三日月

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12/12/2022, 9:07:23 AM

何でもないフリ

|澤田美鈴《澤田みすず》は大学二年生で、学校近くの本屋でバイトを始めたところ、一つ先輩で、同じ大学の三年生|歌川龍斗《うたがわりゅうと》と知り合う。

歌川龍斗は細マッチョで、スタイルが良く長身のイケメン、そのため女の子のモテるようで、この本屋は学校の最寄り駅直結のデパートの中にあることもあってか、毎日のように用も無いのに、歌川龍斗先輩のバイト先まで同じ大学の生徒がチラチラとやってきては見て行く。

「歌川先輩は女の子から人気者なんですね、彼女は居ないんですか!?」

ある日のこと、澤田美鈴は、歌川龍斗先輩と付き合いたいという想いがあった訳ではない、それなのに一緒に本を棚に下ろしている最中、ただの興味本位から彼女がいるのか質問していた。

「うん、今は居ないかな…………もしかして、澤田さん彼女いるかどうか気になってたの?」

「歌川先輩があまりにも、モテるのと、バイト中に裏でこっそり告白されてるのを見ちゃったんです、でもその時断ってたので、彼女がいるのかなって思って…………すみません、そんなの確認して」

「別に確認してもらって大丈夫だよ、気になったんだろ…………」

「はい、気になっちゃいました」

「正直で宜しい、そうだね、少し前に彼女がいたんだけど、まだ別れたばかりなんだよ。  だから、未練があるとかじゃなくて今は彼女は要らないかなって思っててね。  でも、澤田さんが気になったのは嬉しかったな、どう、付き合ってみる?」

突然、それもバイト中にそう言われた澤田美鈴は身体が硬直したかのように動きが止り、暫く二人の間に沈黙が続く。

どれくらいの時間が経過したのだろうか、その後、澤田美鈴は歌川先龍斗先輩の目を真っ直ぐに見ると「うん」と首を上下に振った。

こうして二人は付き合うことになったのだけど、ある日のこと、友達から歌川龍斗先輩がSNSで彼女のことを書いているのがあると知らされたのである。

それも、私のことではなく、別の女性で…………。

調べていくと、その女性が元カノだと言うことが分かってしまい、澤田美鈴は動揺し凄く困惑していたので、そんな落ち込んでいる美鈴は友達から、二股のようなことをする彼とは別れた方が良いんじゃないかと説得されることに。

