怪々夢

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2/21/2024, 9:44:48 AM

同情

魔導兵器ウィンガイナー。古代超科学王国が作り出した人型殺戮兵器だ。しかし小国ナーザレが周辺の大国から身を守るためには、この死神に頼るしかなかった。

ウィンガイナーを動かすには、二人の搭乗者を必要としていた。そして私たちは小さい頃より乗り手としての教育を施されて来た。

「アンナとウリス、よく聞きなさい。ウィンガイナーは意思のある兵器、お前たち二人が心を通い合わせ協力しなければ、精神を侵され暴走を始める。かつてウィンガイナーの暴走を止められず国が三つ滅んだと言うぞ。」

私と同乗者のウリナは血こそ繋がっていないが、身長、体重、年齢、全部同じ、見た目もそっくりだ。だけど一番肝心なのは、私たち二人の魔力量が同じであると言うこと。ウィンガイナーの動力には搭乗者の魔力が使われるため、私達が選ばれた理由はその魔力量の高さによるのでした。

私たちは精神を最高に同調させることに成功した時、感情を共有することができる。それを私たちは〝同情〟と呼んだ。

「わー、美味しそうなケーキ!」
「わー、美味しそうなケーキ!」

「チョコレートが口の中でとろけちゃう。」
「チョコレートが口の中でとろけちゃう。」

「また来ようね。」
「また来ようね。」

私たちに秘密はなかった。秘密を持てようはずもなかった。
だから、秘密を持とうとした私が悪かったのだ。

私とウリスはできるだけ一緒に行動するよう言われているがプライベートな時間もある。私は時間が空くと大好きな木彫り人形を見に、木工屋さんに行く。特に、木彫り人形の中にひと回り小さな木彫り人形が入っていて、その木彫り人形の中にもひと回り小さな木彫り人形が入っていて、最終的に人差し指を立てた右手だけが入っているマボローシカというオモチャが好きだ。

「マボローシカお好きなんですか?」

初めてクロノから声をかけられた時、背が高くて堀が深くて大人っぽい人だなと思った。なので、私と同じ十八歳だと聞いた時は二重に驚いた。

「はい、大きさが違うだけの木彫りの人形なんですけど、色んな想像を掻き立ててくれると言うか。」

「分かるよ。これとこれは親子なのかな?とか、魂が分裂したもう一人の自分なのかなとか。」

「そ、そうなんです。」

「僕はよく旅をするので、お土産にその土地の変わったマボローシカを買ったりするんだけど、興味ある?」

「はい、私、この国から一歩も出たことがないので、よその国のマボローシカを見てみたいです。」

「じゃあ、明日この場所にこの時間で再会しよう。ぼくの名前はクロノ。君は?」

「私はアンナ。よろしくね。」

クロノにあった瞬間から私の心は騒ぎだした。寝ても覚めてもクロノのことばかり、そしてなんとかウリスにバレないように出来ないかと思い悩んだ。

私とウリスは好きな食べ物も一緒、好きな音楽も一緒、好きな洋服の趣味も一緒。もしクロノの存在を知ったらきっと恋のライバルになる。

絶対に気取られてはならない。心にさざなみを立てることも許されない。そうした中でウリスとの同調感は下がってしまう。

「アンナどうしたの?心ここに在らずじゃない。」

「ちょっと風邪を引いて体調が悪いだけ。」

明日はクロノに会う日だ。溢れ出る思いを抑え付けなくてはならない。気分が悪いからと言って家路につくと、眠れない夜を過ごした。待ち合わせの時間よりかなり早く家を出たので、木工屋さんに向かう。偶然にも木工屋の前にウリスがいたので声をかけようと思って、「ウリス。」と口から漏れる瞬間、私は身を翻し建物の陰に隠れた。

クロノ。ああ、やっぱり辿り着いてしまったか。
クロノが顔を赤らめて東洋風のマボローシカを渡している。
酷いよ。私にくれるって言ってたのに。私の初恋はこうして終わった。

