手を繋いで
|夏菜子《かなこ》はミディアムヘアで何時も明るくポジティブ思考の女性で、友達も多く、クラスのムードメーカー的存在。
それに対して、|真守《まもる》は消極的なところがあり夏菜子とは正反対のネガティブな男性。
そんな二人なだけに噛み合うことはないと誰もが思っていたのに、夏菜子と真守は文化祭をきっかけに話すようになり、夏菜子は真剣に物事に取り組む真守の姿に惹かれていった。
出し物として作った喫茶店の看板やメニュー表、それに教室の飾り付けなど、真守のセンスの良さは際立っていたので、この学校での一番人気を獲得する。
そして迎えた後夜祭の時だった、誰もが予想だにしていなかった展開が巻き送ることになった。
夏菜子が学校の生徒学全員ででキャンプファイヤーをしている時、真守への気持ちを伝える為、皆の見ている前で告白をしたのである。
それも、二年生の夏菜子と真守は、同級生、年下の生徒、先輩方に先生方のいる中での告白劇だったので、皆の視線は二人に集中することになり、多いに盛り上がりを見せた。
「真守くんの真面目なところに惚れました。 私と付き合ってください」
「こんな僕で良ければ、どうぞよろしくです」
こううして、自由恋愛の出来る学校だったこともあってか、先生方からは、付き合い方はしっかりした責任の元しないとだけ忠告を受け、付き合うことになった。
ところが、付き合って一月経過するのに、夏菜子は真守とは手を繋がない。
ハグやキス等のスキンシップはしっかりあるのに、繋ぐと手に汗をかいてしまい、それが嫌なのだという。
ところが半年を過ぎた頃のこと。
「手を繋いで!」
街中を歩いている時、夏菜子は真守の耳元でそう言って、自分から手を繋ぐ。
それからは今までが嘘のように毎日何処へ行くにも手を繋いで歩くようになった二人だった。
それなのに、この日から一週間後、夏菜子は突然入院することになってしまう。
夏菜子から告げられたのは白血病だということだった。
真守と離れるのが嫌で、「手を繋いで」と言ってくれたらしい。
白血病とは、赤ちゃんから老人まで誰もがかかる病気。
病気に行く前日、ポジティブな夏菜子からは、もう無理かもしれないとネガティブなことを告げられていたので、頑張ってと言えない真守は、「手を繋いで!」と言って手を握りしめた。
ーーそれから五年後
「手を繋いで!」
待ち合わせ場所に行くと、既に先に来ていた夏菜子が真守にそういった。
夏菜子は治療の末、奇跡的に生きながらえたのである。
「無理しなくても良いよ」
「ううん、真守くんと手を繋ぎたい」
未だ結婚はしていないけど、二人の交際は順調に続いている。
12/10/2022, 10:58:43 AM