ところが、澤田美鈴は歌川龍斗先輩に依存しているのだろう、別れる何て選択は自分の中になかったので、失いたくない一心で何でもないフリをしてしまった。

そして、二股しているのを容認してしまったのである。

それから半年が経過するものの、歌川龍斗先輩の二股は終わっていない。

それでも、澤田美鈴はまだ別れる決心に至っていないので、先輩が戻ってくることを信じながら付き合っていという。

いつか澤田美鈴が幸せになれますように。

















12/10/2022, 12:01:28 PM

仲間

高校生だったはずの|松本勇《まつもといさむ》は、人付き合いが苦手で友達仲間を作れないまま、自転車を走行中、スピード違反のトラックに跳ねられ死亡する。

ところが、次に目を覚ますと、松本勇は知らない場所にいて、鎧を着ていた。

よく分からないまま、草原らしきところを歩いていると村らしきところにやってきたので、ここが何処なのか尋ねることにした。

すると、何故か松本を見た村人達は歓喜の声を上げ、そして長老らしき人に連れられ、着いていくと、その家は長老の家らしく、その家でお・も・て・な・しされることになる。

暫くすると村人達がこの家に集まっていて、長老らしき人が話し始めた。

「勇者様、来て下さりありがとうございます」

「あの、勇者様とは!?」

「貴方様のことでございます。  腰に刀がおありですよね」

そう言われ確認すると、この村に来るまで何も無かった腰に刀がある。

「それで勇者様、西の大魔王とやらを倒してくださるとのことでありがとうございます」

長老らしき人がそう言うと、村人は皆頭を下げる。

「ちょっとそれは··········」

「明日出発でしたね、お仲間も次の村でお待ちかねですので、よろしくお願いします」

断ろうとしてるのに断れなかった。

仕方なく次の朝、次の村に向け出発をすることに。

どれくらい歩いただろうか、言われた通りの道をただひたすらに歩くと夜までに次の村に到着した。

仲間と言われても困るよなと松本が思っていると、到着した途端、村人人達がまた歓喜の声を上げ、そして仲間らしき人を三人連れてきたのである。

すると自己紹介が始まった。

「魔法使いの|松本薫《まつもとかおる》女です」

「弓使いの|松本浩一《まつもとこういち》男です」

と言ってきたので、松本勇も自己紹介をする。

「勇者の|松本勇《まつもといさむ》男です」

寄りにもよって皆松本とはどんなパーティーなのだろうか。

「では、明日出発しますので、ご飯を食べて今日のところは寝ましょう」

魔法使いの松本薫がそう言って、寝床として使わせてもらえる家に案内してもらう。

そして次の朝、松本パーティーは出発することになる。

ところが雑魚敵らしきスライムが出てきても、戦い方の分からない勇者松本は苦戦する。

何体も倒しながら進むものの、一人だけLvすら上がらないし、戦い方も上達していかない、それに話す内容も無いので会話も自分からは極力しない日々が続いていた。

ところが優秀な仲間のおかげで、寝床の確保と食事については何とかなったのである。

弓使いの松本浩一は釣り名人らしく、何匹もの魚を捕まえ調理してくれたからだ。

そして次の日も更に次の日も、西にある魔物を退治するべく松本パーティーは進んでいたのだけど!

「あの、申し訳ないけど、勇者松本勇をこのパーティーから追放します」

突然、ある日の朝魔法使いの松本薫がそう言った。

「今までありがとうございました」

次に弓使いの松本浩一に頭を下げられる。

「あの、何で突然追放なんですか?」

勇者松本勇は今の状況に対して訳が分からない。

「もう仲間ではないので自由にして下さい」

魔法使いの松本薫はそう言うと弓使いの松本浩一と二人で歩き出した。

このままでは生きていけそうにないと思った勇者松本勇は、二人を追いかけ、もう一度仲間に入れて欲しいと祈願することに。

「あのですね、一緒にいてもこのパーティーは魔王に勝てません!  勇者松本勇はLvもずっと1のまま、何のスキルも無いので戦いに向いてませんよ。  それに、仲間と思ったことありません」

はっきり弓使いの松本浩一に言われてしまった。

一体今までのはなんだったと言うのだろうか。

その後、勇者松本勇は勇者を辞めて村人になることにした。

コミュニケーション能力があれば、強くなる方法を仲間に聞いたり、どうやってスキルを手に入れるのか聞けたかもしれないのに…………。

元々、人付き合いの苦手な松本勇には村人の方が向いているということなのかもしれない。

こうして次の村に戻り勇者松本勇は勇者を辞めて村人の仲間に入れてもらった。

ところが松本勇には共に暮らす仲間すら出来ていない。

結局松本勇は何年経とうと仲間を作れないままのようであるが、それでも何とか幸せに暮らしているという。

元々のスキルがないと、何処に行っても仲間が作れないというのは本当らしい。

コミュニケーション能力は育ってきた養育環境で身につくものなので、松本勇の育った家庭環境はきちんと機能していなかったのだろう。

こうして松本勇の異世界での人生も幕を閉じた。

次生まれる時は機能している家に生まれることを願いたい。

12/10/2022, 10:58:43 AM

手を繋いで

|夏菜子《かなこ》はミディアムヘアで何時も明るくポジティブ思考の女性で、友達も多く、クラスのムードメーカー的存在。

それに対して、|真守《まもる》は消極的なところがあり夏菜子とは正反対のネガティブな男性。

そんな二人なだけに噛み合うことはないと誰もが思っていたのに、夏菜子と真守は文化祭をきっかけに話すようになり、夏菜子は真剣に物事に取り組む真守の姿に惹かれていった。