次の日、ウリスを問いただす。

「昨日、男の人にマボローシカを貰ってたでしょ?」

「ああ、クロノ?いい男でしょ?私、あの人に首っ丈。」

「なんであの人なの?」

「んー、アンナちゃんが好きな人がどんな人か気になって後を付けたのよね。」

やっぱり気づいていたのだ。

「そしたら、凄い良い男じゃない?声をかけたら意気投合しちゃって。」

どんなふうに意気投合したか目に浮かぶ。マボローシカ人形の話でもしたのだろう。

「あの人、私の事が好きだって。アンナちゃんごめんね。だけどアンナちゃんが悪いんだよ。私に内緒で男を作ろうとするなんて、私とねアンナちゃんは一心同体なの。離れちゃいけないの。だからね、私あの人の事を誘惑したの。」

「え?クロノのこと好きじゃないの?」

「もちろん好きよ。だけどアンナちゃんとは比べものにならない。だってソウルメイトだよ。お互いのことを極限まで分かり合えるなんてそんな人間他にない。」

ウリスはクロノの事を振ったらしい。クロノはもう一度やり直そうと懇願して来たけど、私の気持ちは冷めてしまっていた。

それから暫くして、
クロノが逮捕された。

ウィンガイナーの秘密を探るために敵国から送り込まれたスパイだったのだ。この国ではウィンガイナーの秘密はトップシークレットだ。秘密を暴こうとしたものには厳罰が下る。

クロノが処刑されてしまう。その話を聞いた時、私の心は崩れ落ちそうになった。私はまだクロノの事を愛しているのだ
涙が溢れてくる。悲しみに押しつぶされて立つ事ができない。その時だ、ウリスの心が流れ込んできた。

笑っていた。私が悲しみに暮れていると言うのに、あの女は笑っていた。

何が〝同情〟だ。気持ちが通じたって思いは全然別のところにあるのに。

私はウィンガイナーに乗り込むことにした。そう、一人で。
暴走なんかクソ喰らえだ。私はクロノを助ける。例え結ばれことはなくても。

ウィンガイナーを動かすと人々は逃げ回った。
そして流入してくるウィンガイナーの意識。
なんと言う人間への憎悪。私は身を固くし必死に意識の壁を作る。クロノが囚われている牢へと向かわねば。

私は城の壁を破壊すると鉄格子をこじ開けた。

「今のうちに逃げて。」

「その声はアンナか?すまなかった。人質を取られて仕方なくやったことなんだ。」

「同情はしないよ。そんな余裕はこっちにはないんだから。」

「ありがとう、君のこと忘れないよ。」

ウィンガイナー、何でそんなに人間を憎むの?そう言う風に作られたから?だったら私が解放してあげる。

2/20/2024, 9:58:40 AM

枯葉

「私を弟子にして下さい。」

「私は弟子を取らない。」

「でしたら、せめて教えを乞うことはできないでしょうか?」

「これだ。」

そう言うとダリオ老師は1枚の枯葉を差し出した。

「それが我が剣の真髄じゃ、その枯葉を持って修行に励むがよかろう。」

私はプロジア国のシルバー騎士団の団長、カエデル・ドフヨウ。プロジア国で1番の剣の使い手だと自負しているが、38歳を迎え、肉体的な衰えから我が剣に限界を感じていた。

そこで伝説の剣聖ダリオ老師を訪ね、剣の修行をつけて貰おうとやってきたのだ。

先程手合わせして頂いたのだが、私の剣は軽くいなされ、老師の剣が首元にピタリと突きつけられた。私は感動し、すぐに弟子入りを志願したが老師は弟子を取らないと言う噂通り、断れてしまった。

あれから10年経つ。私は枯葉の意味を考える日々を送り、老師の動きを見よう見まねで練習した。

プロジア国は今年、建国200年を迎える。
新しい国王は建国を記念し武術大会を開く事を思いついた。
シルバー騎士団からは私が、ゴールド騎士団からはアーロン・クルテッツ。私よりも20も若く、クルテッツ家最高の逸材と称されていた。

「おい、カエデル爺さん。その歳で俺と戦うのは無謀ってもんだ。棄権したって誰も責めない。俺だって爺さん殺したとあっちや、夢見が悪いわ。枯葉の四つ葉のクローバーに幸運を手にする力はねぇんだからよ。」

