【霜降る朝】
予定地
【心の深呼吸】
予定地
【落ち葉の道】
かさかさ。
かさかさ。
2つの足音が重なり曲となる。
私と、隣を歩く彼女で。
私の想いのように葉は紅く染まりゆく。
彼女の想いのように空気は冷えてゆく。
決して交わることのない。
彼女が私に振り向くことはない。
私の想いは届かない。
それならば。
せめてもの足掻きを。
これまでも、これからも。
よい友人として。
【手放した時間】
昼下がりの川べりで、2人は相変わらずどうでもいい話をしながらゲラゲラ笑っていた。
仕事のことも、将来の不安も、面倒くさい義理も、気づけばどこかへ消えていく。
こいつといるといつもそうだ。
肩に背負っていたはずのあれこれをぽいっと放り投げてしまいたくなる。
冗談を言えばすぐさま突っ込まれて、また笑いがこぼれる。
バカみたいなやり取りなのに、その瞬間だけは世界の全部が軽くなる。
ふと風が吹いて川面が揺れた。
そのきらめきを眺めながら思う。
大事なものを増やすのが大人になるってことだと思っていたけれど、ほんとは違うのかもしれない。
こうして余計な力を抜いて、手放して、ただ一緒に笑える時間こそが、本当に必要なものなんじゃないかと。
夕陽に染まる道を並んで歩く。
背中は相変わらず丸めたままくだらない話をする。その無防備さがなんだか心地いい。
こいつといれば全部を手放してもいい気がする。
そしてきっとこれからも何度だって——こいつとならそうなる気がしていた。
【紅の記憶】
夕焼けがやけに濃かった日、ふたりは河川敷で缶ジュースを片手に訳もなく大笑いしていた。
部活帰りでも仕事終わりでもなく、ただ「久しぶりに顔出せや。」と誘われて来ただけである。
それなのに、一瞬で昔と同じノリが戻ってきて2人の笑い声は夕空に吸い込まれていった。
赤く染まる空を背景にどうでもいい話で盛り上がって、どちらが先にボールを川に落としたかでまた言い合いが始まる。
肩をぶつけ合って騒いでいるうちに気づけば西の空は真っ赤に燃え、2人の影もやけに長く伸びていた。
「なんかこの色、昔みたいやな。」なんて言ったのが照れ臭かったのか、相手はわざと大げさに笑い飛ばした。
その笑い声に釣られて、自分もつい笑ってしまう。胸の奥がじんわり温かい。
あの頃と変わらない空気が、まだここにある。
陽が沈みかけても帰る気になれず、ふたりは相変わらずワイワイと騒ぎ続けた。
紅に染まる夕焼けはまるで忘れかけていた友情をそっと照らしているようだった。
また近いうちに集まろう――そんな気持ちが自然に湧き上がってきた。