【どこにも書けないこと】
どこにも書けないこと。
好きな人がいること。
家族にも、親友にも言ったことがないこと。
言えるわけもないのだけれど。
どこにも書けないこと。
好きな人が同性だということ。
どうしようもなく好きで仕方ないこと。
諦められるはずがなかった。
どこにも書けないこと。
彼女の未来にはきっと旦那さんがいること。
嫌だと思うけど、幸せになってほしいこと。
だから誰にも言わないと決めた。
どこにも書けないこと。
彼女の優しさに甘えてしまっていること。
離れたほうがいいのは確かなこと。
でも、それでも無理だった。
大好きです。
なんてね。
【霜降る朝】
予定地
【心の深呼吸】
予定地
【落ち葉の道】
かさかさ。
かさかさ。
2つの足音が重なり曲となる。
私と、隣を歩く彼女で。
私の想いのように葉は紅く染まりゆく。
彼女の想いのように空気は冷えてゆく。
決して交わることのない。
彼女が私に振り向くことはない。
私の想いは届かない。
それならば。
せめてもの足掻きを。
これまでも、これからも。
よい友人として。
【手放した時間】
昼下がりの川べりで、2人は相変わらずどうでもいい話をしながらゲラゲラ笑っていた。
仕事のことも、将来の不安も、面倒くさい義理も、気づけばどこかへ消えていく。
こいつといるといつもそうだ。
肩に背負っていたはずのあれこれをぽいっと放り投げてしまいたくなる。
冗談を言えばすぐさま突っ込まれて、また笑いがこぼれる。
バカみたいなやり取りなのに、その瞬間だけは世界の全部が軽くなる。
ふと風が吹いて川面が揺れた。
そのきらめきを眺めながら思う。
大事なものを増やすのが大人になるってことだと思っていたけれど、ほんとは違うのかもしれない。
こうして余計な力を抜いて、手放して、ただ一緒に笑える時間こそが、本当に必要なものなんじゃないかと。
夕陽に染まる道を並んで歩く。
背中は相変わらず丸めたままくだらない話をする。その無防備さがなんだか心地いい。
こいつといれば全部を手放してもいい気がする。
そしてきっとこれからも何度だって——こいつとならそうなる気がしていた。