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【見えない未来へ】

薄暗い居酒屋の奥で、二人の男がテーブルを挟んで大声で笑っていた。
仕事の愚痴が始まれば、片方は必ず大げさな身振りで茶化し、もう片方はそれに乗っかってさらに騒ぎ立てる。
店員が苦笑しながらグラスを置いていくたび、テーブルの上はますます賑やかになり、空いた皿はいつの間にか山のように積み上がっていた。

「なあ、俺らの未来ってどうなるんやろ。」

片方がぽつりと言うと、もう一方はグラスを掲げ
肩を揺らして笑う。

「見えへんもの心配したってしょうがないわ! どうせ行くなら、笑いながら突っ込んでいこうや!」

その勢い任せの言葉が、なぜか胸の奥の重さをふっと軽くする。
酔いのせいだけではない、長年の積み重ねみたいな温度だった。

未来なんて霧の向こうで、形も方向もわからない。それでも、こいつと一緒ならかすかに灯る何かに向かって歩ける気がする。
若い頃のように無茶ばかりしてはいないが、その無茶を笑い声ごと覚えている相手が隣にいるだけで、妙に心強い。

帰り際、暖簾が風にゆれ夜気がひやりと頬をなでた。
二人は肩を並べ、くだらない話を延々と続けながら歩き出す。
見えない未来でも、こいつとなら案外悪くない。そんな確信めいた温かさだけを胸に、笑い声を夜道へ放り投げた。

11/20/2025, 2:27:54 PM