出し物として作った喫茶店の看板やメニュー表、それに教室の飾り付けなど、真守のセンスの良さは際立っていたので、この学校での一番人気を獲得する。

そして迎えた後夜祭の時だった、誰もが予想だにしていなかった展開が巻き送ることになった。

夏菜子が学校の生徒学全員ででキャンプファイヤーをしている時、真守への気持ちを伝える為、皆の見ている前で告白をしたのである。

それも、二年生の夏菜子と真守は、同級生、年下の生徒、先輩方に先生方のいる中での告白劇だったので、皆の視線は二人に集中することになり、多いに盛り上がりを見せた。

「真守くんの真面目なところに惚れました。  私と付き合ってください」

「こんな僕で良ければ、どうぞよろしくです」

こううして、自由恋愛の出来る学校だったこともあってか、先生方からは、付き合い方はしっかりした責任の元しないとだけ忠告を受け、付き合うことになった。

ところが、付き合って一月経過するのに、夏菜子は真守とは手を繋がない。

ハグやキス等のスキンシップはしっかりあるのに、繋ぐと手に汗をかいてしまい、それが嫌なのだという。

ところが半年を過ぎた頃のこと。

「手を繋いで!」

街中を歩いている時、夏菜子は真守の耳元でそう言って、自分から手を繋ぐ。

それからは今までが嘘のように毎日何処へ行くにも手を繋いで歩くようになった二人だった。

それなのに、この日から一週間後、夏菜子は突然入院することになってしまう。

夏菜子から告げられたのは白血病だということだった。

真守と離れるのが嫌で、「手を繋いで」と言ってくれたらしい。

白血病とは、赤ちゃんから老人まで誰もがかかる病気。

病気に行く前日、ポジティブな夏菜子からは、もう無理かもしれないとネガティブなことを告げられていたので、頑張ってと言えない真守は、「手を繋いで!」と言って手を握りしめた。

ーーそれから五年後

「手を繋いで!」

待ち合わせ場所に行くと、既に先に来ていた夏菜子が真守にそういった。

夏菜子は治療の末、奇跡的に生きながらえたのである。

「無理しなくても良いよ」

「ううん、真守くんと手を繋ぎたい」

未だ結婚はしていないけど、二人の交際は順調に続いている。





12/8/2022, 11:07:20 AM

部屋の片隅で

中目黒にある1Kに住んでいる私のアパートの家に、度々休みになると彼氏が泊まりに来る。

ところが最近は平日なのに彼氏が泊まりに来るようになり、気付けばいない日が無いんじゃないかって頻度になっていた。

職場がこっちになったことで、私の家に泊まると通勤が便利なようなので、いっそのこと一緒に住むことを提案してみる。

すると、その日から転がり込む形で一緒に住むことが決まった。

ところがこのアパートは一人暮らし用になっていたので、私達が不動産にお願いしに行くことに。

すると、特別にということで更新までの二年であれば支払いが増えるものの住んでも良いことになった。

それからというもの、 彼氏の方が私より収入が少ないこともあって月に生活費として3万円入れてもらう約束をする。

他の足りていない出費に関しては、少しだけ収入の多い私が出して生活費の支払いを賄うことで同意することに。

でも、だからと言って、納得した訳では無い。

収入が増えたらもっと出してもらう約束をしたので、仕方なく今はこれで納得する形となったのだ。



彼は今時珍しくタバコを吸う。

私のお願いをきいてくれて、部屋の片隅で、それもキッチンの換気扇のところでだけ吸ってくれる。

一応私なりに匂いを気にしてのことだつたけど、同僚仲間からは彼と同棲してることを勘づかれてしまった。

こうして、私達の同棲が始まってから三ヶ月を過ぎた頃、彼が自分の休みの日に家にいないで遊びにいくようになる。

一緒に暮らす前は休みに会うのがデフォルトだったのに、私が一緒に過ごしたいと言っても合わせてくれなくなり、気付けば違い生活のようになっていた。

「何で休みを一緒に合わせてくれないのよ」

「夜は家に帰ってくるんだから別に平気だろ」

「何それ、私は二人でお出掛けとかもしたい」

「じゃぁ、また今度ね」

「うん、ありがとう」

そんな会話をしたのに、彼はすっかり忘れていて、休みが来る度相変わらず友達と遊ぶと言って出かけて行く。

次第に寂しさが増す私を、同僚仲間が遊びに誘ってくれて、愚痴を聞いてもらう。

「最近、家に一万しか入れて貰えないのよ、前は三万必ず入れてくれてたのに」

「ねぇ、それってヒモなんじゃないの」

「そうだよ、それにもしかすると浮気してるかもね」

同僚の二人は各々言いたい放題。

でも、本当にヒモな気もするし、浮気してるのかもしれないと思い始めてきた。

それなのに、本当に浮気だったらと思ったら聞くに聞けず八ヶ月が過ぎた頃だった、漸く二人から、絶対確認した方が良いと言われたことを確認する覚悟が出来たので、勇気を出して問いただす。

「ねぇ、聞きたいことあるんだけど…………」

部屋の片隅でタバコを吹かす彼に不安に思ってることを確認する。

「何だよ、浮気何かする訳ないだろ…………明日、誕生日たったよね、本当なら、明日サプライズして驚かそうと思ってたんだけど…………」

サプライズ!? そう言えば明日は私の誕生日だった。

色々彼のことで悩んでいたせいか、すっかり忘れているだなんて…………。

それから彼は、今までのことの経緯を淡々と説明してくれて、その内容に驚く私。

休みの日にいなかったのは、友達と遊んでたからでも浮気でもなく、二人でもっと広い家に住めるようにとバイトしていたこと、家に入れるお金が減ったのも貯金がしたかったからだった。