我がドフヨウ家の家紋は四つ葉のクローバーだ。それを枯葉だと言って馬鹿にしているのだ。

私は剣を抜くと、体を半身に構えた。脱力して腕をダラリと下ろすと剣だけをクルテッツに向けた。

クルテッツは力任せに剣を振り下ろしてきた。大振りだがスピードは凄い。私は剣を合わせるのを避け、半転しながら前足を引いてかわす。

クルテッツは流れるように剣を切り上げてきた。私は今度は足を引きながら1回転し、振り向きざまに剣を水平に払った。クルテッツは避けることなく鎧で受け止めた。

「枯れ爺いの1撃なんか効きはしないぜ。」

剣を振り下ろし、切り上げる。その単純な攻撃に慣れ始めて先読みで避けようとした時、クルテッツは急に攻撃方向を変え突きを繰り出してきた。

しかし私はその瞬間を待っていたのだ。剣を返して突きの軌道を変えると鞭のように剣をしならせ、兜と鎧の隙間を狙い突いた。

「降参しろ。私が腕を2cm伸ばすだけでお前の命はない。」

クルテッツは手から剣を放し、項垂れた。
私は懐から1枚の枯葉を取り出し、クルテッツの頭上で放す。

「枯葉は青葉に比べて柔らかくしなる。脱力して体を柔らかく保つことで相手の力を利用できるのだ。枯葉だって落ち葉となり土地の養分となって新たな命を育む役目がある。これを機にお前が成長してくれると嬉しいのだがな。」

2/19/2024, 1:23:18 AM

今日にさよなら

私は不眠症だ。布団に入ってその日1日の嫌な思い出をリセットしようとしても、記憶に雁字搦めにされて眠りに付けない。私の心はいつもあの日に帰ってしまう。

2018年2月14日。バレンタインの日に私は彼氏に振られた。
あの日、私が丹精込めて作ったチョコレートケーキはゴミ箱に捨てられていた。ショックだった。

私の彼氏はいわゆるモラハラ男だった。
占いを見たり、自己啓発本を読んだりしていると必ずこう言われた。

「自己啓発本なんてのはな、努力できない奴が、努力しないで済む言い訳を探してて、そこに目をつけた出版社が出してる本なんだよ。」

確かにそうかもしれないと思った。だけど、3年間も一緒に過ごしてて1度も優しい言葉をかけられたことのない私の理解者は、本だけだった。

ゴミ箱に捨てられたケーキを発見した後、どうも記憶がはっきりしない。事故に遭って気を失ったからだ。
最後の記憶は、私と彼が車ごと崖から海に飛び込んで行くところだった。

2重の意味で彼を失って以来、日常は現実感を失い、意志が弱くなり、ふわふわと漂っているような感覚。
元々目立たないタイプの私は一層影が薄くなり、最後に職場に行った時、同僚は1度も目を合わせようとはせず、まるで幽霊にでもなった気分だった。

またあの日の事を考えていた。後悔ばかりが募っていく。
違う結末を迎えられなかったのか?

酷いことを言われたりしたけど、私は彼を愛していた。
背が高く、端正な顔立ちで、穿った事を言う彼のことをクールで格好いいと思っていた。
そのくせ、エクボを作って「かわいいよ。」などと言ってくるのだ。

彼との思い出の地をもう1度巡ってみたい。
今は叶わない夢だけど、解放される日は近そうだ。

「ねぇ、聞いてよ、仕事の同僚がさ、サボってばっかりいるの、同じ給料なのがバカバカしい。」

「そう思うのはお前のプライドが低いからだ。プライドの高い人間はレベルの低い連中の事など気にしない。むしろ同じレベルに下がらない様に努力する。同じ給料でもいい仕事をするのが当たり前なのさ、俺たちプライドの高い人間はさ。」

この言葉が今になって役に立つとは。私の刑期は短縮されて明日仮釈放だ。

だけど、私の心があの日の牢獄から解き放たれることはないだろう。
明日からどうやって生きて行く?とりあえず今日にさようならを言ってみよう。私の心がまたあの日に戻されると分かっていても。

