部屋の片隅で
中目黒にある1Kに住んでいる私のアパートの家に、度々休みになると彼氏が泊まりに来る。
ところが最近は平日なのに彼氏が泊まりに来るようになり、気付けばいない日が無いんじゃないかって頻度になっていた。
職場がこっちになったことで、私の家に泊まると通勤が便利なようなので、いっそのこと一緒に住むことを提案してみる。
すると、その日から転がり込む形で一緒に住むことが決まった。
ところがこのアパートは一人暮らし用になっていたので、私達が不動産にお願いしに行くことに。
すると、特別にということで更新までの二年であれば支払いが増えるものの住んでも良いことになった。
それからというもの、 彼氏の方が私より収入が少ないこともあって月に生活費として3万円入れてもらう約束をする。
他の足りていない出費に関しては、少しだけ収入の多い私が出して生活費の支払いを賄うことで同意することに。
でも、だからと言って、納得した訳では無い。
収入が増えたらもっと出してもらう約束をしたので、仕方なく今はこれで納得する形となったのだ。
☆
彼は今時珍しくタバコを吸う。
私のお願いをきいてくれて、部屋の片隅で、それもキッチンの換気扇のところでだけ吸ってくれる。
一応私なりに匂いを気にしてのことだつたけど、同僚仲間からは彼と同棲してることを勘づかれてしまった。
こうして、私達の同棲が始まってから三ヶ月を過ぎた頃、彼が自分の休みの日に家にいないで遊びにいくようになる。
一緒に暮らす前は休みに会うのがデフォルトだったのに、私が一緒に過ごしたいと言っても合わせてくれなくなり、気付けば違い生活のようになっていた。
「何で休みを一緒に合わせてくれないのよ」
「夜は家に帰ってくるんだから別に平気だろ」
「何それ、私は二人でお出掛けとかもしたい」
「じゃぁ、また今度ね」
「うん、ありがとう」
そんな会話をしたのに、彼はすっかり忘れていて、休みが来る度相変わらず友達と遊ぶと言って出かけて行く。
次第に寂しさが増す私を、同僚仲間が遊びに誘ってくれて、愚痴を聞いてもらう。
「最近、家に一万しか入れて貰えないのよ、前は三万必ず入れてくれてたのに」
「ねぇ、それってヒモなんじゃないの」
「そうだよ、それにもしかすると浮気してるかもね」
同僚の二人は各々言いたい放題。
でも、本当にヒモな気もするし、浮気してるのかもしれないと思い始めてきた。
それなのに、本当に浮気だったらと思ったら聞くに聞けず八ヶ月が過ぎた頃だった、漸く二人から、絶対確認した方が良いと言われたことを確認する覚悟が出来たので、勇気を出して問いただす。
「ねぇ、聞きたいことあるんだけど…………」
部屋の片隅でタバコを吹かす彼に不安に思ってることを確認する。
「何だよ、浮気何かする訳ないだろ…………明日、誕生日たったよね、本当なら、明日サプライズして驚かそうと思ってたんだけど…………」
サプライズ!? そう言えば明日は私の誕生日だった。
色々彼のことで悩んでいたせいか、すっかり忘れているだなんて…………。
それから彼は、今までのことの経緯を淡々と説明してくれて、その内容に驚く私。
休みの日にいなかったのは、友達と遊んでたからでも浮気でもなく、二人でもっと広い家に住めるようにとバイトしていたこと、家に入れるお金が減ったのも貯金がしたかったからだった。
「そんなこと考えてくれてたんだ、言ってくれたら良かったのに」
「ごめん、言ったらサプライズじゃ無くなると思って…………余計な心配までさせちゃって悪かったな。 ほら、これみて」
そう言って彼は貯めていた通帳を見せてくれた。
部屋の片隅でタバコを吸いながら、彼はニコッと微笑み、引越したら、家でタバコ吸わない約束までしてくれて…………。
彼は子供が将来出来ることも考えて一軒家を買いたいと思ってること、通帳にあるお金が一軒家購入の前資金になるんじゃないかと話してくれた。
「これからの人生、僕に守らせて貰えませんか? 僕と結婚してください」
その時、彼に突然の告白してもらった私は、幸せの頂点に達していた。
「はい、よろしくお願いいたします」
それからは、目まぐるしい日々が過ぎていくことに。
アパートの契約が切れる前に私達はお互いの両親に挨拶に行き、写真だけの結婚式をして、新築の一軒家に引越しをした。
☆
その後、彼は宣言通り部屋の片隅でタバコを吸うのを辞めてくれました。
それだけでなく、今は禁煙してくれていて、自分の健康と将来子供ができた時困らないようにタバコを辞めることを決めたとのこと。
嵐のようにあっという間に事が進んだけど、彼が優しい人で良かったです。
それに、心配してくれていた同僚にも、しっかりした彼だったんだね、おめでとう! と祝福して貰えたのて嬉しいです。
この先も優しい彼と仲良く暮らしていきます。
12/8/2022, 11:07:20 AM