「そんなこと考えてくれてたんだ、言ってくれたら良かったのに」

「ごめん、言ったらサプライズじゃ無くなると思って…………余計な心配までさせちゃって悪かったな。  ほら、これみて」

そう言って彼は貯めていた通帳を見せてくれた。

部屋の片隅でタバコを吸いながら、彼はニコッと微笑み、引越したら、家でタバコ吸わない約束までしてくれて…………。

彼は子供が将来出来ることも考えて一軒家を買いたいと思ってること、通帳にあるお金が一軒家購入の前資金になるんじゃないかと話してくれた。

「これからの人生、僕に守らせて貰えませんか?  僕と結婚してください」

その時、彼に突然の告白してもらった私は、幸せの頂点に達していた。

「はい、よろしくお願いいたします」

それからは、目まぐるしい日々が過ぎていくことに。

アパートの契約が切れる前に私達はお互いの両親に挨拶に行き、写真だけの結婚式をして、新築の一軒家に引越しをした。



その後、彼は宣言通り部屋の片隅でタバコを吸うのを辞めてくれました。

それだけでなく、今は禁煙してくれていて、自分の健康と将来子供ができた時困らないようにタバコを辞めることを決めたとのこと。

嵐のようにあっという間に事が進んだけど、彼が優しい人で良かったです。

それに、心配してくれていた同僚にも、しっかりした彼だったんだね、おめでとう!  と祝福して貰えたのて嬉しいです。

この先も優しい彼と仲良く暮らしていきます。























12/7/2022, 3:30:59 AM

逆さま

パンをかじりながら登校していたら、曲がり角で男女がぶつかって··········そんな出会いが存在する訳ないのに、姉が買ってくる少女漫画を読みながら育ってしまった陰キャな僕は、そんな出会いがあれば良いのにと少女のような夢を妄想しながらなんの変哲もない日常を過ごしていた。

そんな僕も中学を卒業し高校生となり··········。

家から高校までは電車で通う、幸い家から駅までが徒歩数分のなので歩いて行ける距離ではあったけれど、今日は珍しく寝坊してしまい、クリームパンをかじりながら家を出て走ることになってしまった。

急いでるのに食べることないだろって思うかもしれないけれど、僕は食べずにやっていけないので、家を出る時しっかりパンを手に持ち走り出したのである。

そんな僕は、両手が塞がらないように口にくわえて走っていたので案の定曲がり角で人にぶつかってしまった。

「す、すみません··········」

加えていたパンを右手に持つと、そう言った後まさかのシチュエーションに僕は何だか恥ずかしくなり、頬を赤らめながら目の前にいる女性に謝る。

そもそもこんな展開は現実には有り得ないのだ··········そもそも、パンを加えた女の子が走ってきてぶつかるシーンに憧れていたのに、パンを加えていたのが男である僕の方だったというシチュエーションだっただけに、余計恥ずかしさが増してしまい··········。

「大丈夫だよ。  君は大丈夫·····って、あれ、それ私と同じ制服じゃん…………あっ、それに今 思いだしたんだけど、私学校学校の廊下で君のこと見かけたことがあるよ··········確か隣のクラスでしょ」

よく見ると彼女と僕は同じ制服を着ている、どうやら同じ高校に通う生徒のようだ··········。

「そ、そうです  良く覚えてますね、僕は一年の|栗山高貴《くりまやこうき》と言います··········」

「私は|里田沙友理《さとださゆり》私も一年生だよ、まさかパン加えた男子とぶつかるだなんて1ミリも思ってなかったわ」

「アハハ、そうですよね、本当にすみません!」

「ねぇ、これも何かの縁、折角だし私達今日一緒に登校しようよ、ところで君は何中?  私は第三中学校だよ、駅迄距離があるから自転車来てるの」

「僕は第一中学校です」

「えっ、良いなぁ··········それなら駅近いよね」

「はい、駅まで数分で着きますね·····でも今日寝坊しちゃって··········里田さんも寝坊?」

「違うよ、途中で自転車パンクしちゃってさ、一旦家に戻って予備の自転車できたから遅くなっちゃった」

そんなたわいもない話をしながら登校した僕達は、次の日からもこれをきっかけに一緒に登校するようになった。

そして、夏休みが来てから僕が登校中に里田さんに告白すると、「良いよ」の返事を貰えて付き合うことに。

彼女の誕生日は四月だったようで、もうとっくに過ぎてしまっていたので、今年のクリスマスに何かプレゼントしようとお思った僕は、夏休み中は彼女とデートしたりもしながらバイトにも励むようになり、陰キャだった僕の高校生活はいっきに楽しいに変化していった。