2/18/2024, 6:57:46 AM

お気に入り

僕にはお気に入りの奴隷がいます。ボブです。

ボブは南部から逃げて来た奴隷で、命を狙われているからパパが自分の奴隷にすることによって匿ってあげているのです。

「パパ、6才の誕生日プレゼントはさ、ボブが欲しいんだけど、僕、ボブが大好き。だから所有権を僕に移してよ。」

「エミリオ、ボブは人間だ。簡単にあげたり貰ったりするような事じゃない。」

「でも、ボブは、「私は旦那様の所有物ですから」ってよく言うよ。」

「いいかい、エミリオ、天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと言ってね。本来我々人間は平等でなくてはならないんだ。だけどボブは事情があってね、契約上は私の奴隷と言うことになっているが、私はボブのことを奴隷と思ったことは1度もないよ。」

「じゃあ、シュナイダーとは違うんだね。」

「シュナイダーはペットの犬じゃないか?全然違うぞ。」

天は人の下に犬を造り、犬の上に人を造る。
僕はパパの教えをしっかりと胸に焼き付けた。

「分かったよ、パパ。ボブは諦める。」

「旦那様いいじゃありませんか?私くめは坊ちゃまのことを愛しております。坊ちゃまの奴隷になれるなら本望です。」

「仕方がない、お前がそう言うならエミリオに所有権を譲ろう。」

「ボブ、今日からお前は俺の奴隷だ。だけど人間は平等だからボブが僕の奴隷なら、僕はボブの奴隷だね。」

僕は出かける時、いつもボブを連れて歩いた。
ボブは魚の取り方や、食べられる木の実の種類、黒人の間で流行っている遊びなどを教えてくれた。

「ボブ、ボブにはお母さんがいる?」

「ボブの家族は南部の白人に殺されて1人も残っておりません。」

「そっかぁ、僕のママはね、病気で亡くなっちゃったの。だけど今度パパが再婚するから新しいママができるんだ。僕、新しいママなんかいらない。ボブが僕のママになってよ。」

「坊ちゃま、母の愛情と言う物は決して男には与えられる物ではごさいません。最初は不安でしょうが、新しい奥様も坊ちゃまのことを愛してくれますよ。」

「ねぇ、奴隷から解放してあげようか?」

「滅相もありません。」

継母は、表面上は僕のことを愛してくれているようだった。だけどボブを見る時、その目に冷たい光が宿っているのを僕は知っていた。

ある時、事件が起きた。
継母が大事にしていた花瓶が割られていたのだ。

「ボブ、これは君がやったのかね?」

「いいえ、旦那様、私には関わりのない事でございます。」

「お前が割るところを見た者がいるのだぞ。」

「そんな馬鹿な、どなたがそん事を仰っているのですか?」

「黙れ、ボブ!奴隷の分際で口答えするな。」

やっぱりな。パパも所詮人間だ。人は人の下に人を造りたがる。

「父さん、ボブは僕の奴隷です。父さんの奴隷ではありません。それにこの花瓶を割ったのは僕です。母がボブをいじめるので腹いせに僕が割ったのです。ボブの所有権を僕に移しておいて良かった。父さんには、人間を平等に扱う心がなさそうなので。」

パパは俯いてしまった。

「ボブ、僕の部屋に来てくれ、話がある。」

僕はボブを連れ立って自分の部屋に向かった。

「坊ちゃま、なんであんな嘘を付いたのですか?」

「ボブは人はみな平等だと思う?」

「坊ちゃま、私は頭の足りねぇ奴隷でございます。ですがこれだけは分かっております。平等を信じている連中は頭のおめでたい連中です。」

「僕もそう思う。奴隷の身分から解放されたいかい?」

「とんでもございません、私みたいなもんは奴隷でいた方が安全なんです。」

「僕もそう思う。」

だけど僕の行動は継母の敵対心を助長するだけだった。
フラットワイヤー家に最悪の事態が訪れる。
他人の奴隷であると知りながらボブとの奴隷契約を違法に結んだとしてパパが訴えられてしまったのだ。
ボブを引き渡さなければパパが逮捕されてしまう。

