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11/22/2025, 1:59:57 PM

【紅の記憶】

夕焼けがやけに濃かった日、ふたりは河川敷で缶ジュースを片手に訳もなく大笑いしていた。
部活帰りでも仕事終わりでもなく、ただ「久しぶりに顔出せや。」と誘われて来ただけである。
それなのに、一瞬で昔と同じノリが戻ってきて2人の笑い声は夕空に吸い込まれていった。

赤く染まる空を背景にどうでもいい話で盛り上がって、どちらが先にボールを川に落としたかでまた言い合いが始まる。
肩をぶつけ合って騒いでいるうちに気づけば西の空は真っ赤に燃え、2人の影もやけに長く伸びていた。

「なんかこの色、昔みたいやな。」なんて言ったのが照れ臭かったのか、相手はわざと大げさに笑い飛ばした。
その笑い声に釣られて、自分もつい笑ってしまう。胸の奥がじんわり温かい。
あの頃と変わらない空気が、まだここにある。

陽が沈みかけても帰る気になれず、ふたりは相変わらずワイワイと騒ぎ続けた。
紅に染まる夕焼けはまるで忘れかけていた友情をそっと照らしているようだった。
また近いうちに集まろう――そんな気持ちが自然に湧き上がってきた。

11/21/2025, 1:54:07 PM

【夢の断片】

夜風に煽られながら駅前の階段を上っていくと、ふいに懐かしい声が降ってきた。
振り返れば、昔と変わらぬ笑い方で手を振る友人の姿があった。
互いに歳を取ったはずなのに、目が合った瞬間だけは学生の頃の空気が戻り胸の奥が急にざわついた。

居酒屋に入るなり、あいつは相変わらずの調子で近況をまくし立てこちらも負けじと笑いながら話を返す。
店内の喧騒がいつの間にか心地よいBGMになり、グラスが触れ合うたび遠ざかったと思っていた日々の熱がほんのり蘇る。
冗談を言い合えば、たわいのない会話の向こうに青春の断片がふっとよぎる。
互いに夢を語り合っては、くだらないほどに笑い転げていたあの夜の匂いまで。

帰り道、並んで歩きながらふとあいつが空を見上げた。
街明かりに薄く霞む星を指し、「俺ら、昔こういうとこでバカみたいに夢語ったよな。」と言う。
その言葉に不意に胸が温かくなる。
叶った夢もあれば手からこぼれた夢もある。
でも、こうして笑い合えるならそれらは全部まだ道の途中に散らばっているのかもしれない。

別れ際、軽く拳をぶつけ合う。
何も約束しないまま、それでも「また会おう」という気配だけが、夜の道に静かに残った。
まるで拾い集めた夢の断片が、もう一度つながろうとしているように。

11/20/2025, 2:27:54 PM

【見えない未来へ】

薄暗い居酒屋の奥で、二人の男がテーブルを挟んで大声で笑っていた。
仕事の愚痴が始まれば、片方は必ず大げさな身振りで茶化し、もう片方はそれに乗っかってさらに騒ぎ立てる。
店員が苦笑しながらグラスを置いていくたび、テーブルの上はますます賑やかになり、空いた皿はいつの間にか山のように積み上がっていた。

「なあ、俺らの未来ってどうなるんやろ。」

片方がぽつりと言うと、もう一方はグラスを掲げ
肩を揺らして笑う。

「見えへんもの心配したってしょうがないわ! どうせ行くなら、笑いながら突っ込んでいこうや!」

その勢い任せの言葉が、なぜか胸の奥の重さをふっと軽くする。
酔いのせいだけではない、長年の積み重ねみたいな温度だった。

未来なんて霧の向こうで、形も方向もわからない。それでも、こいつと一緒ならかすかに灯る何かに向かって歩ける気がする。
若い頃のように無茶ばかりしてはいないが、その無茶を笑い声ごと覚えている相手が隣にいるだけで、妙に心強い。

帰り際、暖簾が風にゆれ夜気がひやりと頬をなでた。
二人は肩を並べ、くだらない話を延々と続けながら歩き出す。
見えない未来でも、こいつとなら案外悪くない。そんな確信めいた温かさだけを胸に、笑い声を夜道へ放り投げた。

11/19/2025, 1:33:58 PM

【吹き抜ける風】

放課後の商店街を吹き抜ける風が、二人の買い食い袋をパタパタと揺らした。

「おい、お前それ全部一人で食う気かよ。」

「ちゃうわ。お前がまた途中で欲しがるの知っとるから買っといてやったんやぞ。」

そんな軽口を交わしながら、人混みの中を肩を並べて歩いていく。
風に押されて紙袋が膨らむたびどちらともなく中身を確認し、温かいコロッケや唐揚げをつまみ合う。

「味見ってレベルじゃないやん、お前。」

「風が強い日に食べると旨さ2割増しやわ。」

信号待ちの横断歩道ではレシートが飛び出して、風でひらひら舞うレシートを二人で追いかけ回し、結局どちらも捕まえられずに笑い合った。

「まあええわ。どうせ読まへんし。」

「いや俺は読んだで。お前、また余計なもん買ったやろ。」

「しかたないやん。店員に乗せられたんやって。」

「はいはい、せいぜい乗せられてろ。ばーか。」

やがて公園に着くと、風が木々を揺らしてざわついていた。
ベンチに腰掛け、袋の残りを分け合いながらどちらともなく言う。

「なんか、こうやってダラダラ歩くん好きやわ。」

「わかる。目的なくても、普通に楽しいもんな。」

その肩をまた軽い風が通り抜けた。
ワイワイ言い合いながらも、風みたいに気ままで心地よい時間がこれからも続いてほしいと思った。

11/18/2025, 2:18:19 PM

【記憶のランタン】

夕暮れの匂いを含んだ風が吹き抜けるたび、胸の奥がかすかに揺れた。
仕事帰りにふと立ち寄った河川敷は、子どもの頃に毎日のように駆け回っていた場所だった。
大人になってからは忙しく、思い出すことすら少なくなっていたのに目の前の景色はあの頃と変わらずにそこにあった。

草むらに腰を下ろすと、ふいにいくつもの声がよみがえる。
川に石を投げて誰が一番遠くへ飛ばせるか競って、全員びしょ濡れになって怒られたこと。
夕焼けに染まりながらあいつらと他愛もない話を延々と続けたこと。
あの時間はただただ楽しくて、明日もまた同じように笑えると信じていた。

今になって思う。
何でもない日々ほど、後になってこんなにも温かいものなんだと。
胸の奥にぽっと広がるその光は、確かにあの頃の自分と繋がっていた。

遠くで子どもたちの笑い声が弾む。
その響きに背中を押されるように、心の中で小さくつぶやいた。

——また、あいつらに連絡してみるか。
きっと昔みたいに、大した理由もなく笑い合える気がした。

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