その変わりように一番驚いているのは身近な家族で、中でも姉は凄く驚いている様子。

「あんたさ、雰囲気から服装からすっごい変わったね」

「そ、そうかな··········」

「そうだよ、今迄オシャレにも興味が無いって言うの··········見た目も気にしてないようだったし、自分の匂いとか意識したこと無かったじゃん、それなのに、髪型や口臭とかにも気を使い出してさ··········」

いや、以前の僕ってどんな風に思われていたんだよ!!

自分でも驚く程に、姉の話を聞いていると、少し前の自分が不潔に思えた。

「私わかるよ、彼女でも出来たでしょ··········」

図星だった。

良く分かるな··········両親は勘づかれてもいないのに、姉貴には何にも隠せないらしい

「うん、まぁね··········」

「お父さんもお母さんも、あんたがバイト始めたことで、社会に出て働くことで身だしなみを気にするようになったから良かったって言ってたけど、私の目はお見通しだったわね  何か困ったことあったら相談してね」

姉はそう言うと部屋に行ってしまった。

でも、僕は、姉に相談に乗って貰うことなんてないだらうと思っていたのだけど、女心が分かるようで分からなかった僕は、結局あれこれ相談に乗ってもらうことに。

もし、姉がいなかったら別れていたかもしれない危機もあったので、いてくれたことに感謝していた。

「あ、あのさまた相談なんだけど··········」

僕は彼女に渡すクリスマスプレゼントに悩んでいた。

性格も明るくなり、クラスに男友達も出来たけど、未だ付き合ってる彼女がいることは話していないので相談が出来ない。

「あのさ、どんなのプレゼントして貰えたら喜ぶかな」

「何を貰っても、彼からのプレゼントなら何でも喜ぶと思うけど、プレゼントの定番としてはアクセサリーじゃないかな」

どうやら、女性はアクセサリーが好きらしい。

僕はネックレスをプレゼントしようと思い、プレゼントを買いに行くことにした。

身に付けるものである以上、当然ながら彼女に合ったプレゼントでなくてはならない、そう思った僕は、男一人でアクセサリーを見て回る。

ところが彼女好みのアクセサリーを探し出すのは簡単なようで実は難しい、彼女の好みを把握してるつもりなのに、僕の決断が無さすぎて決められないのかもしれないけれど、始めてのプレゼントだから、絶対失敗したくなかった。

この日の為にバイトもしてきたのだからと、何日もかけてアクセサリーを探しているうちに、素敵なアクセサリーを見つけることに。

それは丸い円の中にハートが逆さまに向いているデザインのものだった。

サイズも小さめであるそのアクセサリーの説明には、二人だけの「愛」を確かめ合えるモチーフとか書かれている。

そもそも逆さまハートは、お寺や神社でつかわれており、や日本古来から使われている図柄で、猪目(いのめ)といい、魔よけや福を招く護符の意味も込められていた。

僕はそのネックレスを大切な彼女へのプレゼントに最高だと思い、迷わず購入することに。

「あの、こちらペアネックレスですが、よろしいでしょうか?」

(えっ、ペアネックレス…………)

「はい、お願いします」

ペアネックレスだとは知らなかったので、お値段は高校生の僕には少し高めだったけど何だか得した気分になった。

「高貴くんありがとう、私大切にするね」

その後、クリスマスにプレゼントすると、沙友理は凄い喜んでくれたので僕のプレゼントは大成功!

制服の下でもさりげなく身に付けて学校に行けるので、体育以外は僕達はいつもネックレスをつけている。

そうそう、ネックレスには相手の無事と幸せを祈るという意味も込められているんだって。

そんな僕は二人でクリスマスを過ごし後、家に帰ると、姉から聞いて僕に彼女が出来たことを知った家族から
おめでとうのお祝いをされてしまった。

そんなの一々お祝いとか要らないのに··········。

少しばかり照れくさいけど何だか嬉しい!

こんなに明るい家族で良かったと思えた。

来年のクリスマスも彼女と二人で過ごせますように。


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