「ボブは僕のお気に入りです。手放すつもりはありませんよ。」

「分かっている。自分の保身のためにボブを手放す気はない。」

「だけどパパが逮捕されたら、いったい誰があの女からボブを守れるんです?」

「それは・・・」

「パパ、僕はボブを諦めます。だからパパもお気に入りを1つ諦めて下さい。」

「分かった。エレーヌとは別れよう。」

僕はすでに涙が止まらなかったが、ボブには僕が直接伝えなくてはならない。

「ボブ、事情は聞いているかい?」

「はい、お坊ちゃま。」

「僕のせいだね、解放するチャンスはいくらでもあったのに、お気に入りを手放したくなくて、先延ばしにしたせいで、結局ボブを手放すことに。ごめんねボブ、ごめんね。」

「ボブは坊ちゃまの奴隷でいられた日々をとても気に入っております。」


2/17/2024, 2:51:13 AM

誰よりも

鏡に写る自分の姿を見て誰よりも美しいと思う。
そして狂おしい程に自分を愛している。

何人もの女と付き合ったが、出来るだけ私に似ている女にした。そうして私に似ている選手権を勝ち残って優勝したのが今の妻だ。そんな私と妻の間に娘ができた。当然私に似ている。だが、妻も娘も結局私ではない。例えば私に瓜二つの人間を10とすると、妻は5で、娘は4だ。私は妻を5愛しているし、娘を4愛している。

それは突然だった。会社から駅に向かう道すがら、私に瓜二つの男が前から歩いてくる。私は目で追ったが、その男は私を無視して歩いて行ってしまった。私は追いかけると、男の前に回り込んだ。

「なんで無視する?」

「当たり前だろ?自分そっくりの男に会って嬉しいか?」

「私は嬉しい。」

「お前ナルシスト野郎か?自分そっくりの俺に抱かれたい口だろ?」

「抱いてくれるのか?」

「ついてきな。」

男の部屋に通されると一瞬で性癖が分かった。壁にかけられる手錠や鞭。

「服を脱いで、ベットに上がりな。」

両手を手錠で拘束され、目隠しで視界を遮られ、裸で四つん這いになる。

ヒュン。風を切る音がしたかと思った瞬間、ムチの衝撃が地肌に走った。
私が私を痛め付ける快感。股間がドクンと言って血が流れ込んでくる。目隠しで確認することはできないが人生最大の勃起をしているに違いない。

「おいおい、1発貰っただけでフルボッキかよ。自分ばかり楽しんでないで俺のも楽しませろ。」

手錠された手で男の股間を探り当てると、男のペニスを咥え込んだ。


幸せな時間だった。時間はあっという間に経って、男は満足して寝てしまった。スマホには心配した妻からの履歴が残る。

「残業して遅くなった。今から帰る。」

帰宅すると妻が擦り寄ってきた。

「心配したよー。今日は早く帰って来るって言ってたのに。今晩いいんでしょ?」

今、私の体にはムチの跡や、ロウソクの跡、縄で縛られた跡などが残っているだろう。夫婦生活が終わるかも知れない。しかしどうでもよかった。むしろ全てを公にした上でこの女を痛めつけたいと思った。

女をベットに押し倒すと無理やり服を脱がせた。

「ワイルドなあなたも素敵ね。」

しかし、この女の余裕も、前戯もしないで挿入しようとすると悲鳴に変わった。

「痛いよ。やめてよ。」

「五月蝿い、雌ブタが。」

女の臀部を激しく打ち鳴らす。

「いやー。」

女の姿を1時間前の自分の姿に重ねる。初めて女を可愛いと思った。女のお尻は真っ赤に腫れ上がっている。私は精魂尽きるまで、腰を打ちつけ続けた。

「あなた、もっとちょうだい。もっと痛めつけて。」

初めて私に愛されている喜びが女を雌ブタにさせていた。恍惚の表情を浮かべて、私からのご褒美を待つ姿は凄く醜いと思った。

そして女の醜い姿を自分に重ねることで、人生で初めて自分のことを嫌いになることができたのだった。

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