒すぎるかもしれないけど、もう時間がないからこれに関しての罰は、あとからまとめて受ける所存。
痙攣してる体に記憶を真っ白に染めてしまう薬剤を打ち込めば晴れて記憶喪失となり、こいつは一連の被害者で可哀想な青年として明日から扱われることになる。
「はなから二人で居ることなんて許されなかったし、お互いの心の真ん中に鎮座できる方法がこれしかなかったんだよ、ごめんな。まあ、お前は真っさらになっちゃったけどね」
普遍的な「特別な夜」では物足りない俺たちにはこれくらいの地獄がちょうどよかったんだ。
二人同時に耐え難い罰を受けて、いつか骨になって、灰になったときに落ち合える未来に繋がるこの夜こそが特別なんだ。
「——だから、お前は間違えてなんかないよ。ありがとうな」
これから一人きりになって全く知らない朝がやってきても、この特別な夜を忘れない。お前が忘れても、俺がずっと憶えてるから。

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