【記憶のランタン】
夕暮れの匂いを含んだ風が吹き抜けるたび、胸の奥がかすかに揺れた。
仕事帰りにふと立ち寄った河川敷は、子どもの頃に毎日のように駆け回っていた場所だった。
大人になってからは忙しく、思い出すことすら少なくなっていたのに目の前の景色はあの頃と変わらずにそこにあった。
草むらに腰を下ろすと、ふいにいくつもの声がよみがえる。
川に石を投げて誰が一番遠くへ飛ばせるか競って、全員びしょ濡れになって怒られたこと。
夕焼けに染まりながらあいつらと他愛もない話を延々と続けたこと。
あの時間はただただ楽しくて、明日もまた同じように笑えると信じていた。
今になって思う。
何でもない日々ほど、後になってこんなにも温かいものなんだと。
胸の奥にぽっと広がるその光は、確かにあの頃の自分と繋がっていた。
遠くで子どもたちの笑い声が弾む。
その響きに背中を押されるように、心の中で小さくつぶやいた。
——また、あいつらに連絡してみるか。
きっと昔みたいに、大した理由もなく笑い合える気がした。
11/18/2025, 2:18:19 PM